『やり過ぎる力』の著者 朝比奈一郎さんに聞く 『今、日本に必要なこととは何か?』(後編)

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−−−−社会構造の変革には、若年層人口の多いことが原動力になるといわれます。しかし、高齢化が進む日本では、若者はマイノリティです。社会構造を変革するには、不利な環境にあると思いますが、今若者たちはどのように動くべきでしょうか?

アラブの春などの革命で若者たちが立ち上がった原因の一つは、職がないということでした。日本でも、若年者の失業者率が高まってきています。失業問題以外にも年金がどうなるのかといった、若者が怒る要素は多い。

日本では若者がマイノリティだと言っても、絶対数で見れば多い。一緒になって騒ぐことはできます。歴史上、マイノリティが革命を起こした例はたくさんあり、マイノリティだというのは理由になりません。

確かに、選挙で勝負、となれば、数の壁にぶつかるというのはあると思います。しかし、今はまだその前の段階。青山社中では、「みんなでアクション」ということを言っています。怒りから、みんなで行動するというのが大切です。

−−−−意見が通らないから、選挙に行かないという若者がいます。

詳しく調べたわけではないですが、僕の感じているレベルでは、1票を投じても仕方がないから行かないということではないと思います。比較的、若者の意見が通るとしても、若者は選挙に行かないと思います。

そもそも危機感が足りないのだと思います。これが、A党は戦争する、B党は戦争しないという選挙があったとしたら行くでしょう。財政危機の話があって、年金ももらえないといっても、まだリアリティを持っていない。

−−−−日本がなくしつつあるのは「チャレンジ精神」だという問題意識を持たれたと書かれています。日本がチャレンジ精神を失った原因はどこにあるのでしょうか?

表面的には教育に問題があると思います。伝記やロールモデルとなる人物教育をもっと行うべきです。チャレンジして時代や社会を創ってきた先人に憧れることが原点かと。著名人に限らず。しかし、この問題は教育だけでなく、もっと根深い問題があると思います。

チャレンジというのは、何かを守るということに近い。自尊心、家族、コミュニティ、もっと言えば、地域や国、何をどう守るかという意識が弱くなっているのだと思います。

例えば、坂本龍馬もこのままだと日本を守れないと考えて、立ち上がりました。渋沢栄一も、自分の立身出世が目的ではなかった。人間は、自分のためだけに頑張り切れるほど強くない。利己心だけでは、やり過ぎる力はついてきません。

−−−−やり過ぎる力を発揮するための3つの本質として「死への意識」「後世への意識」「自分への意識」を常日頃から意識することが大切だと書かれています。この意識を持つために、どういったことが必要でしょうか?

やはり大局観という一言に尽きます。これは古今東西問いません。歴史や世界を学ぶことで感じとるしかないと思います。

昔は、もっと身近に死を感じることが多かった。だから、自然に死や後世といった意識を身に付けやすかったのかもしれません。しかし、今はそれを意識的に考えるしかありません。

−−−−朝比奈さんのオススメの本を教えてください。

人の生き様という意味では鹿島茂さんの『渋沢栄一』や最近だとアイザックソンの『スティーブ・ジョブズ』などが面白いです。あとは、弊社社名の由来にもなった亀山社中を創設した坂本龍馬が主人公の『竜馬がゆく』。歴史・文明論では、川勝平太さんの『日本文明と近代西洋』や塩野七生さんの『ローマ人の物語』。梅棹忠夫さんの『文明の生態史観』なども良いですね。

リーダーシップ論ではハイフェッツの『最前線のリーダーシップ』、野田智義さんの『リーダーシップの旅』、コヴィの『7つの習慣』などもお勧めです。拙著『やり過ぎる力』の巻末の参考文献に挙げている本は、どれも面白いので、是非読んで欲しいと思います。

■著者情報

朝比奈 一郎 (あさひな いちろう)

青山社中 筆頭代表(CEO)

中央大学(公共政策研究科)客員教授

東京大学法学部卒業。ハーバード大行政大学院修了(修士)。経済産業省でエネルギー政策、 インフラ輸出政策などを担当。アジア等の新興国へのインフラ・システム輸出では省内で中心的役割を果たす。 小泉内閣では内閣官房に出向。特殊法人・独立行政法人改革に携わる。

「プロジェクトK(新しい霞ヶ関を創る若手の会)」初代代表。
主な著書に「やり過ぎる力」、「霞ヶ関構造改革・プロジェクトK」、「霞ヶ関維新」など。

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