経営センスの論理

発刊
2013年4月17日
ページ数
235ページ
読了目安
274分
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戦略ストーリーを理解して本質を見抜く力を身につけよ
『ストーリーとしての競争戦略』の著者が、競争戦略やイノベーション、グローバル化などの裏側にある本質を読み解く。表面的な現象にとらわれず、本質をつかむセンスを身に付けるにはどうすれば良いかを紹介しています。


■スキルだけでは経営できない
昨今のビジネスパーソンには「すぐによく効く新しいスキル」を求めている人がやたらと多い。英会話や財務諸表の読み方であれば、スキルを身につければ何とかなる。しかし、スキルだけでは経営はできない。戦略を創るというのは、スキルだけではどうにもならない仕事だ。優れた戦略を創るために必要なのは「センス」である。

スキルをいくら鍛えても、優れた経営者を育てる事はできない。スーパー担当者になるだけだ。しかし、こうやったらセンスが身に付くという標準的な手法はない。当事者がセンスある人に「育つ」しかない。

経営にできる事は、組織の中で「センスがある人」をきちんと見極め、その人にある商売の単位を丸ごと任せる事だ。こういう事をきちんとやっている会社では、センスが育つ好循環が生まれる。毎日の仕事の中でセンスがある人に触れる事ができれば、センスがあるとはどういう事か周りの人にもその輪郭が見えてくる。

経営はすべて特殊解

一時期、「垂直統合モデルは終わり、これからは水平分業だ」という論調をよく見かけた。これほど不毛な議論もない。確かに過去のパソコン業界では、垂直統合の日本メーカーは失速した。しかし一方で、近年のIT業界では、オラクルやIBMのようにある分野で垂直統合を進めた企業が優勢になっている。個別の企業の戦略や指針を検証するのに「垂直か水平か」という切り口ではザルの目が粗すぎる。経営はどこまでいってもケースバイケース、すべては特殊解である。

ファッション業界では、SPAと呼ばれる垂直統合の戦略が台頭してきた。その元祖ともいえる企業がZARAだ。ZARAが独創的だったのは、流行を予測するのではなく、すでに流行し始めたものをいち早く取り入れて作って売れば当たる確率は高いという戦略だ。それを実践するために垂直統合を進めた。垂直とか水平とか、どっちが優れているか語っても、意味がない。その事業に固有の文脈の中で考えなくてはならないのだ。

但し、そこで読み取れるのはあくまでその会社の特殊解なので、そのままでは自分の商売に取り込む事ができない。そこから本質を抽出する作業が必要になる。多くの人は、人目を引く「ベストプラクティス」や、一撃必殺の「飛び道具」にばかり目を向ける。だから本質が掴めない。「これからはSNSを活用したマーケティング」とか「ビッグデータ」といった話が飛び道具の典型例だ。

大体、飛び道具として取りざたされるようなものは、多くの人がすでに気づいているものばかり。競争戦略の本質は「違いをつくること」にある。飛び道具や必殺技に寄りかかってしまうと、独自性や差別化がかえって殺されてしまう。

優れた経営者というのは抽象化してストーリーを理解し、その本質を見破る能力に長けている。本当の役に立つのは、個別の具体的な知識や情報よりも、本質部分で商売を支える論理なのだ。戦略構築のセンスがある人は、論理の引き出しが多く、深いものである。

抽象と具体の往復運動

ビジネスの世界では「具体」は実践的で役に立つ、「抽象」は机上の空論で役に立たない、と決めつけてしまうような風潮がある。とんでもない思い違いだ。抽象的な思考がなければ具体についての深い理解や具体的なアクションは生まれない。抽象と具体との往復運動を繰り返す、このような思考様式が最も役に立つ。

仕事は常に具体的なものである。しかし、抽象化なり論理化の力がないと、思考が具体ベタベタ、バラバラになり、目線が低く、視界が狭くなり、すぐに行き詰まってしまう。抽象度の高いレベルで事の本質を考え、それを具体のレベルに降ろした時にとるべきアクションが見えてくる。具体的な現象や結果がどんな意味を持つのかをいつも意識的に抽象レベルに引き上げて考えるのだ。

 

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