災害ユートピア―なぜそのとき特別な共同体が立ち上るのか

発刊
2010年12月25日
ページ数
440ページ
読了目安
696分
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災害時の人間の心理がわかる本
サンフランシスコ地震、9.11テロ、ハリケーン・カトリーナなどの災害時の人々の行動や心理を観察し、紹介している。なぜ、人々は災害時には無償の行為を行うのか、平常時にはそれができないのか。災害時に利他主義をもとにした社会が形成されることを事例をもとに説明している。

災害ユートピアとは

災害時には人々は利他的になる。見知らぬ人同士が友達になり、力を合わせ、惜しげもなく物を分け合う。災害直後には、人々は同じ厳しい試練を生き延びたことで、互いに対し連帯感と共感を持つ。そこに人々は喜びを覚える。

一方で食糧をお互いが分け合うことと、食事を配給されることは異なる。前者は互助であり、後者は慈善である。互助の場合、人々は他人に与えることに喜びを感じ、団結が生まれる。災害の初期には組織だった支援がないため、相互扶助のコミュニティが生まれる。

災害は日常生活の疎外感と孤立感に対し、一時的な解決策を提供してくれる。災害を引き起こす自然や人的な力は敵意に満ちたものに見えるが、そこで生き延びる人々は普段より気さくで、情け深く、親切になる。災害は物理的には地獄かもしれないが、一時的ではあるが、社会的なユートピアともいえるものを出現させる。

エリートパニック

エリートは災害時にパニックを起こす。それは、解き放たれた人間は野蛮で危険だという思い込みから来る。社会的混乱に対する不安、貧乏人やマイノリティに対する恐怖、火事場泥棒や窃盗に対する強迫観念、噂をもとに起こすアクションなどを想定する。
しかし、実際には被災者達のほとんどは、こうした行動は取らず、相互扶助の行動を取る。強迫観念にとらわれたエリートによって、銃を持った軍隊や警察が出動し、結果として人的被害を招いてしまったケースが、ハリケーンカトリーナの時である。この時は、マスコミも噂だけで、ニューオリンズの街は凶悪犯だらけだという、報道をしてしまった。

災害と革命

災害と革命には似た部分がある。災害によって人々は団結し、政府の対応が不味ければ、そこには無政府状態が生じる。そうした政府に対し、人々は不満を持ち、後の政権に対して影響を及ぼすことがある。メキシコでは大地震によって、市民が団結し、やがて一党支配体制を崩壊させ、複数政党による民主制へとつながった。

どのように活かすか

災害の中の喜びは、個人に向けられた愛ではなく、見知らぬ者同士の愛、自分の町に対する愛、大きな何かに帰属し、意味ある仕事をすることに対する愛からやって来る。現代社会では、このような愛は冬眠中か認められていない。むしろ日常生活こそが災難である。

問題は災害の前や過ぎ去った後に、それを利用できるかどうかである。現在の世界的な経済不況は、それ自体が広範囲な災害であるが、むしろチャンスである。

災害ユートピアは、自分たちに何ができ、何になれるかを教えてくれる。

 

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