本当に使える経営戦略・使えない経営戦略

発刊
2013年4月13日
ページ数
223ページ
読了目安
272分
推薦ポイント 4P
Amazonで購入する

Amazonで購入する

著名な経営戦略論にダメ出し!?
「競争の戦略」「ブルーオーシャン戦略」「イノベーションのジレンマ」「コアコンピタンス経営」「ストーリーとしての競争戦略」まで。何が使えて、何が使えないのか。著名な戦略の実効性を問う1冊。


■欧米発の戦略は大企業向け
欧米発祥の戦略セオリーで気をつけなければならないのは、それらが「欧米における超大企業」のために考え出されたものだ、という点である。たとえばジャック・ウェルチがGEで考案し実践した「選択と集中戦略」は素晴らしい成果を上げた。しかし、日本の会社の99.7%は中小企業であり、ほとんどの会社は単一事業を展開している。つまり「選択」も「集中」もする余地などない。

主要な経営戦略セオリーを発表してきたのは「戦略ブティック」か「ビジネススクール教授」である。戦略ブティックの高いフィーを払ってくれるのは、大企業以外にいない。一方、ビジネススクール教授の手柄は少しでも新しい学説を打ち立てること。その時点で新しく成功している企業事例に注目する事が手っ取り早い。

日本の普通の会社がそんなところを目指して、ビジネスを設計してよいものか。採用できない戦略セオリーとは、即ち役に立たないセオリーだ。

使えない戦略

①『コア・コンピタンス経営』
ゲイリー・ハメルとプラハラードは、それぞれの会社が現在保有している製品や組織は表面的なもので、それらを現出させている根源的能力(コア・コンピタンス)が企業の中にある、と考えた。

ポーターの場合は「どこの業界に参入するか」というポジションを戦略の枢要と考えたが、ハメルたちは自社のコア・コンピタンスを押し立てて成功して「新しい産業を創出したり古い産業を再生する」という地平までを啓蒙している。しかし、実際には世の中に存在する多くの会社では、力強いコア・コンピタンスを持っていない。

さらにハメルたちは「10年後の市場の状況を見晴らかし、それに対して今備えよ」と呼び掛けているが、10年後の市場の状況がわかる経営者などいるのか。

②『エクセレント・カンパニー』
同書ではエクセレント・カンパニーの企業事例として14社挙げられている。しかし、2001年の時点で4社を除いてすべての会社が倒産や他社に吸収、大規模なリストラに見舞われていた。その年、著者トム・ピーターズ自身が「エクセレント・カンパニーの中で我々はデータをねつ造した」と認めてしまった。

経営実務家が実践している経営行動は、数百あるいは数え方によると無限にあり、それらはすべて重要なものだと考える事ができる。どれか特定の経営行動を並べられて「これが重要だ」と言われると、反論のしようがない。

③『コーペティション経営』
「コーポレーション(協力)」と「コンペティション(競争)」を同時に繰り出して、競合会社は共に成果を上げようという提言。このゲームセオリーは、適用範囲の限定された、実用性の低い戦略論である。競合が1社だけの場合、「あちらはどう出るかな?」くらいには使えるかもしれない。でもそんな状況ならこんなセオリーを持ち出さなくても見当はつく。

④『ブルー・オーシャン戦略』
この戦略の人気が出たのは、その理想性にある。「競争のない市場空間を切り開く」事は確かに素晴らしい。問題は、当社にそんな能力があるかだ。当社が成功領域を見つけたと知るや、他社は必死の思いで追いかけてくる。一番に何かを実現するより、模倣する事の方が簡単である。ブルー・オーシャン戦略というのは初めから論理破綻したセオリーだ。

ブルー・オーシャンが実現すると「多くの場合、10年から15年もの間大きな挑戦を受けずに持ちこたえる」としている。この成功事例として、シルク・ドゥ・ソレイユとイエローテイルというオーストラリアの廉価ワインを挙げている。しかし、2013年に前者はリストラを発表、後者は倒産可能性が報道されている。長期に続くブルー・オーシャンなど難しい。

 

あわせて読みたい