右肩下がりの時代に膨れ続ける国家予算
国会関連の会議に出席すると、国会議員たちは「予算をどれだけ増やすか?」という話し合いばかり。国会には「予算委員会」があるが、予算の話すらしない。参議院には決算委員会というものがあるが、ここでも決算についてほとんど議論しない。費用対効果を高めるという感覚が、国会には欠如している。霞ヶ関では、1億円を使い切るのが優秀な人材。8,000万円に削減するという発送はない。そんなことをすると、次年度の予算が8,000万円に減らされてしまうからである。予算1つ取っても、完全な既得権になっている。
2019年度の国の一般会計予算は、約101兆円。7年連続で過去最高を更新している。人口も経済規模も縮小しようとしている時代にあって、国家予算は膨れ続けている。日本は戦後、ずっと右肩上がりで成長してきた。それに伴い税収も増え続けてきた。全ての仕組みが右肩上がりを前提にしている。少子化に伴って人口減少が始まった日本は右肩下がりの時代に突入したが、この現状に国は対応できていない。
日本はつぶれる
2019年度の税収と税外収入の合計は68.8兆円。それに対して基礎的財政終始対象経費が77.9兆円。プライマリーバランスは9.1兆円のマイナスである。これを黒字にするためには、税収を増やし、歳出を削減しなければならない。それにもかかわらず、一般会計予算が7年連続で過去最高を更新しているということは、赤字が続くこの国で、使う経費だけは年々膨れ上がっているということである。税収で足りない分は、新たな借金で補填し続けているため、現在、国と地方の債務残高は1100兆円を超えている。
債務残高対GDP比を欧米各国と比較すると、日本はGDP比約2.4倍と突出している。EUの中で財政的に問題児と呼ばれるイタリアでさえ1.3倍。米国で約1.0倍。フランス、カナダ、英国は0.9倍。ドイツでは0.6倍の水準になっている。欧米各国が財政規律に関するルールを導入したにもかかわらず、日本はバブル崩壊のショックから立ち直ることができず、失われた30年の間に借金を重ね続けている。
日本の財政が悪化している要因の1つが、少子高齢化が進み、社会保障費の増加に歯止めがかからないことにある。65歳以上の人口比率は1990年には12%だったが、2016年には27%となり、2025年には30%、2065年には39%になると予測されている。
高齢化に伴い、年金、医療、介護といった社会保障の給付費は年々、上昇している。2017年の社会保障給付費120.4兆円に対し、保険料収入は68.6兆円しかない。不足分は国庫や地方税等で賄っているが、国庫においては税収だけでは賄えず、新たな借金で補填しているのが現状である。
日本の財政破綻に備えて何を準備すべきか
財政破綻するといっても、日本人全員が生きていけなくなるわけではない。しかし、今までの生活がそのまま続くというわけにはいかない。財政破綻した夕張市のように国に管理されることで、図書館、美術館、屋内プール、球場、公衆トイレ、子育て支援センター等は閉鎖され、医者を雇えないから総合病院は診療所に変わる。インフラはどんどん小さくなっていく。
過去に財政破綻した国を教訓にすると、このまま日本政府が多額の債務を放置すれば、①金利の上昇、②大幅な円安、③物価の上昇が進む。円安になれば、輸入品がものすごく高くなる。エネルギーや食糧など物価も上がる。けれども、個人の収入は増えず、消費は冷え込む。
この時に会社は成りたつか。円安になれば、仕入れコストがかさんで輸入産業の会社は大打撃を被る。今から輸入品から国産品に切り替えていくかを考えねばならない。逆に輸出は有利になる。自社の商品の輸出の割合を増やしていくことを考えるべきである。財政破綻に備えた計画を立てることが必要である。