超長寿化時代の市場地図 多様化するシニアが変えるビジネスの常識

発刊
2024年12月20日
ページ数
288ページ
読了目安
370分
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長寿社会のマーケティング
人生100年時代とも言われ、世界中で高齢人口が増えている。今後、若年人口を高齢人口が上回るという人口動態を踏まえ、長寿社会の到来とともに、出現する巨大な市場をどのように捉えればいいのかを解説している一冊。

従来のような「シニア」「高齢者」という括りや、年齢ではなく、人生を「ステージ」に分けて、多様化する個々人のニーズを捉えるべきであるとし、そのためのフレームワークが提供されています。
特に高齢者が増えていく日本において、これからのマーケティングを考える上での視座を与えてくれます。

長寿経済の到来

「超長寿化」によって、世界のほぼ全域で、高齢者人口が若年人口を上回るようになる。この人口動態の変化は、新たな市場機会だ。長寿化は新たなカスタマーを生み、新たな働き手を創り出し、新しい起業家を世に送り出す。新たに生まれる「長寿経済」の市場規模は、全世界で22兆ドル超と予測されている。

 

人口構成が激変する中、「老い」や「加齢」に対する固定観念や思い込み、既存の高齢者ビジネスのやり方では通用しなくなる。65歳以上を一律に「高齢者」カテゴリーに入れる手法はもう使えない。「教育・仕事・引退」という近代型の3ステージの人生モデルは、すでに時代遅れになっている。同じ年齢層でも、ニーズや欲求、年齢の重ね方は様々に異なる。今後ますます拡大する65歳以上の層を理解するには、「年齢」ではなく、個々の人生の「ステージ」に着目することが大切である。

 

「引退」に変わるステージ

65歳で定年退職して引退、というのは時代遅れになっている。従来の「引退」のステージに代わるのは、以下のようなステージだ。

  • 方向転換:キャリア優先の人生から新たな目的へと軸を移す
  • 再発進:人生の新たな章を始めるための活動を行う(学習など)
  • 移行:ある属性から別のものへと自分のアイデンティティを移行する
  • 人生の優先順位の再設定:新たな優先順位と目標に向けて、価値観を再構築する

これまで引退後の生活だった時間の多くは「学習」に使われるようになる。学習は人生の冒頭で済ませるものではなくなり、人生のあらゆる時期を通じて、より有意義な学びが得られるようになるだろう。個人としても長い人生の中で、キャリアの移行を計画し、それに合わせたスキルアップを行う必要性がより高まるだろうし、企業としても対応が必要になる。複数のライフステージをまたぐサポートや、ステージ移行の支援に関わる新ビジネスが続々と出てくるだろう。

 

5四半世紀ライフステージ

様々な年齢で経験する、多様なステージを捉えるための新たな枠組みは「人生の5Q」だ。長寿経済という巨大なマーケットを理解してビジネスを行う上では、これまでにない新たな観点が必要である。

 

①Q1:スタート期(0〜30歳)

従来の年齢で言えば誕生から30歳に相当する。

 

②Q2:グロース期(25〜55歳)

個人が仕事に励み、キャリアの探求、移行、キャリアの中断、継続学習をする時期。Q2はスキル向上や継続学習をし、長く生きて働くことを意識してQ3への準備をする時期だと言える。子育てや親の介護にあたる時期でもあり、両方やる人も多い。

 

③Q3:ルネッサンス期(55〜85歳)

再度の方向転換、再び活力を取り戻すための回復、再生や復活、再評価など、あらゆることに再度向き合う「再〜」の時期である。継続学習と探索に励みながら、人生のポートフォリオを組み直す時期だ。Q3では、新たなキャリアに踏み出したり、改めて知識やスキルを得るために学校に入り直すことも多い。新たな家族を持つ人、子供や親のケアを継続する人、孫の世話を手伝う人も出てくるだろう。この期になると、仕事は最優先というより、優先事項の1つで、他に大切なことが出てくる場合も多い。

 

④Q4:レガシー期(75〜100歳)

自分の健康寿命を鑑みて、どのステージでどんな活動をするか再検討することになる。Q4では、医療や介護のニーズの変化を意識せざるを得ないが、当人のレガシーとして残るような新たなチャンスにも満ちている。

 

⑤Q5:エクストラ期(100歳以上)

健康寿命が続けば訪れるボーナスタイムであり、それが難しい場合もあるだろう。長寿化によって追加されたこの年月をどう使えるかは、これまでの自分への投資(健康寿命の維持と資金面の両方)によるところが大きい。

 

このパラダイムを使えば、どの四半期でも、複数のステージを経験していることがわかる。この視点を踏まえると、自社の商品・サービスの購入者とエンドユーザーは違う場合がある。それならば、様々な年齢層や多世代に受けるような商品・サービスを生み出す必要がある。

 

年齢だけでなくステージを理解する

長寿ビジネスのカスタマーへのマーケティングを成功させる秘訣は、まずステージについて理解することだ。そして、そのステージを人口統計上の属性と適切に組み合わせて考える。その上で、自社が参入したい事業ドメインとサブドメインを明確にすればよい。

 

まず1つのセグメント、1つのステージについて検討するところから始めれば、戦略が明確になり、完成形も見えやすい。視点を絞れば、戦略立案がうまくいく。この時に意識すべきなのが、一見、カスタマーが明確でシンプルに思えても、実態は複雑なケースが多いことである。購入者と利用者が異なる場合もある。