すべては「先送り」でうまくいく ――意思決定とタイミングの科学

発刊
2013年3月29日
ページ数
352ページ
読了目安
619分
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成功の鍵は「待つ」ことにある
直感に頼って判断する事は大切だが、経験などによる事前分析がなければ、最悪の決断となりかねない。エキスパート達に共通するのは、瞬時の判断でも、長期にわたる意思決定でも、そのタイムフレームの中で、意思決定をぎりぎりまで先送りしている点にある。

とかく短期的な判断が求められる現代において、よりよい意思決定をするにはどうすれば良いかを、数々の事例を紹介しながら考察する1冊。


■よりよく生きるために待て
様々な意思決定の場面において、かけるべき時間の長短にかかわらず、どれも似たようなパターンで優れた決定が導かれる事がわかっている。ミリ秒で良い判断を下すためのプロセス(野球の打者が利用する「見るー準備するー打つ」)は、数秒で良い判断を下すためのプロセス(戦闘機パイロットが利用する「観察するー情勢判断するー決断するー行動を起こす」)と似ている。数分、数ヶ月、数年でも、それほど変わりはない。いかなるタイムフレームであっても、優れた意思決定の根幹にあるのは、与えられた時間内で決定を先送りする力だ。

良い先送りと悪い先送り

現代社会は生産性と効率にとりつかれている。そして先送りを軽蔑する。1970年代から「今すぐやる」「ぐずぐずしない」を推す産業がキラ星のように登場する。ドラッカーは「第1優先事項をまず第1に。第2事項には手を出さない」と言い、スティーブン・コヴィーは、できる人は優先順位の高い事を先にこなす、と説いた。

昔からそうだった訳ではない。古代エジプトやローマでは、先送りは有益で賢い行動と思われていた。18世紀半ばまで、先送りを敵視する見方はむしろ少数派だった。現在、経済学から歴史学まで、多種多様な学問が先送りに関する様々な啓示をもたらしているが「統一理論」は存在しない。一つだけほぼ全員が同意するのは、人間は先送りをしたがるものだという点である。今すぐ行動を起こす事のコストが、実際以上に大きく感じられて、家事、試験勉強、メールの返信等を先延ばしにする。

よい遅延と悪い遅延を見分けるにあたっては「時間的不整合性」が重要な意味を持つ。時間に対して一貫性を持ち、適切な割引率を採用するのであれば、判断を先送りするのはなんら悪い事ではない。問題は、先送りをする事のメリットを見誤る時である。割引率の高い人は、あまり成功した人生を送っていない。体重は重く、借金も多い。給料の安い仕事に就き、離婚率も高い。人間はついつい未来の出来事を大幅に割り引く。

悪い先送りを止めるには、短期に対する割引率を低くして、長期の割引率に近い合理的なレベルに揃える方法を見つけるのだ。まずは自分が陥りやすい傾向を自覚する事から始めるといい。

最高の投資戦略は「何もしないこと」

賢い先送りをするコツは、目の前の結果と先の結果を比較できるようになる事だ。真に能力のあるプロフェッショナルは、迅速に行動する力を持ちながら、意図的に遅れ気味な行動を選ぶ。彼らは直感と分析の両方を駆使する。勢いに流されず、自分が動くべき理想的なタイミングを待つ。意思決定までどれくらい時間があるか見極めて、与えられたタイムフレームの中でぎりぎりまで待つのである。

投資家は特定の数字や考え方に縛られ、大多数の動きに流され、過敏に反応したかと思うと、自信過剰にもなる。そしてリスク評価というものが極めて苦手だ。必要以上に頻繁にトレードをしたり、不当に高い金額を払ったりしてしまう。

一方で極めて良好な成果を出している投資家もいる。その一人はウォーレン・バフェットだ。成功者達には一つ重要な共通点がある。長期的な視野に集中しているのだ。バフェットは、自らの成功の一因が、決断を急がない点にあると言っている。「我々の仕事は、行動を起こす事によって報酬が得られる訳ではない。正しい判断をする事によって儲けが入るのだ。そのためにどれくらい待つかと問われれば、永遠でも、と答えよう」

 

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