ノヴァセン 〈超知能〉が地球を更新する

発刊
2020年4月30日
ページ数
181ページ
読了目安
231分
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推薦者

未来の地球はどうなるのか
「ガイア理論」の提唱者として知られる著者が、人類とAIによって未来がどうなるかを予測している一冊。これまでの地球環境が生命によって作られてきたというガイア理論を展開しながら、地球の最大の脅威は、太陽の熱であるとし、地球温暖化へのプロセスに警鐘を鳴らしています。

ガイア仮説:地球は生命によって居住環境を作ってきた

コスモス(宇宙)について知る能力を持つ生物を育むことができたのは、地球だけだと確信している。だが同時に、その存在が危機に瀕している。地球環境は居住可能性を維持するために大規模な適応を行ってきた。太陽からの熱をコントロールしてきたのは、生命だ。もし地球から生命を一掃したら、あまりにも地球が熱くなりすぎて、もはや居住は不可能になる。

真の脅威は、太陽の放射する熱が、ゆっくりと増えていくことだ。これまでの35億年で太陽の熱の放射量は20%増えた。これは地球の表面の温度を50度まで上げるのに相当する量で、そうなれば温室効果は上昇の一途を辿り、地球を不毛の地へと変えていたはずだ。だが地球の表面全体の平均気温は現在の15度から上下約5度の変動しかなかった。

生命はその始まりから周りの環境に働きかけ、それを改変してきた。地球の平均気温は47度に上昇すれば、比較的速やかに金星のような状態へと向かう不可逆なフェーズに突入する。47度というのは、地球のような海に覆われた惑星に暮らすいかなる生命にとっても限界の温度となる。一度この気温を超えれば、いかなる知性も存続不可能な環境に直面するだろう。

ガイアのシステムは、1万8000年前に到達した180ppmという二酸化炭素をそのまま低い水準で維持してきた。現在の濃度は400ppmで、さらに上昇を続けている。この上昇の約半分は化石燃料の燃焼が原因だ。忘れてはいけないのは、生命がいなければ、大気中の二酸化炭素は今よりももっと多かったことだ。生命は円石藻類などの例のように二酸化炭素を石灰岩盤のような生体炭素として閉じ込めてきた。

 

人類からAIへ

人間がコスモスの唯一の理解者だった時代は、急速に終わろうとしている。未来のコスモスの理解者は人間ではなく、人間が構築した人工知能(AI)システムによって自らを設計していく機械(サイボーグ)になる。これらはすぐに人間よりも何千倍、何百万倍も知的な存在となるだろう。

 

この惑星の歴史上、過去に2つの決定的な出来事があった。1つ目は34億年前に光合成を行うバクテリアが出現したことだ。光合成は太陽光を利便性の高いエネルギーに変換する。2つ目は1712年にトーマス・ニューコメンがつくった効率的な蒸気機関によって、石炭に閉じ込められた太陽光を動力に直接変換したことだ。そして、私たちはいまや第3の局面へと入りつつあり、そこで私たちとそれを引き継ぐサイボーグたちは太陽光を情報へと直接変換する。2020年になった今、その情報を解き放ってノヴァセンを始める準備はできている。

 

ノヴァセンに入ったことを知るのは、そこに現れた生命体が自らを複製し、しかも複製上のエラーを意図的選択によって修復できるようになった時だ。こうしてノヴァセンの生命は、周りの環境を自らのニーズに合うように化学的、身体的に修正できるようになるだろう。但し、その環境の重要な部分を占めるのは、現在と同じく生命だ。

ガイア仮説が正しく、地球が実際に自己調整システムだとすれば、人間という種がこのまま生き残れるかどうかは、サイボーグがガイアを受け入れるかどうかにかかっている。サイボーグは自分たちのためにも、地球を冷涼に保つという人間のプロジェクトに加わらなければならないだろう。それに、これを達成するために使えるメカニズムは、有機的生命だということも理解するだろう。人間と機械との戦争が起こったり、単に人間がマシンによって滅ぼされるといったことが起こることはまずないと信じる理由である。2つの種がどのようにやり取りするのかはほとんど想像不可能だ。サイボーグたちは人間を、ちょうど人間が植物を眺めるように見ることになるだろう。つまり、認知も行動も極端に遅いプロセスに閉じ込められた存在だ。