存在起点のマーケティング 旗を掲げよ AI時代の分野No.1戦略

発刊
2026年9月11日
ページ数
360ページ
読了目安
345分
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AI時代のマーケティングに必要なこと
AI時代になり、提案や説明、見せ方で差がつかなくなったマーケティングは、今後何を重視すればいいのか。
商品やサービスの違いがわかりにくくなっていく中で、会社が比較によって埋もれないために必要なことが解説されています。

時代の変化によって、常に変わり続けるマーケティングのあり方について、今考えなければならないことが書かれています。自社の強みを改めて見直し、何が強みなのか、どのような価値を持っているのかを振り返るヒントになります。

分野No.1の旗を立てる

AI時代には、提案、説明、見せ方が一定の水準まで整ってしまい、違いが弱い会社から埋もれていく。そのため、先に決めるべきは「どこで勝つのか」だ。自分たちが真っ先に思い出される、新しい分野そのものをつくる。分野No.1がない会社は平均化されてしまう。

 

分野No.1は「社会課題×事業の型」という構造で見つける。必要なのは「どの市場で戦うのか」という視点であり、市場として十分に整理されていない需要の源「社会課題」を見ることだ。どの会社にも、あまりに当たり前すぎて、誰も価値だと思っていないものがある。既にあるものを、勝てる分野として見えるようにし直すのだ。

 

分野No.1の旗が立つ場所は、次の3つの見方で見えてくる。

  1. 見慣れすぎて価値だと思っていないものは何か(日常的な業務、、地域の資源、自社の文化)
  2. 顧客や社員が「仕方ない」とのみ込んでいる重さは何か(非効率なプロセス、潜在的な不満、選択肢の欠如)
  3. その重さは、社会のどんな課題につながっているか(廃棄物削減、従業員の幸福度、地域社会の発展)

大事なことは、一度言葉にしてみることだ。私たちは、どんな社会課題に対して、どの事業の型で、何という新しい分野のNo.1を目指すのか。

 

現場のデータを事業の材料にする

AIの価値は、AIそのものだけでは決まらない。本当の差は、AIに何を学ばせるかで決まる。だから、武器になるのは、その会社にしかない現場の反復と、そこから生まれる現場データをどれだけ持っているかである。

社内で生産性を高めるために磨いた型や業務の知見は、やがて社外にも価値を持ち始める。自社の中で使っていた仕組みが、顧客向けのサービスになる。現場の知見が、新しい収益源になる。

 

AI時代に重要なのは、どのポジションを取るかである。そして、そのポジションは、現場データの入り口を握ることで固まる。本当に見るべきは、会社が日々繰り返している泥臭い反復である。なぜなら、繰り返されていることには、既に判断があり、型があり、あとから仕組みに変えられる要素が含まれているからだ。

この無意識の反復に気づくために、次の2つの補助線を引く。

  • 頼まれなくてもやってしまうことは何か
  • お金をもらわなくてもやってしまうことは何か

この2つの問いの重なりの中に、会社の本質が潜んでいることが多い。

 

見えてきた強みを事業に変えるためには、3つの段階で進める。

  1. 現場で何が繰り返されているかを見る
  2. 既に残っているものに気づく(記録、メモ、問い合わせ履歴)
  3. その蓄積を外部データとつないで価値に変える

社内にある記録は、外部データとつながった瞬間に、単なる記録ではなくなり、事業の材料になる。

 

大事なのは、自社はどの方向に価値を出す会社なのかを決めることだ。その勝ち筋を絞り込むためには次の7つが地図になる。

A(Autonomy)自律化型:ムダなく、自分で回る仕組みにする
I(Innovation)価値転換型:今あるものを、新しい価値に変える
L(Language)言語設計型:わかりにくいことを、伝わる形にする
E(Engagement)関係深化型:相手との関係を深く、長くする
A(Analytics)洞察抽出型:データから意味を見抜く
D(Detection)予兆発見型:問題が起きる前の兆しをつかむ
R(Risk)先手安心型:危ないことを先に防ぎ、安心をつくる

 

ナラティブを残す

AIは情報の勝負を平準化させたため、情報を増やすこと自体では差がつきにくい。必要なのは情報を足すことではなく、捨てること。そして、残すべきものは、顧客自身が変化を体験した瞬間の「ナラティブ」である。顧客がどこで迷い、何に気づき、どの瞬間に変わり、今何を語っているのか。その変化の筋道を掘り出すことが、AI時代に最も強いマーケティングの核になる。

 

設計すべきは「変化体験タッチポイント」である。これは、顧客が商品を買う前に「この未来なら、自分も進んでいけそうだ」と感じる接点のことである。大事なのは、顧客が説明を読むだけで終わらず、少し先の自分を体験できるかどうかである。

変化体験のタッチポイントは、次の3つのステップで強くなる。

  1. 変わった人の断片を見せる:「あの人が変わった」が人を引き止める
  2. その世界の時間に入ってもらう:「自分も変われそうだ」と感じる
  3. 変化の瞬間に立ち会ってもらう:「この未来に入っていい」と決める

 

変化体験タッチポイントをつくるために残すのが「ナラティブ」だ。ナラティブとは、その人自身が、自分の変化を自分の言葉で語り始めたもののことだ。これは、顧客の中に残っている「変化の記憶」を問いによって掘り出す。