1000冊のビジネス書を読んでわかった最高の1冊

bookvinegarの掲載本が1000冊を突破しました。

1000冊のビジネス書の中で、最も素晴らしい本は何か?
最も役に立つビジネス書は何だったのか?

「最高のビジネス書とは何か?」という答えを探していました。

『7つの習慣』、いいですね鉄板です。
『人を動かす』、名著です。
『影響力の武器』、マーケティングに携わる人には欠かせませんね。

ドラッカー、コトラー、ポーター、大事ですね。

古典がいいのか?
いやいや最近の本にだって素晴らしい本はたくさんあります。

最高のビジネス書とはどの本か?

この問いに答える1つのお話があります。

TEDでマルコム・グラッドウェルが話した「パスタソースと幸せについて」です。

こういう話です。

1970年代、ハワード・モスコウィツというコンサルタントがいました。
彼は、パスタソースの改革をした人です。

ある日、ハワードは、ペプシから1つの調査を依頼されます。

「人工甘味料を使って、完璧なダイエットペプシを開発したいのだが、甘味料の分量はどれぐらいにすればいいか?」

はじめ、ハワードはこれは簡単な依頼だと考えました。

大量にペプシを用意して、甘さの濃度を変えていく。
そして、濃度の異なるペプシを大勢に試飲してもらって、一番人気のある濃度を調べたのです。

しかし、結果は支離滅裂。
みんなバラバラで結果を示すグラフは何の意味をなさなかったのです。

ハワードは、なぜこの実験が悪かったのかを長年考え続けました。

そして、1つのことに気付きます。
本当は完璧な「ペプシ達」を探すべきだったのだと。

ハワードは、キャンベル・スープからパスタソースの開発を依頼されます。
そこで、彼は45種類ものパスタソースを作ってみせたのです。

甘さ、ガーリックの強さ、酸味、トマト味、固まり入り、思いつく限りのバリエーションを作りました。

それを持って全国を周り、多くの人に試食してもらい点数をつけてもらいました。
膨大なデータを持ち帰り、アメリカ人がどんな味のパスタソースが好きかを分析したのです。

すると、味の好みが3つのグループに分かれました。

「シンプルなパスタソースが好きなグループ」
「スパイシーなパスタソースが好きなグループ」
「トマトが固まりで入ったパスタソースが好きなグループ」

重要な発見は3つ目です。
この実験を行なった1980年代初めには、固まり入りのパスタソースは売られていなかったのです。
アメリカ人の1/3が固まり入りのパスタソースが好きであるにもかかわらずです。

この固まり入りのパスタソースは、売り出した途端にパスタ業界で1位になりました。

ハワードは食品業界の考え方を根本的に変えました。

これまで食品業界は、新しいもの開発する時に、顧客に何を食べたいのか訊ねていました。
しかし、顧客は自分たちが何が好きかを知らなかったのです。

そして、もう1つの発見をしました。

これまでパスタ業界では、最高のパスタソースを探し求めていました。
みんなを喜ばす1つの方法、普遍的な方法を求めていました。

しかし、気付いたのです。
唯一最高のパスタソースなどないのだと。

あるのは、異なる人の好みにあった異なる味のパスタソースだけなのだと。

普遍性を追求するのではなく、多様性を理解することこそが大切なのだと気付いたのです。

『TED パスタソースと幸せについて』

最高のビジネス書とはどの本か?

つまり、それは読む人それぞれによって違うということです。

本を読むのが好きな人、嫌いな人。
毎月たくさんの本を読む人、全く読まない人。
サラリーマンの人、経営者の人、学生の人。
エンジニアの人、マーケターの人、営業マン。

それぞれに求められることも違えば、持っている知識も違う。

あるのは、異なる人の好みにあった異なるビジネス書だけ。

では、私たちはどのように本と向き合えばいいのか?

1000冊を読んで思うことはいくつかあります。

・考える力を養うには、ある程度の量は必要。
・ある程度の量を読めば、その後は読む本は選別しなければならない。
・ジャンルは広く読んだ方がいい。

読書には2つの効用があると思います。

①新しい知識を得る
②考える力が身につく

残念ながら、インターネットによって、本の「新しい知識を得る」という相対的価値は減ってしまいました。

一方で、「考える力が身につく」というのは、ネットの情報を見ているだけではなかなか身につきません。

1つのテーマに対して、大量の情報が1つにパッケージされているところに本の価値があります。
読み手は1つのテーマについて、深く考えさせられることになる。

そうして、何冊も何冊も読んでいくうちに、少しずつ考える力が養われていく。

私たちは、ネットのせいもあって、すぐに答えを求めてしまいます。
ハウツーを求めてしまいます。

しかし、すべての人に即効性のある答えが記された本など存在しません。
仮にそんなものがあったとしても、すぐにみんなが取り入れて、その答えはすぐに陳腐化してしまいます。

そもそも、世の中、何の知識が役に立つかなどわかりません。
時代や環境によって価値観すら変わってしまう。
だから学び続けることが大切なのだと思います。

自分が何も知らないことが学べるからこそ、人は学ぼうとする。
もしかすると、読書の本当の意味は、「自分が何も知らない」ということを知ることなのかもしれません。

「自分自身が無知であることを知っている人間は、自分自身が無知であることを知らない人間より賢い」 ソクラテス

スポンサーリンク

コメントをどうぞ

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です