ジョブ理論 イノベーションを予測可能にする消費のメカニズム

発刊
2017年8月1日
ページ数
392ページ
読了目安
517分
推薦ポイント 14P
Amazonで購入する

Amazonで購入する

イノベーションを予測可能にするにはどうすればいいのか
『イノベーションのジレンマ』の著者、クレイトン・クリステンセンが、イノベーションを予測可能にするためには、どうすればいいのかを紹介している一冊。

イノベーションには因果関係を知る必要がある

現実には、イノベーションが成功するかどうかは一か八かの色合いが強い。何が顧客にその行動を取らせたのかを真に理解していない限り、賭けに勝つ確率は低い。だが、イノベーションとは本来、もっと予測可能で、もっと確実に利益をあげられていいはずだ。必要なのは、ものの見方を変えること。大事なのはプログレス(進歩)であって、プロダクト(商品)ではない。

企業は果てしなくデータを蓄積しているものの、どういうアイデアが成功するかを高い精度で予測できるように体系化されていない。データは、相関関係を表してくれるが、顧客が「なぜ」ある選択をするのかということについて何も教えてくれない。

問うべき質問は「どんなジョブ(用事・仕事)を片付けたくて、あなたはそのプロダクトを雇用するのか?」である。

ジョブとは

特定の商品を買う、という行為を引き起こさせる原因は、我々の誰にでも毎日起きている。日々の生活の中で片付けたい「ジョブ」が発生し、それを解決するために何かを雇用する。

ジョブは機能面だけで捉えることはできない。社会的及び感情的側面も重要であり、こちらの方が機能面より強く作用する場合もある。ジョブは日々の生活の中で発生するので、その文脈を説明する「状況」が定義の中心に来る。イノベーションを生むのに不可欠な構成要素は、顧客の特性でもプロダクトの属性でも新しいテクノロジーでもトレンドでもなく、「状況」である。片付けるジョブは、継続し反復するものである。独立したイベントであることはめったにない。

顧客が特定のプロダクトを購入し、使用する原因は何か

ジョブは本来複雑なため、顧客を観察して得た知見を分析しやすいようなデータに落とし込むことは容易ではない。ジョブを見極め、本質を明らかにするのは、現実にはかなり難しい。ジョブ理論が重点を置くのは、「誰が」でも「何を」でもなく「なぜ」である。

①その人が成し遂げようとしている進歩は何か
②苦心している状況は何か
③進歩を成し遂げるのを阻む障害物は何か
④不完全な解決策で我慢し、埋め合わせの行動をとっていないか
⑤その人にとって、より良い解決策をもたらす品質の定義は何か

ジョブを明らかにする方法

①生活に身近なジョブを探す
②無消費と競争する(何も雇用していない人からも学ぶ)
③既存の間に合わせの対処策を観察する
④できれば避けたいことを探す
⑤意外な使われ方を観察する

顧客が達成しようとする進歩は、文脈の中で理解しなければならない。ジョブを見つけるのにあたって、重要なことはどの技法を使うかではなく、どういう質問をするのか、答えとして得られた情報をどうつなぎ合わせるかにある。

顧客が進歩を成し遂げるために苦労している点を見つけ出したら、片付けるジョブの機能面だけでなく、社会的及び感情的側面についても考えてみること。機能面、感情的、社会的側面の3つ揃うことが、プロダクト展開を真に成功させる鍵となる。

適切な体験を構築せよ

不満足な解決策しか与えられていないジョブを見つけ出すことは、最初の一歩にすぎない。顧客が自社製品を発見し、購入し、利用する、という一連の行為の中で、企業は適切な体験を構築しなければならない。さらに、そうした体験が一貫してもたらされるように、関連するプロセスすべてを統合しなければならない。重要なのは、顧客が進歩を遂げるのに役立つ体験なのである。