そして日本経済が世界の希望になる

発刊
2013年9月14日
ページ数
196ページ
読了目安
213分
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アベノミクスが進める金融緩和についてノーベル経済学者が語る
インフレターゲットを提唱するノーベル経済学者が、日本の経済政策について語った1冊。アベノミクスの評価が書かれている。


■金融緩和の成功条件
日本銀行はマネタリーベースを2年間で倍増させる「異次元の金融緩和」を打ち出した。金融緩和には、大きく分ければ2つの成功条件がある。

①人々が持つ将来への期待を変えること
これはさらに2つに分類できる。まずは、国家の経済は将来的に落ち込まない、と人々が信じること。その時点でマネーストックの増加がインフレを誘発するという、望ましい状況がもたらされる。もう1つは中央銀行が実際に、その金融緩和を実現に移す、と信じられることだ。もし、将来、インフレが到来すると人々が信じれば、お金の使い方にも変化が生まれてくる。

②短期金利がゼロであること
長期金利が0.9%くらいなら、民間部門の借入金利は政府部門よりも高くなる。そこで中央銀行が長期国債を買えば、長期金利の上昇を抑制し,民間部門の返済負担を軽減できる。

FRBもECBも、中央銀行が金融緩和を行って経済をてこ入れしている。こうした手法は王道と言って良い。しかし日本国内における一部の識者は世界標準の方法論に反対し、金融緩和批判に固執してきた。

期待を変える必要がある

金融緩和は、人々の期待を変えない限り、効力を発揮しない。そして、期待を変える事は簡単ではない。

「失われた20年」とは、日本人が「あまりお金を使わなかった」時期の事だ。不況だと騒ぐ一方で、個人金融資産は増加し、企業の内部留保も積み上がった。そして、この国の経済は良くならない、デフレから脱却できないという感情を抱くようになった。だからこそ、自らの国に対して十分な投資をしようという気になれなかったのだ。

日本経済における大きな問題は少子高齢化にある。その結果、投資需要は縮小し、それが実体経済に多大な影響をもたらす。しかし、少子高齢化が起こっているからといって、デフレになる必然性はない。少子高齢化によって労働力人口が減少すると、資本に比べて労働力が稀少になる。その結果、労働分配率が上昇し、効率的な資本の限界生産力は低下する。ゆえに、企業が資本を過度に蓄積しないよう、実質金利を低く抑えなければならない。そのためには、マイルドなインフレが必要とされる。

日本経済は世界のロールモデルになれるか

はたして「アベノミクス」は人々の「期待」を動かせるのか。アベノミクスがもたらした最もわかりやすい変化は円安である。投資の分野でもある程度の変化がみられた。しかし、今の段階で何かを語るのは時期尚早だろう。

インフレ目標の数値については、4%が適切だ。しかし、今すぐ4%のインフレ目標を提示する事が政治的に不可能であるなら、まずは2%という数字は妥当だ。この政策実験がうまくいけば、まさに日本は世界各国のロールモデルになる事ができる。アベノミクスによって本当にデフレから脱却できるなら、それは将来同じ状況に陥った国に対しても、大きな示唆になるからだ。

ハイパーインフレは起きない

金融緩和が「財政ファイナンス」につながる、という懸念を示す人たちがいる。日本のように巨額の財政赤字を抱える国が紙幣を印刷する事でしか資金を得られなくなった時、ハイパーインフレという話は当然出るだろう。しかし現実には、今の日本に差し迫った問題は存在しない。

日本は過去にハイパーインフレを経験したが、それは破滅的な戦争が起こったからだ。ハイパーインフレは中央銀行がその機能を強化するから生じるのではなく、ガバナンスの崩壊によって引き起こされる。

インフレは一度暴走し始めたら止める事は不可能で、あっという間にハイパーインフレになると語る人物を信用してはいけない。方法論的にそれは何の問題もなく制御できる。

 

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