劣化国家

発刊
2013年9月20日
ページ数
15ページ
読了目安
19分
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なぜいま西洋は衰退しているのか
ハーバード大学歴史学の教授が「なぜいま西洋は衰退しているのか」、その原因を論じた本です。かつて、西洋文明がその他の地域に対して産業革命を起こすことで成功した要因を解説し、その枠組みが壊れてしまった現在について説明しています。


■西洋の衰退の原因は単なるデレバレッジではない
西洋は停滞している。世界銀行は2012年に、ヨーロッパ経済は収縮し、アメリカの成長率は2%に落ち込むと予測。一方、中国はその4倍、インドは3倍のペースで成長すると見込まれた。

こうした西洋の減速に対する流行の説明に「デレバレッジ(債務の圧縮)」というものがある。債務圧縮という痛みを伴うプロセスが、その原因だという。デレバレッジ論によれば、愚かにも右肩上がりの不動産神話をあてこんだ家計や銀行が、必死で債務を減らそうとしている。そして消費を抑え貯蓄を増やそうとしたために、総需要が落ち込んだ。そのプロセスで致命的な債務デフレーションが起きるのを防ぐべく、公的部門は財政・金融刺激策をもって介入しているが、今度は公的部門が債務超過危機に転じるリスクが生じている。

しかし今生じているのは、単なるデレバレッジではない。問題は、西洋の法と制度にある。

「大いなる分岐」はなぜ起こったのか

1500年代〜1970年代末までの間、西洋人は「その他世界」人にはおよびもつかないほど豊かになり、世界の生活水準には大きな格差が生じた。人類の1/5を占めるに過ぎない少数派が、これほどの物質的・政治的優位に立ったのはなぜか?

地理的要因とそれが農業に及ぼした影響は、ユーラシアがその他地域よりも繁栄した理由にはなっても、ユーラシアの西端がなぜ1500年以降、東端をしのぐ繁栄を遂げたのか、その理由を説明する事はできない。何が大いなる分岐を引き起こしたのかという問いに答えるには、制度が果たした役割に目を向けるのが一番だ。人間の組織には2つの段階がある。

①アクセス制限型のパターン
低成長経済、比較的少数の非国家的組織、中央集権的な政府が被統治者の同意を得ずに運営される、個人や王家のつながりをもとに組織された社会的関係

②アクセス開放型のパターン
急速な経済成長、多くの組織からなる豊かな市民社会、大規模で分権的な政府、法の支配などの、非人格的な力が支配する社会的関係

イギリスを筆頭とする西ヨーロッパ諸国は「アクセス制限型」から「アクセス開放型」に初めて移行した国々だった。国家がこれを実現するためには「制度的しくみを通じて、エリート間の非人格的関係が生まれるような環境を整え」、「政治的・経済的機構へのアクセスをエリート層の間で開放させるインセンティブを考案し、維持する」必要がある。この時点でエリートの個人的な特権が、非人格的な権利へと変換される。アクセス開放によって、経済と政治の領域で開かれた競争が正当化された。特権階級の「収奪的」な政治制度ではなく、「包括的」な政治制度を築く事で、西洋は発展してきたのだ。

なぜ西洋は衰退しているのか

西洋と東洋の大いなる再収斂の始まりを理解する上で、この枠組みは有効である。今の西洋世界が抱える経済、社会、政治上の問題は、かつて世界で最も優れていた、西洋の制度が衰退している事の表れであり、現在深刻な危機を迎えている。

①金融規制の脆弱さ
政治プロセスが複雑であるため、規制は逆効果を生じかねない。例えば監督機関は、規制される側に取り込まれる事がある。現在の規制は複雑なせいで、脆弱性をかえって高めてしまう。

②法の支配の劣化
アメリカでは1969年以降、政府の有効性と説明責任、規制の質、汚職の抑制という4つの点で、ガバナンスの質が低下している。どんな政治制度も、主に組織化された利益集団によるレントシーキング行動のせいで、時と共に硬化する。

③市民社会の空洞化
政党、労働組合、慈善団体、あらゆる組織の会員数が減少し、市民社会が空洞化している。問題は政府が過去50年にわたって、市民社会の領域を過度に侵害するようになった事である。

 

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