学力が高いと仕事ができるはイコールではない
学力が高い人材と本当に優秀な人材は驚くほど別物で、大企業は「優秀ではない学力の高い人」を毎年、採用している。実は徹底したリスクマネジメントが、結果として本当に仕事ができる人の採用に繋がる。「リスクを潰していった結果、どこにも見つからなければ優秀な人材である」というアプローチは、実は極めて合理的である。「人を採りたい」という願望が強くなっている採用現場で、長所にばかり視点を集めたのでは「この人はできるに決まっている」という採用側の美しいストーリーにあらゆる情報が巻き込まれてしまい、安易な「期待先行の採用」となって悲劇を招く。
仕事の質は情報を扱う力で決まる
仕事の質を決めるのは、持っている情報の質量そのものではなく、各自に固有のものとして備わっている情報を使う力である。この能力が高いほど、結果的に情報との接点が増え、取り扱う情報量が増大する。情報を生産性に繋げる力を仕事力と呼ぶ。この力は、人の価値観や心の成熟度など、人の奥底に根付いているものと深い関係があり、「人間力」などと言い換えられる性格そのものである。人を観る時の対象は、この仕事力に絞り込まなくてはならない。
本当に仕事ができる人に備わっている力
仕事ができる人とは「問題解決領域で動ける人」である。定められた役割をこなすだけでなく「自分で考え、自分で動く」ことができる。本当に仕事ができる人に備わっている仕事力には次の2つがある。
①考える力(概念化能力)
目に見える「具体」から、それまでにはなかった「新しい概念」を創り出すこと。視野に捉えた情報を集めて、全体像を導き、自分の力で方向性を定めるのに必要な材料となる概念を自分自身で創る。
②大人の意識(成果意識)
他者の立場に立って物事を考え行動できる心の成熟。人のために責任を背負って動く人は、取り組みが持続的になり、集中力も高い水準で維持される。
応募者の行動の目的に視点を絞る
「考える力」と「大人の意識」は、見えにくい性格を持っている。これを見抜くには「対象に向き合う力」に視点を絞り込む。応募者が「対象に向き合う力」に欠けることがわかった時点で、その応募者に「仕事ができる人が持つ仕事力」に欠けていることがわかり、効率的なリスクマネジメントが可能になる。
「対象に向き合う力」を持つ人は、自分の劣等感や虚栄心を満たすための自己目的に縛られることがない。組織や全体から求められているミッションの解決をごく自然に目的化し、ごく自然に情報や人に向き合う。「対象に向き合う力」を持つ人か見極めるには「その人の行動が自己目的からのものか、あるいは組織や全体への貢献を目的とする利他的なものなのか」を、一生懸命考えながら行動観察に取り組むことが必要である。
「対象に向き合う力」を見抜くNGポイント
①前提を無視して好き勝手に動く人②議論の型や段取りを前もってはっきりさせないと気が済まない人
③議論のまとめ役に収まり、他のメンバーと接点が希薄な人
④自分の発言が終わるたびに達成感をにじませる人
⑤抽象論や理想論ばかり語り、泥臭い現実論を嫌う人
⑥慇懃無礼な言動や過剰な敬語など、不自然な言動が目立つ人
⑦「大声を出す」「話をかぶせる」「威圧する」など攻撃的な人
⑧「熱意」も見せず、次々に軽やかにそれっぽくしゃべり続ける人
⑨自分の知的欲求や自己顕示欲を満たすことを優先する人
⑩集合時刻より大幅に早く来る人
⑪あなたの話にずっと頷き続けてくれる人
⑫ずっとメモを取り続けている人
⑬常に即答、即応してくれる人
⑭言葉の取り繕いが目立つ人
与えられた情報に意識を集中して、その処理に取り組む行動(内向)と、他者からの情報に心を寄せる行動(外向)を繰り返す人が、生産的な思考を実践できる逸材である。