営業戦略大全 世界レベルの利益体質をつくる科学的ノウハウ

発刊
2025年2月18日
ページ数
256ページ
読了目安
321分
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推薦者

P&Gで使われている営業手法
P&Gの営業本部長を務めた著者が、P&Gで成果を上げた営業手法を紹介している一冊。
顧客やバイヤーとの営業話法や、顧客の心理、交渉術から営業の仕組み作りまで、P&Gにおける営業ノウハウが詰め込まれています。

メーカーの立場における小売店のバイヤー向けの営業事例が多く紹介されており、同業種において営業に携わる人にとって参考になります。

P&Gで活用されている営業話法

コミュニケーション力は、営業の最重要スキルと言っていい。商談話法の腕を磨くことは、顧客企業とのリレーションを円滑にし、お互いの理解を深め、信頼関係の構築に大きく役立つ。

P&Gが長きにわたって営業で活用している話法が「コンセプチュアル・セリング」である。これは「説得的販売話法」というシンプルな5ステップの話法を基本プロセスとして、診断的質問の「SPIN話法」を組み合わせて活用する。

 

「コンセプチュアル・セリング」の重要な成功要因は次の6つである。

①顧客理解

営業活動の開始前に、顧客のビジネス背景、競合情報、過去の購買履歴などを調査し、顧客の置かれているビジネス状況、課題などを理解する。また、買物客の調査により、小売りのバイヤーも気づいていない得意先の課題も適宜、把握する。

 

②バイヤーの心の窓

営業が一方的に話すのではなく、顧客のビジネスやバイヤー個人に対する誠実な興味と理解を示す。そうすることで、良い印象と安心感を植え付け、バイヤーの心の窓を開け、こちらの言い分を聞いてもらえる環境を整える。

 

③診断的質問

顧客の現状を理解し、潜在的なニーズや課題、解決につながる示唆を引き出したり、バイヤーの認識と自分の理解が一致しているかを確認するための質問を行う。

 

④顧客価値

事前に収集した情報とバイヤーからのフィードバックをもとに、アイデアを提示する。この際、顧客企業やバイヤーにとって、この提案がどんな価値があるのか、ビジネスに与える具体的なメリットを明確に伝達することが重要となる。

 

⑤クロージング

アイデアの提案後、バイヤーからの質問に明確に答え、不安や疑問を解消する。その上で、提案の成約を目指す。

 

⑥接触頻度

契約後もバイヤーとコンタクトを絶やすことなく定期的なフォローアップを行い、提供した製品やサービスがバイヤーの期待を満たしているかを確認する。

 

「コンセプチュアル・セリング」は、単発的に製品をただ売るのではなく、顧客が直面する問題を解決するパートナーとしての役割を演ずるための話法である。この手法を通じて、長期的な関係構築を目指す。

 

説得的販売話法の5ステップ

①状況要約

商談の目的、背景を伝え、提案前にバイヤーの関心を惹きつけ、心の窓を開ける。事前に調査した、顧客のビジネス背景、マーケット状況、競合環境などの情報から、顧客の方針や課題、ニーズを把握し、それに基づいた質問を行う。

 

②アイデアの提案

得意先のニーズ・課題に焦点を当てた提案をする。状況要約でわかったビジネスの課題を解決するアイデアを提案する。

 

③実現方法の説明

プランの実現可能性に対する信用を高める。提案を実現するための具体的なプロセスを説明する。提案内容がどのように機能し、問題解決につながるかを明確にすることが重要である。

 

④利点の強調

バイヤーの疑問・不安のレベルを下げ、商談成立の確率を上げる。提案の利点を強調し、顧客にとっての具体的な利益を示さなければならない。必要に応じてリスクも説明し、どのように対処するかを示すことで、バイヤーの懸念を取り除く。

 

⑤ネクストステップの提示

商品・サービス導入に向けて事案を前に進める。次のステップを明確にし、商談を前進させるための具体的なアクションプランを提示する。バイヤーが好印象だと感じた段階で、2、3ステップくらいを合意して終わる。

 

SPIN話法の4つの質問

「SPIN話法」を使いこなすことで、バイヤーのニーズをより深く理解し、効果的な提案につなげることができる。これは4つの質問からなる。

 

①状況質問(Situation)

顧客の現状や背景を理解するための質問で、顧客の業務環境や課題の全体像を把握する。簡単にYES/NOで答えられないオープンエンドの質問を使用し、詳細な情報を引き出す。

 

②問題質問(Problem)

顧客が抱える具体的な問題や課題を明らかにする質問で、顧客が認識している問題点や改善したい点を特定する。具体的な数字や事例を引き出しながら、バイヤーの抱えている問題や障害、不満をヒアリングする質問を心がける。また、バイヤーが気づいていない潜在的な問題にも焦点を当てる。

 

③示唆質問(Implication)

問題がもたらす影響や結果を探る質問で、問題の重要性と解決の緊急性をバイヤーに認識してもらう。バイヤーのお客様や現場などのステークホルダーに対し、どんな影響を及ぼしうるか、示唆する質問を有効に活用する。

 

④解決質問(Need-payoff)

解決策がもたらす利益や価値を顧客に考えてもらう質問で、バイヤー自身に解決策の意義と価値を認識させ、購買意欲を高めてもらう。数値化できる利益に焦点を当てたり、バイヤーのステークホルダーに対する価値を言及し、具体的なメリットをバイヤーに想像してもらうような質問をする。