病気の根本的な原因を見つけて対処する
現在、健康と病気に対する考え方の転換を迫る科学革命が起こっている。この革命は、機能性医学と呼ばれており、身体を生物学的仕組みをコントロールしている、複雑に相互結合されたネットワークとシステムからなる網のようなものとして捉える。
機能不全と病気は、このシステムのバランスが崩れることから生じる。心臓病からがん、認知症、糖尿病などの病気は、加齢に伴って起こる同じ生物学的変化が形を変えて現れたものであり、遺伝子に影響を与える生活習慣と環境から大きな影響を受けているため、そうした生活習慣と環境を改善すれば修正できる。
身体は、相互に動的に結びつきネットワークとして働く7つのシステムからなり、これらはあらゆる病気の根底で働いている。
①消化器系とマイクロバイオーム:栄養素を消化/吸収する
腸は食べ物をアミノ酸、糖、脂質、食物繊維、ビタミン、ミネラル、植物性栄養素などの構成要素に分解・消化して、生命を育むこれらの化合物を吸収すると同時に、大部分の病気の原因となる有害な微生物や部分的に消化された食べかすを防いでいる。
腸の内壁の損傷は、炎症を引き起こす最も重要な要因の1つで、ほぼすべての老化の典型的特徴に悪影響を及ぼす。健康な腸を保鍵は、食物繊維とプロバイオティクス食品を多く含み、色とりどりの植物性食品から得られるファイトケミカルを豊富に含む自然食品に基づく食事法にある。
②免疫系と炎症:防御と修復のシステム
現代人が遭遇する多くの障害は、炎症という最終的な共通経路への進展につながる。そうした障害には、有害物質、アレルゲン、病原菌、炎症性腸内細菌、不適切な食生活、ストレスなどが含まれる。炎症は、過剰なものだけでなく、不足しているものによっても引き起こされる。つまり、抗炎症作用のある、植物性栄養素豊かな食品、最適なレベルのビタミンとミネラル、運動、最適な睡眠、瞑想、人とのつながりといったものが必要だ。
健康的に年齢を重ねる鍵は、感染症やがんと闘う免疫系の能力を高めつつ、オーバーヒートして軽度の慢性炎症を起こさせないような生活を送ることにある。
③ミトコンドリア:細胞内でエネルギーを作る
ミトコンドリアは、食べたものや吸った酸素をアデノシン三リン酸(ATP)と呼ばれるエネルギーに変換する。この反応の副産物の1つが、少量の活性酸素種(ROS)である。加齢と共にミトコンドリアの質と量は低下して行き、最終的には少なすぎるATPと多すぎるROSを生成するようになり、それが雪だるま式に全身に広がる炎症の原因になる。
ミトコンドリアの手段には、カロリー制限、ファスティング、運動、ラパマイシン、メトホルミン、レスベラトロールなどの様々なファイトケミカルの摂取などがある。
④解毒システム:体内の老廃物と環境有害物質を除去する
身体には、肝臓、腎臓、肺、皮膚、消化器系、リンパ系からなる高度な解毒システムと浄化システムが備わっている。肝臓は有害物質を取り込み、変換し、胆汁を通して腸に排泄する。腎臓は血液中の老廃物を濾過して尿に変える。肺は、ミトコンドリアの代謝廃棄物である二酸化炭素を体外に排出する。
21世紀の有害物質の負荷は、しばしば私たちの身体の解毒システムを圧倒して、病気を生み出している。
⑤コミュニケーションシステム:ホルモンなどを通した情報のやり取り
身体には、無数のヒト・メッセンジャー分子が存在し、身体のほぼあらゆる機能を司る指令を伝えている。これらのメッセンジャー分子には、ホルモン、神経伝達物質、ペプチドの他、多くの細胞シグナル伝達分子が含まれる。これらのコミュニケーションシステムのバランスがとれていなければ不調になって、健康が損なわれる。
機能不全の多くは、不適切な食生活、栄養不足、ストレス、環境有害物質、アレルゲン、感染症などといった原因がすでにある場合に生じる。
⑥循環・輸送系:老廃物を除去する
身体では、循環系(血管と心臓)とリンパ系という並走する菅が、組織から代謝廃棄物を取り除き、肝臓と腎臓に送って除去している。炎症性老化、タンパク質の損傷、栄養感知経路の変質といった重要な老化の典型的特徴の多くは、血管にダメージを与え、心臓病の主要原因となる。
心臓病は、炎症とホルモンの病気である。心臓病の90%までは、健康的な食生活、運動、禁煙によって予防できる。
⑦構造系:筋肉、骨から細胞、組織まで
筋骨格系は、生活の質を決定する。筋骨格系が弱く、関節炎を抱えていたり虚弱だったりすれば、やりたいことができなくなる。ジャンクフードを食べていれば、筋肉や組織もジャンクになる。身体を動かすことを怠ると、身体は徐々に弱って崩壊を始める。
筋肉を作り、身体に不可欠なシステムを動かすには、最高品質のタンパク質が必要だ。筋力トレーニングと適切な品質のタンパク質を組み合わせれば、筋肉量を維持し、増強することができる。
これらのシステムが動的なバランスを保っていれば、健康と長寿はその当然の帰結となる。