ザ・セカンド・マシン・エイジ

発刊
2015年7月30日
ページ数
434ページ
読了目安
557分
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人類は変曲点にいる
自動運転車、人工知能など、近年次々に技術の飛躍的進歩が起きている要因を説明し、それがもたらす影響について論じている本。

セカンド・マシン・エイジ

人類は数千年の間、人口も社会開発指数もごくわずかずつしか増えておらず、その増え方は目に見えないほどだった。ところが、18世紀後半の産業革命によって、人口も社会開発指数のグラフも、ほとんど直角に傾きが変わった。産業革命による技術の発展は人類の進歩に急激かつ持続的な飛躍をもたらした。産業革命は、人類の歴史において「第一機械時代」の扉を開いた。

そして今人類は「第二機械時代」を迎えている。コンピュータをはじめとするデジタル機器は「目的に向けて環境を制御する頭脳の能力」を発揮する。かつて蒸気機関が肉体労働において実現した事を、知的労働において実現すると言える。この新しいマシン・エイジが人類史のグラフにもたらす変化は、極めて大きい。

自動運転車、クイズ王を破るスーパーコンピュータ、様々なお役立ちロボット。これらはすべて、ここ数年の間に出現した。それも現実の過酷な条件や不安定な状況で能力を発揮してみせた。こうした事から、人類は変曲点に差し掛かっている。デジタル技術は長い間ぐずぐずしていた末に、突如として飛躍的進歩を遂げた。そして、これは今後起こる事の予兆に過ぎない。私達は、セカンド・マシン・エイジの夜明けを迎えている。

 

技術の飛躍的進歩が起こっている3つの要因

なぜ今、デジタル技術の飛躍的進歩が、次々と起こっているのか。それを理解するには、ハードウェア、ソフトウェア、ネットワークにおける技術の進歩の性質を理解する必要がある。

①指数関数的な高性能化
何かが倍々に増える現象が一定期間続くと、最後の方ではとんでもない数になり、最初がごくわずかな数だったとはとても信じられなくなる。コンピュータの性能は、ムーアの法則に従う指数関数的な高性能化が継続した結果、別の次元に達した。自動運転車や人工知能など次々に登場している理由には、これらの製品の心臓部にあるデジタル技術が、製品化が可能な程度まで高速化とローコスト化を同時に実現した事にある。

②デジタル化
デジタル化の爆発的拡大は「知的獲得に新しい道を拓く」「イノベーションを加速する」という2つの結果をもたらす。デジタル化は、知識を増やし、理解を深める事に貢献する。デジタル化によって、アクセス可能になる大量のデータは、科学の生命線である。こうしたデジタル・データは様々な分野で活用されている。

③組み合わせ型イノベーション
多種多様なソフトウェアを動かすデジタル機器がネットワークで結ばれる事によって、様々なアイデアが生み出され、拡散している。情報通信技術という汎用技術は、アイデアを結び付け、そこから生まれたアイデアを再び結び付ける全く新しい方法を出現させた。デジタル化の普及によって、ほぼどんな状況でも大量のデータの収集・提供が可能になり、かつ無限に複製・再利用できるようになった要因も相まって、世界ではイノベーションの積み石となりうるものが爆発的に増えている。

 

デジタル技術の飛躍的進歩によりもたらされる影響

デジタル技術の飛躍的進歩によって、人類史上極めて重要な出来事が2つ同時に出現すると見込まれる。1つは真の意味で有用な人工知能の出現、もう1つは、地球上の多くの人々がデジタル・ネットワークを介してつながる事である。

AIにできる事は増え続け、コストは下がり続け、結果はどんどん良くなっている。地球上の多くの人々がつながる事で、やがて世界の数十億の人々が、知識創造や問題解決やイノベーション創出に参加できるようになる。

セカンド・マシン・エイジは、経済にプラスの結果をもたらすが、一方で格差を生み出す。ほぼすべての産業で、技術の進歩は豊かさをもたらし、より多くの富がより少ない労働から生み出されている。この傾向は所得と富の分布に重大な影響を及ぼす。労働者1人が1時間かかる仕事を機械が1ドルでやってのけるとしたら、雇用主はその仕事をする労働者に時給1ドル以上は払わない。ほとんどコストをかけずにアイデアやイノベーションを複製できるデジタル技術は、多くの人の所得を減らす危険性もはらんでいる。