『United Breaks Guitars』の教訓
シンガーソングライター、デイブ・キャロルは、ギターをユナイテッド航空に預けてあった。しかし到着後、ギターは壊れていた。
デイブは修理代を取り戻すために、何ヶ月にもわたってユナイテッド航空に電話をかけたり、メールを送ったが、一切補償に応じないという通告を受けた。
そこで、デイブは『ギターを壊すユナイテッド航空』という自作の曲をユーチューブに投稿した。この動画はわずか4日で再生回数100万回に達した。これに対し、ユナイテッド航空は、何の対応もしなかった。
一方で、この件に対し、ギターの製造元であるテイラー・ギターは、社長自らがユーチューブに登場し、ミュージシャン向けにギターの梱包法などをアドバイスした。この動画は50万人超もの人々に視聴された。この件以降、同社のギター製造本数は記録的な水準に達している。
スピードと機敏さが大切
メディア広告で消費者の注目を引き、思うままに誘導できた時代には、大企業のペースで世の中を動かすことができた。しかし、最近では、消費者は自分たちでペースを決めている。
「リアルタイム性」を特徴とする最近の事業環境では、世論はもはやマスメディアに左右されない。今日、重要なことは、企業規模やメディアを動かす力ではなく、スピードと機敏さである。
大企業はスピードの重要性を認識し、いざという時には猛然と動く事の重要性を肝に銘じながら、ビジネスに臨まねばならない。そのためには、以下の点に注意する。
・チャンスが逃げないうちに行動する
・その時々の状況に応じて動く
・部下に裁量を与える
・顧客のペースに合わせた対応をする
従業員が多いほど、リアルタイムでのコミュニケーションは難しくなる。指揮命令型の組織では、権限のないまま行動する訳にはいかず、自分から動こうとする人は押さえつけられてしまう。リアルタイムの発想を行き渡らせるには、指揮命令を当然とする意識を打ち破り、従業員に進んで行動するように促す必要がある。
リアルタイム・コミュニケーションを奨励せよ
大まかに調べたところでは、大企業の25%は従業員にソーシャルメディアの利用を禁じている。企業がリアルタイム・コミュニケーションを禁止する理由は以下の通り。
・何か都合の悪いことを書いて会社の評判を落とす可能性がある
・ツイッターでは、重要なビジネスに結びつくはずがない
・ソーシャルメディアに関わる時間を取られすぎる
この新しい時代には、現実を受け入れ、つながりを促し、持続的な成長へと結びつくコミュニケーション体制を取り入れた方が、企業が繁栄する可能性は高い。組織は、リアルタイム・コミュニケーションの手引きを設け、研修を行い、話し合いをすることが求められる。