働くための価値観が大きく変わってきている
アメリカ人心理学者のマーティン・セリグマンが唱えたように、人間の欲望というのは「達成」「快楽」「意味合い」「良好な人間関係」「没頭」の5つからなる。
団塊世代以前は前の2つ「達成」「快楽」を強く欲した。汗水垂らして頑張って、高い目標を達成する。そして、そのご褒美として、美味しい料理を食べ、ワインを飲み、きれいな女性と一夜を共にするなどの「身体的・心理的・社会的な快楽」を味わうことが幸福のカタチだった。
しかし、生まれた頃から既に何もかもが揃っていて、物や地位などを欲して頑張ることのない30代以下の世代、何かが欲しいと「乾けない世代」は、後ろの3つ「意味合い」「良好な人間関係」「没頭」を重視する。何か大きな目標を達成するため「身体的、心理的、社会的な快楽」を味わうことのためだけに、一心不乱に頑張ることができない。
モチベーション革命
「達成」「快楽」「意味合い」「良好な人間関係」「没頭」の幸せの5つの軸の中で、上の世代は「達成」と「快楽」を追求する人が多い。一方で「乾けない世代」は「良好な人間関係」や「意味合い」を重視する人が非常に多い。仕事よりも、個人や友人との時間が大事。何気ない作業の中にも「今、自分がこの作業をやっている意味」を見出せないと、途端にやる気が起きなくなる。「没頭」タイプの人も多く、「いくら稼げるか」よりも「仕事に夢中になって時間を忘れてしまった」ということに喜びを感じる。
ここで認識しておかなければならないのが、「乾けない世代」は決められた目標に対してただ邁進してきた上の世代とは、戦う理由が違うということである。そして、まさに「これをやれば成功する」という黄金律がない時代の今だからこそ、自分だけにしかできないことを突き詰め、楽しみをお金に換えていくことができる「乾けない世代」は強い。
偏愛こそが人間の価値になる
今後、人工知能革命が加速していくと、単純作業のような仕事はどんどんAIが担っていくことになる。ロボットに代替されず、人が仕事をしていく上で大切になるのは「他人から感謝されて、お金をもらえること」である。これこそがどんな時代が来ても永遠に変わらない仕事のルールである。これからの仕事で大事なのは、自分にとって得意なことで、いかに相手にとって「有ることが難しいこと」を探し当て続けるか。
人工知能にも代替不可能はものは「嗜好性」である。簡単に言えば「私は誰になんと言われても、これが好きだ」という偏愛である。人が頭で考えて、答えを出せるようなものは、人工知能の方がより優れた答えを早く出せるようになる。しかし、人の嗜好性のように非効率なものは人工知能に代替されない。
これからは「他人からは見れば非効率かもしれないけれど、私はどうしてもこれをやりたい」という、偏愛とも言える嗜好性を、個人がどれだけ大事に育て、それをビジネスに変えていけるかが資本になっていく。そして、「偏愛」を突き詰めることは、まさに「乾けない世代」の得意分野なのである。
自分の好きなものを育てる
人間は自分の好きなもの、こだわりのあるものは、他人よりもはるかに高解像に見える。あなたの「好き」「あなたの歪み」は、他人にとって、今ある世界を新しい意味で楽しむことができるようになるための源泉なのである。
自分の中の「好き」や「歪み」を育てていくには、まずはアウトプットを目的とせずに、ただひたすら「没頭」することである。自分にしか見えない色や風景を、他人の評価軸や基準を取り込まず、育てていくことである。