2024年、著名人やアルファブロガー、新聞、雑誌の書評で最も紹介されたビジネス書のランキングを発表します。 (集計期間2023年12月〜2024年11月)
bookvinegar 2024年ランキング
①なぜ働いていると本が読めなくなるのか(三宅 香帆)26pt
②BIG THINGS(ベント・フリウビヤ)20pt
③運 ドン・キホーテ創業者「最強の遺言」(安田 隆夫)18pt
④Think Fast, Talk Smart(マット・エイブラハムズ) 16pt
④Simple 「簡潔さ」は最強の戦略である(ジム・バンデハイ) 16pt
④文化資本の経営(福原 義春)16pt
⑦ゴールドマン・サックスに洗脳された私(ジェイミー・フィオーレ・ヒギンズ)14pt
⑦経験バイアス(エムレ・ソイヤー)14pt
⑦Mine! 私たちを支配する「所有」のルール(マイケル・ヘラー)14pt
⑩なぜか「なんとなく生きづらい」の正体(メグ・アロール) 12pt
⑩美食の教養(浜田 岳文)12pt
⑩東大病院をやめて埼玉で開業医になった僕が世界をめざしてAIスタートアップを立ち上げた話(多田 智裕)12pt
⑩ユニクロ(杉本 貴司)12pt
⑩経営中毒(徳谷 智史)12pt
今年の第1位は、『なぜ働いていると本が読めなくなるのか』でした。
本書では、働く日本人がこれまでどのような本を読んできたのか、明治から戦後の日本社会で売れていた本を紹介しながら、過去の日本人の読書の傾向を丁寧に読み解いています。
そこから、労働と読書をどのように両立すればいいのかという問いに対する提案がされます。「忙しくて読書の時間が取れない」という多くの人の共感を得て、様々なメディアで話題になりました。
今年のビジネス書は、「投資」に関するものが圧倒的に多かったように思います。これは日本だけでなく、海外の翻訳書も同じです。
空前の株高を背景に、世界的にも投資への関心が高かったのか、単純に「株で儲けよう」という内容ではなく、適切な投資によって資産を管理することが大切であるという王道の投資哲学を説く本を多く見かけました。
投資以外のテーマでは、格差や分断といった二極化する社会を背景とした本も多く見られました。これまで資本主義の中で主流であった「努力して勝ち組になる」という自己啓発的な価値観から、格差や分断が進む社会の中で、個々人がどのように生きるべきか、ある意味、勝ち組ではない生き方、「弱さ」に注目した内容のものが出てきています。
すべての人が勝ち組になれるわけではなく、行き過ぎた競争社会の中で、心のバランスをとる、個々の幸福を見つけるという側面が注目され始めているのではないでしょうか。
個人的に、2024年に印象に残ったビジネス書は『文化資本の経営』です。元資生堂会長の故・福原義春氏が1999年に書いた本が、再発刊されたものです。
20年以上前に、行き過ぎた資本主義の中における企業のあり方を問い直している内容で、経済資本から文化を起点とした経営への転換こそが、人間に魅力的な価値を与える企業活動であるという考え方が書かれています。
近年、環境問題や格差といった社会問題など、資本主義の負の側面が注目されている中で、20年前からこうした問題に対して、企業のあり方を問い続けているという内容に驚かされます。
価値観の多様化が進む中で、2025年もこうした個人や企業、社会の価値観を問い直すようなビジネス書が増えていくのではないかと思います。