円のゆくえを問いなおす: 実証的・歴史的にみた日本経済

発刊
2012年5月7日
ページ数
278ページ
読了目安
333分
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円高は、日銀による政策の失敗が原因だ!
過去から現在までの各国の経済政策を分析し、なぜデフレと円高が止まらないのかを説明している。円高の原因は何か、なぜ為替介入は効果がないのか、日銀の量的緩和政策がなぜ有効に機能しないのか、といった内容を説明しており、為替について基本的なことが学べる1冊。


■円高は深刻化している
2012年1月時点をリーマン・ショック直前期と比較した場合、23.8%の円高が進んでいる。通貨高が生じているのは豪州、ブラジル、カナダ、中国、インド、インドネシア等だが、これらの国と比較して突出している。

しばしば実質実効為替レートの動きから円高は深刻でないという議論がされる。しかし、名目実効為替レートは過去最悪の水準にあるため、実質実効為替レートの動きがマイルドであるのは、日本が貿易相手国と比較して物価上昇率が低く、かつデフレであることが原因。円高という対外要因ショックを、デフレという形で国内経済において調整していることを意味する。この事から、円高は深刻と言える。

円高の原因

為替レートの変化には、長期的には自国と外国の物価上昇率、短中期的には名目金利、予想物価上昇率が影響を与える。この3つに影響を与えることが可能なのが、中央銀行による金融政策である。

円高の議論の中には「円高は、欧米諸国の経済不安に基づくドル安、ユーロ安というグローバルな要因が原因である」という主張がある。しかし、円高が進み始めた2007年以降の動向を見る限り、ドル安、ユーロ安というグローバルな要因による各国通貨の影響にはばらつきがあり、この主張は間違いであることがわかる。

2007年半から始まったサブプライム・ローン危機から欧州財政危機に至る現在まで、各国中央銀行は政策金利をほぼゼロにまで下げ、信用緩和政策や量的緩和政策といった形で中央銀行のバランスシートを拡大させ、マネーを増やすという金融緩和策を行ってきた。

その結果、日米、日ユーロのバランスシート比の値は、それぞれ2倍、1.8倍に達している。つまりFRBやECBと比較して日本銀行がアグレッシブに金融緩和政策を行っていないことが、予想物価上昇率を低位にとどめ、結果として円高をもたらしている。

デフレと円高を止めるために何をすべきか

1994年以降、日本はデフレ状態にある。この間、日本銀行は全く金融政策を行っていなかった訳ではない。ゼロ金利政策や、日銀当座預金残高を増やす量的緩和政策を行ったが、デフレを止めることはできなかった。しかし、一度デフレに陥った後にデフレから脱却した事例は、リーマン・ショック後のスイスやスウェーデンなどにある。

効果的な金融政策には以下の事が必要である。

①短期間に大規模な金融緩和を行う
量的緩和は、物価上昇率や予想物価上昇率をマイナスからプラスに転換させるほど十分かを検討する必要がある。日本の量的緩和政策は、他国と比較して、長期間かつ小出しの緩和であった。

②オペレーションの政策効果を高める
日本の量的緩和政策におけるマネタリーベースの増加の大半は短期国債及び残存期間1年未満の長期国債の買い取りであった。よって、長期国債の金利を下げる効果を得られなかった。

③金融政策を行う「枠組み」を明確化し、予想インフレ率への誘導を確実にする
過度な円高を生じさせず、安定的なインフレ率を確保するには、目標とするインフレ率を他の貿易相手国の多くが採用している目標インフレ率と少なくとも同程度にする必要がある。日本は他国と比較しても、現在の目標インフレ率1%を2%以上に引き上げる必要がある。

④以上を通じて、レジーム(体制)転換を果たす
金融政策が功を奏するには、政策当局がデフレ脱却に対して消極的な姿勢を転換することで、人々の予想や認識を変えることが必要となる。レジームを転換させるには、明確な政策転換が求められる。

 

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