現場からニュースを掘り起こす
月に200本もの記事がメディアに出たこともあるプランタン銀座では、会社として訴求したいテーマとは別に、広報が現場から「人・モノ・コト」のネタを発掘し、各メディアに売り込んでいた。自社の情報を発掘する、あるいはニュースにする際には、現場を知ることが最も大切である。そのためのポイントは2つ。
①自分の会社を熟知する
広報をするなら、まずは会社や売り込む案件にのめり込み、熟知すること。その1つの術として、今までメディアに掲載された記事やテレビ番組のVTRがあれば、すべてに目を通すことである。そこから自社の強みを把握し、その記事、番組内容は何をポイントにしていたかを探る。メディア掲載がなければ、会社概要、ホームページ、社員からヒアリングすることからスタートである。
広報の感覚は、恋愛と同じだと言える。好みの人がいたらもっと知りたいと思い、知れば知るほど良い面も悪い面もわかってきて、多面的にその人を理解することができる。
②メディアの「なぜ?」を活用する
メディアの「なぜ」とは、「この商品はどれくらい売れているのか?」「なぜ人気があるのか?」「他社の商品と比べての違いは?」「どんな人が利用するのか?」など、メディアからの質問事項のことである。このような、人気の要因を具体化してくれる質問項目すべてが「ニュースの視点」になる。売り込みたい「人・モノ・コト」をストレートに見るだけではなく、様々な角度から掘り下げて、付加価値をたくさんつけて魅力ある形にすることで、新たな広報の視点が見つかる。
メディアに取り上げられる「3の法則」
メディアには「1社の情報だけでは単に企業PRになるので避けたい」「市場や世間の動向を客観的に報じたい」という考えがある。つまり、自社の情報1つだけではなく、関連性のあるネタを3つ合わせることができれば、ニュースとして取り上げられる確率はグンと上がる。
常に「3の法則」を頭に置きながら、日常生活で入手したものも入れて情報を組み立てる。そして、3の法則にプラスして、「なぜ今?」の理由付けが大きい。広報担当者が社会現象の捉え方や組み立て方のセンスを磨くことで、ニュースにしてもらえるチャンスが生まれる。様々な角度から事象を捉え、分析し、箇条書きにしていくことでニュースの視点やストーリーの組み立て方が見えてくる。
街中の看板や車内吊り広告、新聞・テレビ・WEBの情報、人とのコミュニケーションなど、日常生活の中にも自分が持っている情報との連動性を見出せることがある。直接の関連性はなくておも、アレンジ可能な情報はメモしていく。
ナンバーワンとオンリーワンを発信する
石井社長は「プランタン銀座の中で、いくつものナンバーワン・オンリーワンを作りましょう」と全社員に言っていた。老舗百貨店にはない・できない「ナンバーワン」「オンリーワン」の売上や商品、サービスを作っていく。それによって特定のジャンルで勝ち組になり、他の競合店との差別化を図っていく。この方針の下に、売上高や品揃え、誘客人数など、様々な指標で一番を目指す、独創的な売場づくりが進められた。
アンケート調査でメディアが好むデータを発信する
プランタン銀座の広報瀬略に一役買ったのが「アンケート調査」だった。「メディアというのは、お客様の消費動向には大変興味があり、さらに数字という裏付けがあると信憑性が高まるので取材がしやすい」とテレビ局の方に教えてもらった。「バレンタインデー 女性の意識調査」以降、「水着」「クリスマス動向」など、OLに欠かせないテーマを中心にアンケート調査を行った。
このアンケート手法は、どの企業でも活用できるものである。自社に関連するアンケートの切り口を探せばたくさんある。アンケートに対する回答も想像しながら、話題になりそうな要素を盛り込んで、実際に取材してくれるメディアの視点も入れながら、質問項目を考える。
幅広く情報収集を行い、問い合わせされる人になる
「話題が豊富な人」「話していて楽しい人」と思ってもらえるようにする。「旬な話題」で相手の知的好奇心を満たすことができたら、会話も広がるし、人から尋ねられることも増える。
人からの問い合わせに応対できるのは、ちょっとした情報源を持っていればこそ。そういう意味では「情報の質と量」につながる社外の人脈は重要である。
情報があるところには、メディアの方からの問い合わせも入る。快く情報を教えてくれそうな人のところに、問い合わせがくる。そのためには、持っている情報の「質・量」が勝負である。情報は、自分の仕事の範囲だけでなく、広く浅くでも良いので、豊富に持ち合わせる方がよい。