プラスワン思考ですべてが変わる
プラスワンとは「もう1つ」「もう1回」「もうひと工夫」といったプラスアルファの意味合いである。そしてプラスワン思考は、そういった心構えを指す。歯科医院の経営でも、トップである院長はスタッフに対して、もう1つ、もう1回、もうひと工夫の心構えで接する。同じようにスタッフはお客様である患者さんに対して、もう1つ、もう1回、もうひと工夫の心構えで接する。
目の前の物事に対して「もう1つ」「もう1回」「もうひと工夫」と取り組むのは、苦労を伴う。しかし、そこで何もしなければ現状からの変化は望めない。プラスワン思考には、次の欠かせない3つの要素がある。
①Pay it Forward
日本語では「恩送り」という意味になる。若手の頃、勤務先などの院長から歯科医療に関する知識や技術、ノウハウを学ぶ。その「恩」がある院長にお返しするのが「恩返し」である。一方「恩送り」とは、自分が上司の立場や開業して院長になった時、自分が受けた「恩」をスタッフに対して送ること。
つまり、自分が学び蓄積してきた歯科医療の知識や技術、ノウハウを次の世代へ伝承していくことを指す。自分が得た学びを自らの内に留めていたら、スタッフの成長は望めない。オープンにし、共有していくのが大前提となる。
②For You
自分以外の第三者のために物事を行う。歯科医院を経営する立場から言えば、患者さんのため、スタッフのため、という意味合いになる。上辺だけの「For You」は、患者さんもスタッフも敏感に感じ取る。その背後に潜む「For Me」を知ったら、信頼を失うことになりかねない。だからこそ、偽りのない「For You」のスタンスで臨まなければならない。
③見返りを求めない
自分の行動が、報われるかどうかを気にしない。報われるかどうかを気にせず、人に与え続けるのはハードルが高い。しかし、見返りを求めない行動を続けていたら、目にする景色が少しずつ変わる。
プラスワン思考は、歯科医院を短期間で激変させるような効果が望めるものではない。院長が第一歩を踏み出し、スタッフに浸透していくにはある程度の時間を要する。しかし、院内に根づけば着実に効果を生み、変化をもたらす。
まず必要なのは、トップである院長の意識改革である。院長が変わらなければ何も始まらない。院長がプラスワン思考に目覚めると、行動が変わっていく。院長の変化によって、スタッフの思考、行動も変わっていく。スタッフ同士で恩送りを厭わず、仲間のために尽くし、その行動に対して見返りを求めないようになる。
一方、患者さんに対しても、恩送りを厭わず、患者さんのためを思い、その行動に対して見返りを求めないようになる。
こうした思いの連鎖は、院長を中心としたチーム力を強固なものとする。互いに認め合い、成長していく環境が整う。それによって患者さんに質の高い医療が提供される。地域の皆さんへも同様の思いで貢献する。
理念を持ち、それを繰り返し伝える
プラスワン思考は、「プラスワン」へと自分を突き動かす原動力があってこそ成り立つ。ここでいう原動力とは、自分がそもそもやりたいこと、目的やミッション、使命を指す。一言で言えば「理念」である。理念がないと、「あと1歩」と自分を奮い立たせて頑張ることはできない。
自身への問いかけによって、他の誰かの意見ではない、自分の意見にたどり着くことができる。これを1度実行して終わりにせず、繰り返し行なうことが大切である。
- 私は何を求めているのか?
- そのために「今」何をしているのか?
- その行動は私の求めているものを手に入れるのに効果的か?
- もっといい方法を考え出し、実行してみよう
次は理念に基づいて行動を変えなければならない。この時、限られた時間の中で、自らの行動において優先順位を意識することが重要である。緊急かつ重要な最優先事項の次に、重要だが緊急ではない事項に取り組んでいく。