ALLIANCE 人と企業が信頼で結ばれる新しい雇用

発刊
2015年7月10日
ページ数
208ページ
読了目安
241分
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終身雇用が崩壊した現在の新しい雇用モデルのあり方
終身雇用が崩壊した今、会社と社員の雇用関係には新しいモデルが必要である。シリコンバレーで実践されている、新しい雇用形態のあり方を、リンクトイン創業者の著者が紹介している一冊。

新しい雇用モデルが必要

今日、真剣に雇用を保証しようなどという企業はほとんど存在しない。その上、どれだけの期間あなたに勤めて欲しいのか、という点については曖昧な言い方しかしない。会社の本音は「優れた」社員だけに残って欲しいのだ。この「曖昧さ」こそが雇用主と社員の信頼関係を壊している。このような企業は社員側に忠誠を求めながら、会社側は何も約束しないという。これに対して、雇われる側の多くは、賭ける先を分散してリスクヘッジする事で応えてきた。転職のチャンスがあればすぐに飛びつく。

上司であるマネージャーは、両者の間で板挟みになってしまっている。なんとかして大事なプロジェクトの完了まで離職者を出さない事ばかり心配している。部下の将来を見据えて、いかに成長させるかを考えるマネジャーなどいない。雇用主の会社、上司となるマネジャー、雇用される社員。三者とも新たな関係構築の枠組みを必要としている。

企業は組織の至るところに起業家タイプの人材が必要だ。アライアンスの原則は、すべての雇用関係は本質的に双方向で、社員の得るメリットと会社の得るメリットを互いに明確にするという事である。

 

アライアンス

企業と社員がきちんとコミットし合えるような、新しいタイプの信頼関係を生み出す事は可能である。雇用を「取引」ではなく「アライアンス」として捉える。自立したプレーヤー同士が互いにメリットを得ようと、期間を明確に定めて結ぶ提携関係である。マネージャーと社員がお互いを信頼して相手に時間と労力を投入し、結果的に強いビジネスと優れたキャリアを手に入れる。アライアンスの関係は、雇用主と社員が「どのような価値を相手にもたらすか」に基づいてつくられる。

 

仕事の内容と期間を決める

長期的関係のために定期的に仕事を変える。これが「コミットメント期間」の枠組みの真髄である。これは「ミッションを期限内に成し遂げる事に専念し、そこに個人の信用をかけている」という考え方だ。働き方を「いくつものコミットメント期間の積み重ね」という形に位置づけ直すと、起業家タイプの人材を惹き付け、自社で働き続けようと思ってもらいやすくなる。魅力的なコミットメント期間を設計できれば「個人としてのブランド力」を高める道筋を示す事になる。

 

コミットメント期間の3つのタイプ

コミットメント期間の具体的な内容は人や企業、部署、業界、職位に応じて大きく異なってくる。

①ローテーション型
社員ごとにパーソナライズされておらず、互換性が高い。体系化された有期の制度。新卒や経験の浅い社員の相性を見極める機会を与えたり、ブルーカラーの現在の職務と社員の相性を高める目的のものがある。

②変革型
期間を一定に定める事にはあまり重きを置かず、特定のミッションを完遂する事に重点が置かれる。内容は、上司であるマネジャーと社員本人が1対1で話し合って決める。変革型コミットメント期間の核心は、その社員が自分のキャリアと会社の両方を大きく変革させるような機会を得るという約束である。変革型コミットメント期間が最終段階に入った社員を、引き続き会社に留めおきたいという場合、早めに次のコミットメント期間について話し合いを始めるといい。標準的な期間は2〜5年。

③基盤型
会社と社員の方向性が深く整合している点が特徴。この会社が自分の最後の職場だと考え、会社もその社員に現役引退までいて欲しいと願うなら、その人は基盤型コミットメント期間にいる。基盤型には高レベルの信頼と方向性の一致が必要なため、社員が最初からこのコミットメント期間で会社に入る事は極めて稀である。

それぞれのコミットメント期間に優劣はなく、社員の集団ごとに使い分けながら3つのタイプをすべて利用する。社員の大半を基盤型にしようとしてはいけない。多くのスター社員は上を目指す野心があるからこそ、基盤型コミットメント期間を拒む。

 

社員と会社の目標、価値観を揃える

今は、企業の目標が社員にとって唯一絶対の目標になるなど、期待できない時代だ。目指すべきは、会社と個人の目標をあらゆる面で完璧に一致させる事ではない。ある期間、一定の条件のもとでのみ、自然な形で両者を揃える「整合性」を目指すこと。整合性を目指すには、「企業の目標と価値観」と「社員のキャリア目標と価値観」との間にある共通点を、マネジャーが意識的に探して明示しなければならない。

会社と社員の価値観と将来の展望の整合性を取るのは難しい。だが、コミットメント期間を導入すれば、整合性が必要となるのは特定の任務が終了するまでの限られた期間となり、整合性にまつわる諸問題を解決可能なレベルにまで限定できる。

 

整合性を構築するための3つのステップ

①会社の核となるミッションと価値観を打ち立て、それを広める
②社員の大切にしている価値観とありたい姿を知る
③社員、上司、会社間の整合性を目指し協力する

参考文献・紹介書籍