業務指示は40%しか実行されていない
チェーンストア企業において、効果が出やすく重要な業務というと、店舗業務になる。売上を上げるのはあくまでも店舗だからである。チェーンストア企業特有の特徴として、本部と店舗が物理的に離れていて、本部が戦略を立案し、店舗が実行するという役割分担になっている。そのため、本部が決めた戦略に対する店舗の実行力が重要になってくる。
チェーンストア企業では、日々、本部から店舗宛に業務指示が出されている。業務指示は、商品に関するものや、接客、店舗オペレーション、4S、衛生管理、クレーム対応、キャンペーンなど、多岐にわたり、商品部、営業部、企画部、マーケティング部、総務部、経理部など、本部の色々な部署から配信されている。これらの業務指示は、メール、グループウェア、メッセージングアプリ、FAX、電話などのツールを使い、1店舗に対し1日5件から、多いところでは20件以上も出ている。
しかし、これら本部からの業務指示に対する店舗での実行率は、一般的に40%程度と言われている。
業務指示の実行率が低い原因
チェーンストア企業は、本部と店舗という組織構造になっており、この2つは物理的に距離が離れている。この物理的に距離が離れているということが、情報の伝達やコミュニケーション面で大きな足かせになっている。さらに、店舗数が増えることでも実行力が低くなってしまう。店舗数が少ない時は、本部の目が行き届いているため、本部で考えた戦略が確実に実行されるが、店舗数が多くなると目が行き届かなくなるため、本部の指示に対する実行力が落ち、店舗ごとのバラツキが出てくる。
本部は戦略さえ立てれば、実行は店舗の責任という考えになりがちで、実行後の効果測定が行われないことも多い。つまり、チェーンストア企業は、実行力が自然と落ちてしまう構造になっている。
それでも実行力が高い企業は存在する。実行力40%問題の真の原因は次の3つにある。
①実行してもしなくても同じという空気
本部と店舗の役割が明確になっていないため、業務指示が投げっぱなしになってしまう。店舗側も人であるため、ちゃんと見てくれないものを実行する気にはならない。業務指示の投げっぱなしが続くと、「実行しても実行しなくても同じ」という会社の雰囲気が出来上がってしまう。
本来、本部の役割は、業務指示を書いて配信するだけではなく、実行状況を確認し業務指示の効果を測定し、次につなげるということまでが役割である。しかし、このことが明確になっていないことが多い。
②物理的に実行できない量の業務指示
店舗が物理的に実行できない量の業務指示が配信されてしまうのは、業務指示の全体像が見えていないことに起因する。業務指示の全体像が見えないため、業務指示の優先順位を判断できず、また、業務指示を書くことが仕事になってしまっていることが、店舗にとって物理的に実行できない量の業務指示を出してしまう要因になっている。
③曖昧な業務指示(業務指示の書き方)
業務指示の書き方に問題がある。複数の実行を求める依頼事項が書かれているが、タスク期限、回答形式、報告手段がほとんど明記されていない。たった1通の曖昧な業務指示であっても、全店舗に影響を及ぼす。
実行力を向上させるための8つの仕組み
人に頼らず実行力を上げるには、実行力が上がるよう仕組み化することである。仕組み化とは「やらざるを得ないようにすること」である。
①業務指示を「見える化」する
②PDCAサイクルをつくる
③業務指示をテンプレート化する
④業務指示をスリム化する
⑤実行力(数値)で評価する
⑥業務指示に対するルール化を策定する
⑦運用を決め定着化させる
⑧本部は覚悟をもって挑む