管理職の仕事とは
1人で行っていたことを2人以上の人間が行うことで、より多くの利益を得ようとするのがマネジメントである。上司がすべて自分で仕事をこなす必要はないし、すべてのスキルに長けていなくてもいい。知らないことがあってもいい。
そして、管理職の仕事とは、人々が共に働くことでより良い成果が出るようにすることである。この単純な定義を軸として、チームや組織は運営されている。
たとえ頭がよくて人望もあり、身を粉にして働いたとしても、チームが平凡な成果しか上げられないという評価なら、「優れた上司」とはみなされない。優秀な上司なら、権限を与えられさえすれば、大抵の業績は好転できる。
フェイスブック最高製品責任者(CPO)クリス・コックスが、管理職を評価する際の判断基準は大きく分けて2つ。
- チームの成果。利用価値が高くて精巧なデザインという目標をクリアしているか
- チームの能力とメンバーの満足度。優秀な人材を採用しているか、個人の能力が引き出されているか、メンバーが協力して楽しく仕事をしているか
つまり、1つ目は現在のチームの成果に対する評価であり、もう1つは将来の成果への評価である。いい仕事をしているチームは長期にわたり成果を上げており、評判も高いもの。管理職の仕事はあくまでもチームを助け成果を上げること。日々、様々な業務に追われ、多岐にわたる要求に応えていても、忘れてはならないことである。
優れた成果を上げるために上司はどうやってチームをサポートすべきか
管理職の仕事は「3つのP」に分けられる。優秀なマネジャーは成果を出すために次の3つの「てこ」をどう生かすか、常に自問自答している。
①Purpose(目的)
チームが求める成果であり、「Why」と言い換えることもできる。管理職になって最初にしなければいけないのは、チーム全体が成功のイメージを把握していて、目標に向かっていく積極的な気持ちが、彼らにあるかどうかを確認することである。メンバー一人ひとりに理解させ、納得させ、同時に自分自身も肝に銘じる。
②People(人)
仕事にふさわしいメンバーが揃っていなかったり、目標を達成する環境が整っていなかったりすると問題が生じる。まずはメンバー間の信頼関係を構築し、彼らの長所と弱点を把握し、誰に何を担当させるか判断し、彼らが実力を発揮できるようにする。
③Process(プロセス)
個人が優れた能力を持ち合わせ、目標をしっかり把握しているチームも、協力体制や価値観が定まっていないと、単純な作業すら複雑化する。誰が何をいつまでに終わらせるか、どんな原則にのっとって意思決定を行うか決まっているか。チームで仕事をする場合、プロセスなくして業務は進まない。チームの規模が大きければ大きいほど、プロセスへの比重が大きくなる。
チームの規模が大きくなれば、上司個人の仕事のスキルはそれほど重要でなくなる。それよりも、チームにどれだけ乗数効果をもたらすことができるかが問われている。
マネジメントは1日にして成らず
新人管理職のキャリアはほとんどの場合、まず数人のチームで業務について広く深く学びながら、信頼関係を築き上げていく。メンバーがお互いのことをよく知り、最小限のリソースを分かち合うのが小さなチームである。小さなチームの場合、とりわけ「人」が重要である。
「人がよい仕事をしていない時、その理由は2つしかない。1つは、やり方がわからない。もう1つは、やり方がわかるが、やる気がない」
なぜ仕事のやり方がわからないのか。想像できるのは、部下にその仕事をこなすだけの能力がないということ。部下に能力がない場合、管理職がやるべきことは、部下に技術を習得させるか、技術を持つ人間を新たに採用するかのどちらかである。
やる気のない部下については、まずはなぜやる気がないのか探る必要がある。可能性として思い浮かぶのは、優れた仕事とは何かを把握していない。あるいはそれが自分のやりたい仕事ではない場合。また、努力したところで何も変わらないと思っている場合もある。
まずは「優れた仕事」について部下の認識が一致しているかどうか把握する。次に部下のモチベーションを確認し、どちらにも問題が見当たらなかったら、能力の有無に移る。