外資系金融の終わり―年収5000万円トレーダーの悩ましき日々

発刊
2012年9月14日
ページ数
240ページ
読了目安
342分
推薦ポイント 6P
Amazonで購入する

Amazonで購入する

真面目に働く気を削がれます
人気ブログ「金融日記」を運営する外資系投資銀行のトレーダーの著者が、外資系投資銀行の生々しい実態や、世界金融危機以降の悩ましい現実を紹介。

高額な年収をもらって働く人たちがどういった仕事をしているのか、金融危機以降、激変する金融業界の今がわかる1冊。


■金融ほど素敵なビジネスはない
銀行というのは、預金や、金融市場で短期の資金を借りて、企業などに長期の資金を貸し出して、その長短の金利差で儲ける、というのが基本的なビジネスモデルである。ところが、日本では不景気が続き、企業がお金を借りて新しい事業に投資しなくなった。そして、お金を貸してくれと言ってくる企業は、資金繰りに困った潰れそうな会社ばかりになってしまった。その結果、日本の銀行はお金の貸し出し先がなくなり、日本国債をせっせと買い込むようになっていった。最近の日本の銀行は、年寄りから集めた預金で日本国債を買うという簡単なお仕事をしているのである。

日本の銀行が簡単なお仕事をしている時、世界の銀行は金融工学を駆使して、もっと高級なビジネスをしていた。預金を集めて、その金を中小企業に貸し出すなんてしょぼいビジネスはやめて、借りてきた金で世界のマーケットで博打を打っていた。

大きすぎて潰せない

投資銀行が打つ博打の中でも特に冗談がきつかったのが、サブプライム住宅ローンを束ねてこねくり回して作ったCDOビジネスだ。こういった金融商品を作って売り捌くのが投資銀行の本来の仕事なのに、不動産バブルが永遠に続くと信じた銀行経営者は、自分でも大量に抱えていた。そして、金融危機が起きた。

しかし、銀行は市民の生活にとって必要不可欠な決済機能などの金融システムを担うので、簡単に潰れないような様々な法規制があり、万が一潰れそうになると大きすぎる銀行は、事後的に政府に救済される。つまり、銀行業とは、ギャンブルをして儲かればボーナスがもらえて、潰れそうになると税金で救済されるという、実に美味しいビジネスなのだ。

日本化する外資系の報酬体系

金融学者や監督当局は、悲惨な金融危機を引き起こした原因の一つは、トレーダーのインセンティブ構造にあったと考えた。うまく儲ければ多額のボーナスを受け取り、失敗しても最悪の場合でもクビになるだけ。これが過剰なリスクテイクを誘発したと言われた。そこで学者や監督当局は「トレーダーのインセンティブを金融機関の長期的な利益と一致させる」ことを要請した。

これに対し、外資系投資銀行は、ボーナスを減らして基本給に回し、分割払いとした。この分割払いの仕組みは、トレーダーをとにかく会社に残ろうとさせ、ヘッドハンターの保証を増やしたことで、ジョブマーケットの流動性を著しく下げた。そして、過去に約束したベテランの報酬の支払いのために、新人の報酬水準は低いままに据え置かれた。これは日本企業の年功賃金と同じ構造である。そして、現在のように外資系投資銀行を取り巻く経済環境が厳しくなる中、リストラを断行せざるを得なくなった。日本化したが、激しいリストラは「外資」のままであった。

金融コングロマリットの終焉

バブルをここまで大きくした原因は、低金利政策やロビー活動による歪な規制緩和である。本当は、政府高官や政治家にも責任がある。しかし、彼らは、ただ強欲な金融機関を厳しく規制しなければならないと考えた。ボルカー・ルール、バーゼルⅢである。

世界の金融規制は、大きすぎて潰せない銀行を、規制で縛って、めったなことでは潰れないようにしようという、金融保護主義の方向に行ってしまっている。

金融業の本質はリスクテイクである。現在の巨大金融コングロマリットを温存し、潰れそうになったら政府が救済し、それゆえに金融機関で働く者の報酬水準を公務員的なものにしよう、などという発想は社会主義そのものである。

こうして大きな金融コングロマリットでの仕事は、血気盛んな優秀な若者にとっては、退屈なものになりつつある。

 

あわせて読みたい