アメリカで唯一の日本人漫画家ミサコ・ロックスが語る「アメリカでチャンスをつかむ技術」④

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■日本人の強みを活かせ

アメリカに行きたいと思ったけど、アメリカ人になりたいと思ったことはありません。やっぱり、日本人でがんばるのが好きなんです。アメリカ人がアメリカでがんばっても、それは普通のアメリカ人の中の1人にしかすぎない。

それに、日本の良さを知らしめたいというのがあります。向こうの小学生の子たちに日本の情報を教えてあげると、その子たちは日本に住みたいという。こういう反応を見ると日本人で良かったなと思います。

日本人は海外に出て有利な点も多いと思います。手先が器用なので、サービス業でも普通に求められるレベルの10倍を返せる人種なんです。空気を読むのもうまい。これはアメリカで使えます。日本の情緒に感激してくれる人もいますし、輪の中に日本人がいると場が和みます。

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■私はまだ努力しています

漫画を出すことになって、180度人生は変わりました。でも、漫画はトレンドの移り変わりが激しいので、常にリサーチをして作品を描いて、エージェントに持っていく。そこでOKを出されたり、ダメだったりして、対策を立てて描き直す。その繰り返しです。

アメリカには漫画雑誌がないので連作というのがないんです。だから1冊ごとが勝負。たとえば、日本のように、編集者さんと「じゃあ、こんな感じでやっていきましょうか、よろしくお願いします」的なやり方はないんです。

まずサンプルを50枚ぐらい描かないといけない。これで3ヶ月以上はかかります。鉛筆で描いて、きれいな状態にして、キャラクターの解説もつけ、さらに物語の概要も初めから結果まで全部書かないといけない。

物語がどうやって始まり、どういう佳境を迎え、どうやって終わるのか、というのを全部見せないと、出版社はその作品を買うかどうか判断しない。だから、契約まで半年ぐらいかかります。

もちろん、そこまでやって最終的に採用されないこともあります。それで打ちのめされたら終わり。慣れましたけど、常に仕方がないからやるって感じです。

みんな、私はすごい成功したと言ってくるけど、私はまだ努力しています。

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■今でも漫画が一生の仕事になったとは思えない

これまで日本も含めて、8冊を出版しました。イギリスで2年間ぐらい子ども向けの漫画も連載していました。アメコミの脚本なんかもやりました。

ただ今でも、漫画が一生の仕事になったとは思えないです。そこは結構、冷めた目で見ていて、漫画はビジネスなんだと、自己分析しています。もう常に危機感です。

次の目標は、映画化とかしたいですね。なんかいけそうな気はするんです。以前、テレビ局にはプレゼンをしまくりました。あと一歩で、アニメ化されるところまでいったんです。ただ、アメリカには女子向けの漫画があまりなくて、リスクが高いということで、最後の最後で断られました。

落ち込むときは、この世の終わりだとか思いますけど、2、3日すれば立ち直ります。失敗しても、そこまでやれたって捉えているんです。そうでもしないとやっていけないですよ。とにかく努力です。現状のまま満足したくはないんです。

■著者情報

ミサコ・ロックス

コミックアーティスト。NY在住。
法政大学在学中に奨学金派遣留学で渡米。卒業後、単身アメリカに渡り人形師、中学校の美術講師などを経て漫画家に転身。ディズニー・ハイベリアン出版会社から2作出版。

著書『Rock and Roll Love』がNY公立図書館ベスト・ティーンズ・ブックの1冊に選ばれる。
雑誌DFCの連載作品 『Peach de Punch!』がアジア向けの英語教科書に採用。

NHK、BBCのテレビドキュメンタリーに出演後、雑誌日経ウーマンのウーマン・オブ・ザ・イヤーの1人に選ばれる。
全米各地で講演会やワークショップにも力を注ぎ、世界で活躍を広げている。

■ウェブサイト

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