クラッシャー上司とは
昨今、人事部を中心に「クラッシャー上司」という言葉が使われるようになってきている。クラッシャー上司とは、次の一文で言い表すことができる。
『部下を精神的に潰しながら、どんどん出世していく人』
クラッシャー上司は、基本的に能力があって、仕事ができる。しかし、部下をときには奴隷のように扱い、失敗するとネチネチ責め続け、結果的に潰していく。部下は心を病んで脱落していくが、クラッシャー上司自身の業績は社内でもトップクラスであることがほとんどだ。だから、会社が問題性に気づいても、その者を処分することができない。次々と部下を潰しながら、どんどん出世してしまう。
一部上場企業の役員のうち数人は「クラッシャー上司」がいる。中小のワンマン企業の場合は、経営者自身がクラッシャーであることも少なくない。
クラッシャー上司の特徴
クラッシャー上司は、自分の部下を潰して出世していく。そういう働き方、生き方に疑問を持たないどころか、自分のやっていることは善であるという確信すら抱いている。そして、潰れていく部下に対する罪悪感がない。精神的に参っている相手の気持ちがわからない。他人に共感することができない。
「自分は善であるという確信」「他人への共感性の欠如」の2つのポイントは、どんなクラッシャー上司にも見て取れる特徴である。それらの程度には濃淡があり、部下の潰し方も同じではない。
クラッシャー上司の事例
①つきっきりの指導悪意はない。やる気のある優秀な部下の成長を期待して、仕事を任せ、その支援にも熱心。頑張る部下の残業に自分も付き合い、叱咤激励する。しかし、そうされる側の部下が、どれだけ辛い思いでいるかの共感性が低い。つきっきりの支援で、食事の自由も、トイレに行く自由までも奪ってしまい、食欲の落ちた部下に「無理してでも食わないと持たないぞ」と言う。成功体験があるから、メンタル不全で自宅療養となった部下に対して「やっぱり最近の若いのはダメだな」と言う。
②表情ひとつ変えない雪隠づめ
部下に対し、皆の前で「指導」する。声を荒げず、同じトーンで、矢継ぎ早に、次から次への言葉を繰り出す。表情ひとつ変えず、30分でも1時間でも質問と要求を投げ続ける。
上司として決定的に欠けるのが、部下の頑張りや成果を認め、評価して褒める力。マイナス部分の指摘ばかりで、他者のプラス部分を見ない。
③薄っぺらなクラッシャー
わかって部下を攻撃する。仕事の要領はよくて、立ち回りがうまい。だから、出世し、手にした権力で薄っぺらな悪事を働く。自分自身が賞賛され、部下が自分を全面的に崇拝、自分が部下を完全に支配できると思えること、ちっぽけな全能感に満たされたいがために仕事をしている。取り巻きや派閥を形成し、その閉鎖された人間関係の中で、裸の王様的に振る舞い、賞賛を望んで矮小な全能感を覚えて恍惚とする。
クラッシャー対策
①クラッシャー上司を理解する彼らが常軌を逸した行動をとる理由は「鈍感さ」と「憂さ晴らし」である。不安定な人間が、自分にとって気に食わないことが起きると幼児退行してハラスメントを行う。そんなしょうもない人間だと「上から目線」で見る。
②適当に流し、自分の仕事に信念を持つ
「ヒラメ社員が回遊してきたな」くらいに受け流す。「アドバイスありがとうございます」と形式的に礼でも言っておく。そして、自分はきちんとやっているから、何と言われようと、堂々と仕事をこなしていればいい」という信念を持つ。
③被害体験を他の人と共有する
被害者としての感情をシェアして、やられた者同士が共感し合える関係を作る。