税金はどこへ行くのか 元会計検査院長が見た「日本の財政」

発刊
2026年8月24日
ページ数
272ページ
読了目安
330分
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会計検査院の仕事
税金がどのように使われたのかを調査し、その効果検証までを行なっている会計検査院が、どのような仕事をしているのかを紹介している一冊。

会計検査院長を務めた著者が、会計検査院の存在意義やその仕事の内容を、会計調査報告の事例をもとに解説しています。ワクチン、アベノマスク、GoToキャンペーンなど、国の予算が投じられたコロナ対策には、どのように資金が使われて、その内容は適切であったのか。ガソリン補助金や賃上げ税制などは、本当に効果があったのかなど、会計検査院の報告書をもとに、国の税金の使われ方の検証結果が書かれています。
会計検査院の存在意義がよくわかる内容になっています。

会計検査院とは

会計検査院は、国費が投じられているものはすべて例外なく検査を行い、問題があれば、それを担う省庁や自治体に対して正すように指摘する国の財政監督機関である。憲法第90条に定められた機関として、国家、内閣、裁判所と並び、第4の憲法機関と言われる。その独立性は法律で明確に定められており、組織運営や検査内容への外部からの干渉や介入を防ぎ、また検査に必要な情報提供を求める権利、相手はそれに応じなければならない義務があることなど、検査権限も定められている。

 

会計検査院は、日銀や国の財政のような大きな施策から地域の放課後児童クラブの検査まで、国費の使徒を幅広く検査している。検査対象は毎年、裁判所や国会、各省庁、NHKなど225団体に及び、必要に応じて国有財産、都道府県、国立大学、独立行政法人、日本郵政など、4900以上の団体も対象となる。会計書類がルールに基づいて適切に管理されていることをチェックするだけでなく、実施された事業の効果をデータ分析によって確認する。

 

税金はどう使われているのか(会計検査事例)

・新型コロナ感染症対策

コロナ対策には3年間で国の1年分の予算に匹敵する95兆円の国費が投じられた。さらにコロナ対策として講じられた給付金・補助金・交付金は、コロナ収束後も物価高騰対策という名前を新たに加えて引き継がれているものも多い。感染症の収束と共に対策を止めて、総括を行なった上で課題や教訓を整理せずして、別の名目を加えて続けることは、改善点を見失い非効率な予算執行になる可能性を孕んでいる。

  • アベノマスク(543億円):マスク1枚製造単価139円、配布単価179円。在庫保管料6億円。
  • 持続化給付金(5.5兆円):事務作業委託費として769億円。再委託は9層に及んだ。
  • GoToキャンペーン(9431億円)
  • GoToトラベル(9907億円)
  • 病床確保事業(3.3兆円):補助金が病院の収支改善に寄与したことが判明した。
  • コロナワクチン確保・接種事業(ワクチン2.4兆円、接種4.2兆円):ワクチン購入の算定根拠なし。
  • ゼロゼロ融資(貸付実績20.6兆円):リスク債権1.2兆円、返済不能2178億円。
  • 特別定額給付金(12.9兆円):国民1人当たり10万円の支給。その後も以下の給付金が継続。
  • 子育て世帯・低所得世帯向け給付金(4.5兆円):令和2〜5年にかけて9種類の給付金が条件を変えて配られた。

 

・ガソリン補助金

ガソリン補助金事業は、ガソリン価格高騰対策として、卸売事業者に対して補助金を講じることによって、国民の負担を軽減することを目的としている。この事業は、2021年にコロナ感染症対策の一環として設けられたが、感染症収束後は物価高騰対策として引き継がれた。

卸売業者は、補助金を受けて小売業者にガソリンを販売するが、週ごとに補助金の交付額を算定した上で、月単位で翌月に事務局に請求する。補助金額は毎週の原油価格とガソリン販売量に連動する。

 

会計検査院は事務局について検査をしているが、特に問題があったのは事務局体制と小売事業者の価格調査である。全国石油協会から業務委託を受け、事務局を担った博報堂の再委託率は77%で多重下請けが行われている。価格モニタリング調査では、委託した先から受け取った調査データを資源エネルギー庁は利用しなかった。以前からサンプリング調査によってほぼ同じようなデータがあったからだ。

 

・賃上げ税制・教育訓練費上乗せ制度

賃上げ税制は、租税特別措置の1つだが、これに教育訓練費上乗せの仕組みを加えて、減税によるインセンティブを拡大し、賃上げを促そうとするものだ。検査結果から、税制に歪みが生じ、税の控除額が過大になっていることがわかった。また、効果検証を会計検査院が行なったが、減税に見合うだけの効果が上がっていないことが明らかになった。

社員の教育や訓練費用を昨年より5万円増やしたことで、法人税が1000万円も減税される。大企業、中小企業の教育訓練費増加額は約64億円であるのに対し、税制控除額は約278億円で、約214億円の超過となっていた。また、教育訓練費72.9億円そのものよりも税制控除額の方が大きく上回っていた。

 

さらに教育訓練費上乗せ制度の効果検証は行われていなかった。経済産業省は、教育訓練費の増加が給与等の増加に結びついたか否かを定量的に測ることは難しいためと答えている。しかし、経済産業省は制度を要望する際、教育訓練と賃金上昇には相関があるとした論文を根拠として提出している。

そこで、会計検査院は、その論文を用いて効果検証を試みた。その結果、教育訓練費上乗せ制度は、税控除に見合うだけの賃上げ効果をもたらしていないことがわかった。同制度は、政策目的の達成手段として適切でないおそれがある。なお、この制度は会計検査院の指摘に基づき廃止されることになった。