量子革命

発刊
2026年9月26日
ページ数
256ページ
読了目安
419分
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量子力学の基本中の基本
現在、研究開発が進んでいる量子コンピュータや量子伝送技術の基礎にある量子力学の基本的なことをわかりやすく解説している一冊。

数式なども登場せず、数学や物理の知識がなくても、量子力学の本質的な特徴を理解できる内容になっています。AIの登場によって、計算資源こそが最も重要になる時代にあって、新たな可能性を導く量子コンピュータや関連技術について、基本的なことを学ぶことができます。

量子の世界は確率でしか測れない

量子力学という理論の本質的な特徴は、古典物理学が前提としていた「確実性」に代えて、「確率」という考え方を導入したことである。ある現象が起こるかどうかを確実に予測することはできず、私たちはそれが起こる確率を計算することしかできない。

 

古典力学の世界では、ある物理系について関心のある性質を観察し、それらに数値を割り当てるのが自然な考え方である。しかし、その観察対象が数個の原子で構成されている場合、測定に必要な光がどれほど弱くても、その光は原子と相互作用し、影響を及ぼしてしまう。量子の世界では、「測る」という行為そのものが、私たちが理解しようとしている対象を変えてしまうのである。

この効果は「不確定性原理」の基礎となっている。ハイゼンベルクによって提唱された不確定性原理が明らかにしたのは、自然そのものが粒子の「位置」と「速度」を同時に、しかも完全な精度で知ることを禁じているという限界である。これは測定装置の性能不足によるものではなく、宇宙の法則そのものに組み込まれた、本質的かつ根源的な制約であり、位置と速度の測定だけでなく、時間とエネルギーのような、他の多くの測定量の組み合わせにも現れる。

 

不確定性原理によって、量子系の性質を記述するには、同時に完全な精度で測定できないため、確率分布という考え方を採用しなければならない。量子測定の結果は確実に予測することができず、可能な結果それぞれの確率を計算することしかできない。

 

量子もつれと物理世界の実存性

ビットは情報の基本単位であり、2つの値を取ることができる。そして、2つの異なる状態を取りうるあらゆる仕組みによって表現することができる。「二進法」は、0と1の単純な並びによって、あらゆる数値や言葉、メッセージを表現する。現代のコンピュータでは、ビットは電流が流れているか、遮断されているか、2つの状態で表される。電流を流すか止めるかを制御するスイッチであるトランジスタが何十億個も協調して動き、複雑な計算を可能にしている。

これに対して、量子ビットは「重ね合わせ」と呼ばれる現象によって、0と1の両方を含む状態を同時に取ることができる。量子力学における測定結果は確率的に決まる。測定前の量子ビットは、0でも1でもない両方が重なり合った状態にある。この状態の豊かさと多様性を持つ量子ビットを多数組み合わせることで、計算のあり方は根本的に変わる可能性がある。現在の最も高性能な古典コンピュータでも限界に近い問題が、量子アルゴリズムによって解けるようになる未来が見えてくる。

 

観測される前の量子ビットの状態は、測定して0が得られたとしても、それが測定前から0だったとは言えない。観測される前の量子ビットの状態を、古典物理学で考えるような「客観的な現実」とみなすことはできない。量子力学では測定そのものが結果を決めるのであり、その前の状態は不確かなままなのである。

1つではなく、2つ以上の量子が重ね合わせの状態になるのが「量子もつれ」である。これは量子ビット同士の深い結びつき、いわば「絡み合い」とも呼べる関係である。この結びつきによって、2つの量子ビットは遠く離れていても相関した振る舞いを示す。一方の粒子に作用を及ぼすと、距離に関係なくもう一方の状態にも即座に影響が及ぶ。光子や原子のような粒子の間では、量子もつれの状態を実際に作り出し、観測することができる。

アインシュタインは、現実は私たちの観測とは無関係に存在するという世界観を固く信じていた。しかし、この決定論的な世界観は、実験によって否定された。私たちは、観測とは切り離された客観的な世界が存在すると考えることはできない。「現実」と呼んでいるものは、実は観測という行為を通じて定まることが示されている。

 

量子もつれや量子相関はという現象は、情報の計算や処理、伝送において、古典物理では到底実現できない新しい可能性を切り開く。相関とは、一方の系を測定することによって他方の系についてどれだけの情報を得られるかを表す尺度でもある。その相関が強いほど、より多くの情報を引き出せることになる。この特別な能力を利用すれば、情報の伝送や計算の技術を大幅に向上させることができる。現在の課題は、こうした潜在能力を最大限に活用できるアルゴリズムを開発し、それを実現することである。

 

古典コンピュータによる並列計算は、利用できる物理的資源の数によって制限されてしまう。これに対して、量子コンピュータでは、状態の重ね合わせを利用することにより、量子ビットが可能性の空間に存在する多数の経路を同時に探索できる。そして、量子ビット数が増えるにつれ、同時に計算できる入力状態の数は、指数関数的に増大する。この指数関数的増加こそが、量子コンピューティングに革命的な力を与えている。

 

 

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