福岡市の問題解決 街の景色を変えたリーダーシップ進化論

発刊
2026年9月9日
ページ数
272ページ
読了目安
293分
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福岡市長を16年間務めた振り返り
福岡市長を16年間務め、様々な改革を行なってきた著者が、これまでの仕事を振り返りながら、リーダーに求められるものとは何かを語っている一冊。

行財政改革から、屋台の存続問題、アイランドシティの負の遺産、天神ビッグバン、スタートアップ都市宣言などを通じて、福岡市の問題解決をどのように進めてきたのかがよく理解できる内容になっています。自治体に限らず、あらゆる組織改革や街づくりに活かせる知見が書かれています。

財源は自ら生み出す

就任直前の福岡市政への信頼度調査の結果は41%と、市民の半数以上が市政を信頼していなかった。新しく外からやってきたリーダーが市民から期待されているのは現状維持ではなく改革だ。

改革の第1歩は「無駄に出ていくお金」を止めること。市長になった時、福岡市は3年間で450億円以上の財源が不足すると言われていた。そこでまず取り掛かったのが、行財政改革の全体像を描くこと。有識者会議を立ち上げ、外部の目で福岡市の歳出構造を洗い出してもらった。そして、できあがった「行財政改革プラン」に基づき、補助金、外郭団体の見直し、随意契約を競争入札に変える取り組みに着手した。

 

問題解決にはクローズな場で解決するケースと、オープンな場で解決するケースがある。基本的には議論はオープンにするべきで、特にステークホルダーが多く圧力が強いものや、関連団体同士の利害調整が大変なものは、議論をフルオープンにすることが効果的である。「裏で潰す」という選択肢を相手から奪える。

但し、改革には必ず反発が来る。自分が戦える範囲を超える数の敵を一度に作り、こちらの対応能力を上回れば、改革そのものが潰されてしまう。改革の方向性はオープンに示し、同時に戦う相手の数を、自分たちの対処能力の範囲に抑えることが、既得権益と戦う時の最も合理的な対処法である。

 

今、福岡市が成長できているのは、この初動の行財政改革があったからこそである。財源は自ら生み出すもので、天から降ってくるものではない。予算がない自治体や企業は、惰性で続いている経費を洗い出してみて、そこに手をつけた組織だけが、次の投資の原資を手にすることができる。

大胆な決断は、新しく誕生したリーダーの役割とも言える。リーダーが交代すると改革に踏み込みやすくなる。また色んなプレイヤーの顔が見えていない時だからこそ、既存のしがらみにとらわれず、大胆な一手を打つことができる。

 

必要な投資は積極的に行う

財源を生み出すために行財政改革に取り組む一方、就任当初から、福岡市が長年抱えていた人工島「アイランドシティ」の巨額な負債と売れ残った土地問題という懸案事項があった。当時の行政は、土地の一部を売却して入ってくるお金で、最終的に土地造成費を賄うとしていたが、土地の売却が停滞していた。

 

解決策は、民間への「立地交付金」というインセンティブを大幅に拡充することだった。市がお金を出してでも早めに土地を売る。土地さえ売れれば、企業が立地して、街が生まれる。税金投入に慎重になるあまり、投資すら抑制的になれば、いつまで経っても街は活性化しない。むしろ、必要な投資は積極的に行うことで、新たな税収と雇用を生み出すべきだと考えた。

立地交付金を付与し、民間側の採算性を確保すると、徐々に土地が売れるようになり、2022年に完売した。2012年時点で160億円の赤字になると言われていたものが、最終的に全体として150億円の黒字化を達成。売れた土地にはマンションや商業施設、物流倉庫などが次々と建設され、固定資産税や個人市民税などで年間約40億円以上の税収が生み出されている。

 

既存のルールを疑う

福岡市の税収は、就任時に2631億円だったが、2026年度予算では4263億円まで増大し、過去最高額を更新し続けている。市区町村の自主財源として大きいのは「市民税」と「固定資産税」である。市の人口が増えたり、市民1人1人の所得が上がれば、市民税は増える。更地に新しく建物が建つか、古いビルが新しいビルに建て替わることで、固定資産税は増える。

 

2015年に打ち出したのが「天神ビッグバン」という再開発プロジェクトだった。市の中心である天神エリアの古くなったビルを、最新鋭のビルに生まれ変わらせ、都心部の安全性を高めつつ、世界から企業を呼び込もうとした。同時に、固定資産税収の増加を通じて、福岡市の収益構造を大きく強化する取り組みにもなった。

 

プロジェクトを進める上で立ちはだかったのが「ビルの高さ規制」だった。福岡市は、博多駅、天神エリアに近い場所に空港があり、天神の福岡市役所付近では67mの高さまでしかビルを建ててはいけないという航空法の制限があった。当時は「高さの規制は変えられない」と言われていたが、「いや、変えればいいじゃないか」とシンプルに思った。何のための、誰のためのルールか、きちんと調べて、おかしければ変える。最終的には、近隣にあるNTTの電波塔の高さを根拠に115mまで高さ規制は緩和された。

福岡市が新しい規制改革を国に提案した数は、直近3年間で44件に上る。これは、同じ特区である東京都の16件を大きく超える。現場に近い自治体として課題は見えていても、ボトルネックになっている国のルールは従うものであり、疑問を持つことすら難しい。それが全国自治体の現実だった。

 

参考文献・紹介書籍