メディアのあり方を変えた 米ハフィントン・ポストの衝撃

発刊
2013年7月10日
ページ数
252ページ
読了目安
247分
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新聞社が凋落し、新しいネットメディアが活躍する時代
日本版が創刊され注目を浴びる『ハフィントン・ポスト』。既存の大手メディアに並ぶ影響力を持つに至ったネットメディアはどのようにして生まれたのか。米国の新聞業界のいまとネットメディアが起こす新たな潮流がわかる1冊。


■原点はブログ
ハフィントン・ポスト(ハフポスト)の創刊は2005年。共同創業者のハフィントンの人脈によって、多数の有力ブロガーがハフポストへ投稿するようになった。5年あまりでブロガー数は数百人から9千人へ急増している。ブログは新聞で言えば論説面に相当する。但し、原稿料が発生しない。もっぱら広告収入に頼るネットメディアならではのビジネスモデルだ。有名人のブログが注目を集め、ハフポストへのアクセス数を押し上げる原動力になった。

「ネット上を流れるニュースはタダ」が常識になっている中、ネットメディアを立ち上げて収入を得るのは容易ではない。一方で、長期連載や調査報道など質の高い報道を手掛けるためには優秀な記者を大勢雇わなければならない。そんな環境下にありながら、ハフポストは営利事業として成功し、「アメリカで最も成功したネット新聞」と見なされるようになった。

2011年2月にAOLの傘下入りを決めた際には、3億1500万ドルの買収価格が付いた。買収直前の時点では、月間ユニーク訪問者数は2800万人に達し、全米ニュースサイトの10位以内に食い込んでいた。

ハフィントン・ポストの編集哲学

ネットメディアと聞くと「低コストでスピード重視」を連想しがちだ。インターネットを使っているため、印刷費・配送費を浮かせる一方で、いわゆる市民ジャーナリストを使って人件費を節約する場合も多い。リアルタイムでの報道が可能で、速報ニュースに強い。悪く言えば、速さを優先して品質を二の次にしている。

だが、ハフポストは2012年にジャーナリズム最高の栄誉であるピュリツァー賞を、ブログサイトとして出発したネット新聞として初めて受賞した。ハフポストは優秀な人材に積極的に投資を行っているのだ。

編集長のハフィントンはどんな哲学でハフポストを編集しているのか。

彼女は「我々の使命は『データマイニング』ではなく『ストーリーテリング』。事実を報じるだけでは人々を感化できません。物語にこそインパクトがあるのです」と語っている。

データマイニングがいわゆる速報ニュースだとすれば、ストーリーテリングは長文の読み物であるフィーチャー記事に相当する。ハフィントンは「ハフポストの競争力の源泉はストーリーテリングにある」と強調したばかりか、既存の主流メディアについては「データマイニングばかりやっている」と一刀両断したのである。

アメリカの新聞界では「通常のニュース記事でも読み物として面白くなければならない」という考え方が根付いており、新聞記者も表現力で競い合っている。だからこそハフィントンも「データや統計を紹介するだけでなく、それを生身の人間物語で補強する」と強調するのだ。

ハフィントン・ポスト成功の秘訣

ハフポスト大成功の背景には、著名人によるブログ投稿に加えて、他メディアのニュース記事を集め、見やすいように整理するアグリゲーションがある。だがそれだけでニュースアグリゲーションの老舗グーグルニュースやヤフーニュースに匹敵する存在になるのは難しい。

大成功の秘訣は、「シックスディグリー理論(6次の隔たり)」「感染メディア」「検索エンジン最適化(SEO)」の3つの組み合わせである。検索結果を上位に表示させる高度なSEOと組み合わせる事でアグリゲーションが威力を発揮する。

ハフポストの背景には、シックスディグリー理論の社会学者ダンカン・ワッツ、感染メディアのネット起業家ジョナ・ペレッティ、SEOの天才技術者ポール・ベリーの3人がいた。各自がサイト設計、コンテンツの流布に携わり、ハフポストは「SEOの王者」と呼ばれるようになった。

ハフポストは創刊後、ウイルスのように急速に伝播しながらも一時的な現象で終わらなかった。粘着力があったという事だ。ハフィントンが自ら集めた「セレブブロガー」の威力は強力だった。ハフポストは、数年間の内にアクセス数で老舗のニューヨーク・タイムズと並ぶ存在になった。

 

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