自社のビジネスモデルと強みにあった組織戦略が必要
「企業理念」を実現するのは人である。自社の強みである「コア・コンピタンス」を考え、進化させるのも結局は人である。だからこそ、この2つを強化するための組織戦略の「仕組み」「制度」、それに伴う「施策」が必要である。その良し悪しが企業力の差になっていく。
自社の「ビジネスモデル」や「コア・コンピタンス」を理解し、十分に検討した上で、その成功事例である組織戦略の「仕組み」や「制度」それに伴う「施策」を取り入れないと、失敗してしまう。どの会社にも万能な仕組み・制度・施策などない。同じ業界でも会社によって「コア・コンピタンス」は異なる。だからこそ、その「強み」が活かされるような組織戦略の「仕組み」「制度」、それに伴う「施策」の導入が必要となる。
人が本気で働くための前提
人は以下の2つに共感できないと、本気では働けない。
①社外規範:会社が世の中に提供している価値
自分が携わるビジネスが世の中のためになっていると感じられなければ、モチベーションは上がらない。大事なのは、「自分たちは何をやるべきか」(ミッション、ビジョン、理念)を明確に言葉にすることである。会社全体で共有し、それを真剣に実現しようとすることである。
②社内規範:会社の社風や求められる働き方
社内で理想とされる行動や考え方、行動指針である。自分が所属する組織の行動指針を好きになれなければ、毎日職場に行くことがつらいはずだ。同じ業種、職種でも、会社によってやり方は全く異なる。
組織診断7つの視点
下記の7つのポイントを意識しながら「良い企業文化(残したい企業文化)」と「良くない企業文化(変えたい企業文化)」を洗い出し、自社の目指すべき理想の企業文化を描く。
①意思決定の「方法」と「スピード」
競争優位性の発揮の仕方などによって、最適な意思決定のスピードがある。必ずしも速ければいいわけではない。思考し検討する深さや広さを保ちながら、意思決定の速度だけ他社より速いことが理想である。意思決定の方法やスピードを見直すだけで、会社は強くなる。
②「価値観」「方針」の浸透
大事にすべき「価値観」や「方針」が明確にされ、社員に伝わるように明文化されているか。経営トップの「価値観」「方針」を末端の社員も大事にしているかが企業の健全性を決める。伝わらないケースには3つある。
- トップの言葉が一般の社員の視座とは異なることから、受け取る側が真意を正確に理解できない
- 中間管理職が十分に機能しておらず、トップの言葉や意図を勝手に変換してしまう
- 価値観や方針はあるが、魂が入っていない
③人材の「質」と「量」
自社に求められる資質や能力のすべてを満たしている人材など、ほとんどいない。自社にとって必要な人材をきちんと定義できて、会社は強くなる。自社に必要な人材を整理するポイントは2つ。
- 求める価値観やタイプ、資質と能力要素といった、人の変わりにくい部分まで含めて見ているか
- 行動特性や人間性で、共通で持っておかなければならないものは何か
④「自由」と「規律」のPDCAマネジメント
「PDCAサイクル」に、「自由」と「規律」を組み合わせて使えているか。「自由」と「規律」のどちらかだけでもダメで、両方を上手に使い分けることができれば、PDCAサイクルの価値を最大限に活用できる。
- 規律性:やり切る力があるので「Do(実行)」と「Action(改善)」がうまい
- 自由度:アイデアを改善の方向性を出すので「Plan(計画)」と「Check(評価)」がうまい
⑤情報の「共有」と「活用」
情報共有が下手な会社は、成功の再現性が低く、成功の頻度を高められず、同じ失敗を何度も繰り返す。
⑥評価の「仕組み」と「報酬」
その会社が求める価値を出している人が、きちんと評価されているか、その評価と報酬を含めた待遇が結びついているか。ポイントは3つ。
- 評価すべきものがきちんと設計されているか
- その評価すべきことがきちんと発見される仕組みがあるか
- その評価を何によって報いようとしているか
⑦「主体性」と「モチベーション」
「当事者意識」がない人材ばかりの会社は、決して強くなれない。「当事者意識」が低ければ、変化を感知するアンテナの感度も鈍い。大事なことは「社外規範」「社内規範」への共感である。