イノベーションが起きる組織

発刊
2026年9月24日
ページ数
256ページ
読了目安
294分
推薦ポイント 4P
Amazonで購入する

Amazonで購入する

イノベーションが起きる組織の要件
ヤマハなどの大企業で事業創出に携わってきた著者が、イノベーションを起こすために壁となる組織の問題を紹介しながら、その壁を乗り越えるための方法を提示している一冊。

特に大企業になるほど、組織内の部署やチームなどが様々に分断されており、従来型のマネジメントでは、イノベーションを生み出すことが難しいという課題に直面する。そもそもイノベーションを起こすためには何が必要なのかという根本的なところからスタートし、組織はどのようなことをする必要があるのかを分解して解説されています。

イノベーションが起きる組織にするために必要なこと

イノベーションとは「既に存在しているが、これまで出会うことのなかった要素同士の新しい組み合わせ」である。必要なのは、既存の経営資源や技術、顧客の課題といった「既存の知」を、これまでとは異なる文脈でつなぎ直す「編集」の能力である。

このプロセスには、通常のマネジメント手法が通用しない難所がある。プロセスの最上流に位置する「ファジー・フロント・エンド(FFE)」と呼ばれる領域である。FFEとは、アイデアが正式なプロジェクトとして承認される前の「カオスで、不確実で、曖昧な」期間を指す。何をつくるべきか、誰に届けるべきか、そもそも事業として成立するのかといった根本的な問いに対する答えがまだ見えていない段階である。

この「訳のわからない状態」こそがイノベーションの源泉である。しかし、多くの企業組織は本質的に「訳のわかること」を効率的に処理するために設計されているため、つまづくことになる。そこには、組織に構造的に埋め込まれた以下の「断絶」がある。

  1. 知と知がすれ違う(既存知×新しい知)
  2. 不確実性を管理しすぎる(FFE×管理)
  3. 深化が探索を締め出す(探索×深化)
  4. 正しさが腹落ちに変わらない(変革×納得感)

 

断絶によって分断された要素同士をつなぎ合わせるのに必要なのは「媒介」である。断絶した要素AとBの間に立ち、両者をつなぎ合わせ、新しい関係性を生み出す。この媒介の方程式が以下である。

R = f(M;C)

R(成果):媒介によって得られる成果
M(媒体):ヒト、モノ、ビジョン。成果を生み出すために私たちが動かせる具体的な変数
C(文脈):土壌、文化、制度、環境、場。3つのMが機能するための土壌
f(機能):SECIモデル、ダブルダイヤモンド。3つのMをどう機能させるかという働かせ方

直接働かせるのはMであり、Cはその条件である。

 

多くの企業変革が失敗するのは、Mの導入ばかりに注力し、この土壌改良(C)を含めた媒介プロセス全体を見ていないからである。

 

3つの媒体をデザインする

①ヒトで断絶をつなぐ

組織の知の分断に対して必要になるのがバウンダリースパナーという存在である。部署と部署の間を飛び回り、情報と信頼を運ぶ貿易商人のような人である。自分の所属部署に軸を置きながらも、頻繁に他部署や外部と接触し、情報を持ち帰る役割を果たす。

組織の境界には、以下の3つの壁が存在する。

  1. 言葉の壁:そもそも共通の言葉が存在しない
  2. 意味の壁:共通の言葉があっても、その解釈が部署ごとに食い違っている
  3. 利害の壁:意味はわかっても「それをやると自分の部署の評価が下がる」という利害対立

こうした壁を乗り越えるためには2つの動きが必要になる。

  1. アンバサダー:経営層や必要な後ろ盾を獲得し、利害の壁を突破するための交渉にあたる
  2. タスクコーディネーター:他部署と実務レベルで問題を解決する

バウンダリースパナーは、視野を組織の外へも広げ、以下の2つの価値も持つ。

  1. 弱い紐帯:異業種の知人から異質な情報を運ぶ
  2. ストラクチャル・ホール(構造的空隙):会社と会社、業界と業界の間にある隙間を埋めるネットワークを持つ

 

②モノで断絶をつなぐ

報告書のテンプレートや会議室のホワイトボード、日常的に使うチャットツールなど、無意識に使っている道具は、組織の思考を方向づけ、意味を宿し、行為を引き出すメディアとして機能している。

  • バウンダリーオブジェクト:部署や専門領域の間に存在し、双方をつなぐ ex.ビジネスモデルキャンパス
  • プロトタイプ:モノとして外化することで状況と対話を始める ex.粗い模型
  • エピステミックオブジェクト:問いを生むための未完成のモノ ex.ラピッドプロトタイプ

 

同じ1つのモノが、置かれ方や使われ方によって、いくつもの顔を見せる。その顔を意図して選び、設計する。モノは、人と人の間に置かれることで、言葉だけでは越えられない断絶をつなぐ。

 

③ビジョンで断絶をつなぐ

ビジョンはがつなぐのは向かう先である。その仕組みは以下の2つ。

  1. 共通言語:異なる部門、専門性のメンバーが同じビジョンを共有することで部門の壁を越える
  2. 判断基準:日々の判断のたびに上層部に伺う必要がなくなり、意思決定のスピードが上がる

 

媒介が育つ土壌をデザインする

どんなに優れたイノベーションの手法を導入しても、それを受け入れる組織の土壌が整っていなければ、機能しない。土壌であるCには、性質の異なる2つの面がある。

  • ハードインフラとしてのC(制度):組織の中で「何がどう評価されるか」が明示的に読み取れるルールや仕組み
  • ソフトインフラとしてのC(文化):明文化されていないが、メンバーの行動を無意識に方向づける暗黙の規範

 

制度と文化の両方が揃って初めて、土壌は媒介を支える力を持つ。

 

 

あわせて読みたい

この本の著者・神谷 泰史さんはソニー出身です。ソニー出身者の本 41冊 →