日本文化の論点

発刊
2013年3月5日
ページ数
189ページ
読了目安
226分
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日本のサブカルチャーこそ世界に輸出できる
ニコニコ動画、コミケ、AKB48、ボーカロイド、など、日本特有のサブカルチャーを解説しながら、現代の日本社会を考察した1冊。


■失われた20年の裏側で
世界にほこる「ものづくり」の技術と高い民度を誇る戦後日本、それゆえに21世紀の現在においては決定的な制度疲労を起こし、ゆるやかに壊死しつつある「高齢国家」日本という姿は、この国の「表の顔」いわば<昼の世界>の姿に過ぎない。

「失われた20年」と呼ばれるこの世紀の変わり目に、戦後的なものの呪縛から解き放たれたもう1つの日本が育ってきている。それはサブカルチャーやインターネットといった、新しい領域の世界だ。この陽の当たらない<夜の世界>こそ「失われた20年」の裏側で多様で、革新的なイノベーションとクリエイティビティを生み出してきた。

この<夜の世界>の生み出す新しい原理は、ソーシャルメディア、動画共有サイト、匿名掲示板、アニメ、アイドルといった「ガラパゴス」的だと言われる現代の日本的想像力である。これから先の世界はキリスト教的な文化基盤もなければ、西欧的な市民社会の伝統がないにも関わらず、民主主義を行使し、消費社会を謳歌する「日本のような」国が増えるため、現代の日本的想像力こそ21世紀のスタンダードになり得る。

二次創作のインフラこそ輸出すべき

ニコニコ動画において「初音ミク」などのボーカロイドの楽曲や映像は日々進化を遂げている。ここではあるユーザーが投稿した動画を、別のユーザーが改変する事で洗練される、という現象が無限に連鎖するという現象が常態化している。

こうした二次創作的な消費文化なくして、現代日本のサブカルチャーの快楽を享受する事は難しい。日本のオタク系文化の「おもしろさ」を100%輸出しようとするなら、作品そのものではなく作品を楽しむ環境そのもの、コミックマーケットやニコニコ動画といったインフラを輸出しなければならない。

戦後日本が輸出に成功し、グローバルな市場を牽引した文化の多くが、本質的にはコミュニケーション様式の輸出であった。例えば「通信カラオケ」「ニコニコ動画」も二次創作的なゲームだと位置づける事ができる。情報技術の発展した今こそ、日本的想像力の本質<夜の世界>、すなわちコミュニケーション様式を創作のインフラとして「輸出」できるのではないか。

コンテンツの価値の変化

インターネットや携帯電話の普及は2つの変化をもたらしている。

①コンテンツをただ「受け取る」だけの快楽に、消費者の側が「参加する」快楽を付与した。漫画、アニメ、ゲームなどのキャラクターの「二次創作」が加速した。

②情報そのものにつく「値段」がゼロ円に近づいている。情報化の進行は、飛躍的に情報(テキスト、音楽、映像等)を供給過多にした。コピー可能なコンテンツに、お金を払う価値を感じなくなった一方、体験の価値が値上がりした。

この2つの変化は、消費者の側からコミュニケーションする快楽こそが、価値を帯びており換金可能である事を示している。例えば、AKB48は楽曲ではなく、握手という体験を売る。この変化は<昼の世界>の音楽消費から<夜の世界>への変化と言えるかもしれない。

<夜の世界>から<昼の世界>を変える

この国の古い<昼の世界>と新しい<夜の世界>のパワーバランスは圧倒的に前者に偏っている。<夜の世界>に勝っているものは目に見えない力、つまり「想像力」しかない。

<昼の世界>からは見向きもされない<夜の世界>で培われた思想と技術、ここにこの国を変えていく可能性が詰まっている。サブカルチャーのようなものにしかできないこと、想像力の必要なことにしかできないものがこの世界には確実にあり、今の日本にはそれが一番必要である。なぜなら、目に見えるものだけでは人はワクワクしないからである。

 

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