覆す力

発刊
2014年2月3日
ページ数
219ページ
読了目安
215分
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推薦者

負けた時こそ学ぶことがある
同期である羽生義治という偉大な棋士に追いつけず、苦悩の中で研鑽を続けた森内俊之氏。ついには永世名人の称号を得て、トップ棋士の1人となった森内氏の勝負哲学が語られている本です。負けから何を学ぶかが大切であると説きます。


■自分の特徴に気付き、適切な努力をする
「プロとして大成するためには、努力と才能のどちらが大切ですか?」と時折、質問される。将棋の世界においても、棋界を統一するような何十年に1人の王者は子供の頃から特別視されている。しかし、プロを目指す大部分やほとんどのプロ棋士にとってさえ、それは他人事だ。才能の足りない所は努力で補うしかない。

持って生まれた才能は変える事ができないし、やみくもな努力は効率が悪い。自分の特徴に気付き、適切な努力をする事こそが、これまでの自分を変える最良の方法ではないか。人はそれぞれ得意な事が違うので、自分に合ったジャンルを見つけて、自分に合った方法で力を発揮すればいい。

難しそうに思える事でも、やってみれば案外できてしまう事は多い。大人になってからだって、将来の事は未知数だ。過去の自分を覆しながら、自分の可能性に挑戦していけばいい。

直感と思考

棋士がイベントなどでたくさんのアマチュアを相手に同時対局を行う事があるが、棋士はそういう時にはほとんど手を読まずに、直感的に指していく。それでも局面の難易度が高くならない限り、間違える事はほとんどない。

だが、相手がプロ棋士の場合、直感のみに頼る事は危険を伴う。そこで行うのは、直感で浮かんだ評価をいったん保留し、他の選択肢を1つ1つ検証していくという作業だ。仮にA、B、Cという3つの選択肢があるとして、Aがベストだという直感があったとしても、B、Cを選んだ時の事をじっくり考え、それらの可能性を消去してからでないとAを選ぶ事をしない。

このような思考は無駄になる時間も多くなるため、考えすぎで疲れてしまう事もある。しかし、局面を観察して分析し、最善手を求めて考え続ける根気が人と比べてあるからこそ、良い成績を収める事ができた。

いかにミスをしないかの勝負

将棋に「逆転の妙手」は存在しない。プロ棋士の対局で驚くような逆転が生まれるのは、相手が致命的なミスをした時だけだ。一手の好手のみで勝負がひっくり返るような事はまずありえない。

逆に、それまでの良い流れをすべて壊してしまうような「逆転を許す悪手」はある。プロの世界において勝負を分けるのは常に紙一重の差だ。要するに、将棋とはいかにミスをしないか、少なくするかという戦いなのだ。夢のような一発逆転はないが、逆はありうる。だからこそ焦らず、ミスをしないように、一手ずつ丁寧に進めていかなければならない。

ではミスをしないためにはどうすればいいのか。ミスをしないという事はまず不可能だが、少なくする事ができる。ミスを一度で止める事を意識すればいいのだ。将棋ではミスをした後、続けてミスが起こりやすい精神状態に陥る。そこで大切なのは、冷静になって丁寧に考え直す事だ。そして、一回目のミスを許容する余裕だ。

敗戦は勝利のための必要経費

将棋に絶対はない。プロの世界において勝率が8割を超える事はめったいにないので、どんなに強い棋士でも2〜3割は負ける事になる。その前提で行うゲームだからこそ、負け方が重要になる。負けをいかに有効に活用し、そこから何を学ぶかを考えるべきだろう。成長につながる1つの負けが、後の2勝、3勝をもたらしてくれる。

将棋を始めた頃は、負けるのが本当に悔しかった。しかし、奨励会で将棋について知れば知るほど「負けて悔しい」が「なぜ負けたのか?」に変わっていった。負ける事もあるからこそ、その負けをしっかり検証し、同じ過ちを繰り返さない事が重要なのだ。

 

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