一歩踏み出そう
世界を動かしているのは、やはり男である。男女を問わずすべての人にかかわる決定が下される時、女性の声は男性よりずっと少ない。世界に195ある独立国のうち、女性が元首を務める国は17カ国、女性議員の割合は20%程度。フォーチュン500社で女性がCEOを務める企業はわずか4%だ。さらに、女性の賃金は平均して男性より16%低い。
女性は職場で様々な障害物に直面している。男尊女卑の思想、性差別、セクハラ。社会に築かれた自分の外の障壁に加えて、女性は自分の中の障壁にも行く手を阻まれている。女性は大望を掲げようとしない。自分に対する期待を低めに設定し、相変わらず家事や育児の大半を引き受け、仕事上の目標を妥協する。男性の同僚に比べると、上の地位を目指す女性は少ない。女性が力を手にするためには、この内なる障壁を打破する事が欠かせない。
内なる障壁は軽視されがちで、話題に上る事もめったにないが、この障壁は自分の手で壊せるため、もっと注意を払うべきだ。
恐れのない社会をつくろう
出世や昇進は往々にして、リスクテークや自己主張に左右される。だが、これらは女の子がやらないように言われ続けてきた事だ。男には仕事に対して野心を持つ事が期待されるが、女の場合には選択肢の1つにすぎず、それどころか好ましくないとされる事も多い。「彼女は野心家だ」というのは、褒め言葉ではない。女性の社会的成功は犠牲を伴うのである。
子供時代に刷り込まれた男女のステレオタイプは、生活の様々な場面で強化され、ついには自己実現的な予言と化す。ほとんどの組織でトップの座に就くのは男だとなれば、女にはそれは期待されなくなるし、女がそれを目指さない理由の1つになる。このステレオタイプは、ほとんどの女性が働かざるを得ない現状では、とりわけなげかわしい。米国では、子供を持つ女性の約41%が一家の主な稼ぎ手で、世帯収入の大半を稼いでいる。
女性が直面する障害物の頂点に君臨するのが「恐れ」である。皆に嫌われる恐れ、失敗する恐れ、悪い母親、悪い妻になる恐れである。こうした恐れがなくなれば、女性は仕事上の成功と家庭生活の充実をためらわずに追求できるだろう。
もっと多くの男性が職場と家庭の両方で女性を支え、解決に向けたパートナーとなるようにしなければならない。
手を挙げ続けよう
女性は自分の仕事の成果を実際より低く見積もる傾向がある。自信が持てない時に使う技の1つは、とりあえず自信があるふりをすること。少なくともチャンスを掴むために必要である。
自分に厳しいのは女性だけではない。同僚やメディアも、女性が成功すると外部要因のおかげだと言いたがる。より平等な世界を真剣に目指すなら、女性が手を挙げ続けない傾向がある事をまず認識しなければならない。そして、女性を励まし、背中を押すとともに、女性自身も手を挙げ続ける事を学ぶ必要がある。
嫌われないように振る舞う
ハナ・ライリー・ボウルズ教授によれば、女性は2つの事を上手に組み合わせれば、望みの結果を得る可能性を高められるという。
①世間の期待にふさわしい女性らしく、他人に気遣いを示すこと
②正当な理由を説明すること
交渉の席に着く時には「自分の事を考え全員のために行動せよ」が良い。よく女性にするアドバイスは、交渉を始める前に「口上」を言ってはどうかというもの。例えば「女性の給与水準は一般的に男性より低いとされています。そのためにも、これから交渉したいと思うのです」のように。
そうすれば、自分一人の利益ではなく集団の利益と結び付ける事ができ、すべての女性のために交渉する事になる。指示代名詞は重要である。できるだけ「私たち」を使うといい。