「電池」で負ければ日本は終わる

発刊
2012年6月22日
ページ数
242ページ
読了目安
332分
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電池を制するものが次の100年を制する
日本オリジナルの技術であるリチウムイオン電池のシェアが、2012年4〜6月期には韓国勢に逆転されてしまった。DRAM、携帯電話、液晶、太陽光発電など、日本のものづくりの負けパターンから、抜け出すにはどうすべきか。

電気自動車やスマートグリッドなどの最近の事例を紹介しながら、これからの電池の重要性を示し、日本のとるべき方策を示す。


■電池を制するものが次の100年を制する
リチウムイオン電池は日本のオリジナル技術である。商品化も世界に先んじており、それが電気自動車(EV)やスマートグリッド(次世代送電網)の世界で必須製品になりつつある。加えて、EVやスマートグリッドの普及によって促進される新エネルギー革命の時代には、モーターの中核技術であるネオジム磁石や、電力制御システムの中核を占めるパワー半導体も極めて重要な基幹部品に位置付けられる。

つまり、劣勢に立たされた日本の産業界を救うのはリチウムイオン電池とその関連技術に他ならない。

日本が勝つために必要なこと

リチウムイオン電池の2012年4〜6月期の出荷実績の世界シェアは次の通り。

日本(三洋、ソニー、パナソニック等):33.7%
韓国(サムスンSDI、LG化学):42.6%

2008年のシェアは日本50.1%、韓国21.2%であったにも関わらず、わずか3年余で逆転されてしまった。日本はDRAMメモリーに始まって、液晶パネル、携帯電話、太陽光発電など、初めこそ世界シェアの過半数を上回りながら、技術が成熟化してくるとシェアを急速に落とす負けパターンを繰り返してきた。

円高という為替問題や人件費を中心としたコストの問題もあるが、日本の巻き返し戦略には、以下の対応が必要である。

①技術流出の防止
韓国企業から日本の技術者の引き抜きが進んでいる。日本企業は、営業秘密として守るべき技術情報を、社内でどう管理するかが重大な経営課題になってきた。日本も性悪説に立って、アメリカが制定した「経済スパイ法」のような厳格な法律を導入すべき時期が来ている。

②新たな産業競争力の強化
リチウムイオン電池の発明者である吉野彰・旭化成フェローによれば、電池のシェアが落ちているのは、用途である携帯やパソコンなどのIT製品のシェアが落ち込んだ結果であるという。本体を作っているのが中国、韓国であるため、調達先が日本から移ってしまった。

しかし、電池の材料では、日本はまだ7割ぐらいのシェアを持っている。電池の原材料費は、製品の75%程度を占めており、実際は材料を缶詰にして売っているようなもの。だから、電池は手放しても、材料さえ握っていれば構わないという。

リチウムイオン電池の産業構造を、川上(部品・素材)、川中(組み立て)、川下(製品・サービス)に分類すると、単純組み立てに当る「川中」は早い段階で撤退の決断をするのが賢明である。そして「川上」と「川下」を一体化した戦略を描き、市場を創造していくしか日本に生き残る道はない。

③国際標準化戦略
日本は、匠の技への信奉が強く、標準化を軽視する傾向が強かった。しかし、WTOのTBT協定により、国際標準を獲得しなければ市場で勝負にすらならないという、戦いのルールが変わってしまったことを認識すべきである。

リチウムイオン電池の競争で、最も警戒すべきは中国だという声が根強くある。中国企業とのコスト競争は重い課題だが、それ以前に、中国は材料や安全性の分野で米国と組み、独自の標準を握ろうとしている。

三元系(コバルト、ニッケル、マンガン)を正極材の主流とする日本に対し、オリビン系(リン酸鉄)を採用する米中との対決の図式は、どちらが市場を制するかというゼロサムゲームの展開になるのが避けられない。

 

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