ウケる企画とは
1人のユーザーとしてYouTubeに触れる時は「なんかいい」と感覚的な判断が多い。この「なんかいい」には大きな2つの要素がある。
①現状から逸脱していない
チャンネルを1つの「雑誌」だと考えると、チャンネルのコンセプトは雑誌の「表紙」、コンテンツは「ページ」となる。1冊の雑誌の中にあって、違和感のない特集や連載で全体を構成することが、視聴者にとって「なんかいい」と感覚的に思えるポイントになってくる。
②ターニングポイントとなり得る
「ターニングポイント」とは、チャンネルの方針が体現されているか、ブランディングが明確かの分岐点のこと。企画を通して「こういうチャンネルなんだな」とわかってもらい、「なんかいい」と思ってもらえる瞬間を生み出す企画が、ウケる企画と言える。
「ターニングポイント」を考える上で重要になるのが、そのチャンネルがコンテンツを出す「目的」は何かということ。企画を通して、その目的に一歩でも近づいたか、その目的を体現できているか、ということが「なんかいい」企画の条件である。
ウケる企画というのは、基本的にはデータに基づいて「多くの人が求めるもの」となる。言い換えると「常日頃食べたいご飯」だ。「そこまで斬新でもないし、他に似たようなものがあるけれど、なんかいい」と、少しでも多くの人に選んでもらう。そのためにリサーチや仮説検証を徹底、試行・思考を重ねる。
企画の始まりは「見えない条件」の言語化
何を考えればいいのか、どう考えればいいのかを精査するためにも、言語化されていない部分、つまり目的へのプロセスを具体化しなくてはならない。そのためには「見えない条件」を見つけることが大切になってくる。見えない条件とは、そのコンテンツの何にフォーカスして企画をつくるかという「補足文」だ。これにより、ゴールから逆算して企画を考えることができる。
単に「ファンを獲得する」というだけでは、ゴールが大きすぎるため「どのようにファンを獲得するか」といった見えない条件を自分で言語化する必要がある。見えない条件を言語化して初めて、「アイデアを出す」という企画の本題に入りやすくなる。
継続的にコンテンツを発信していくと、アイデアが枯渇したり、企画者がいいと思って発信したものが、ユーザーに刺さらなかったりすることもある。そんな時「見えない条件」にもう一度立ち返ると、うまくいきやすい条件の法則性やダメだった理由の言語化がしやすくなる。
企画発想技
以下の発想技を様々なコンテンツに当てはめ、ストックしていくことが企画力につながる。
- 再帰:リバイバルマッシュアップ
流行りは繰り返されるので、過去に流行った企画を参考にする。 - 対比:コントラスト
テーマとなる単語や概念のあえて「逆」を考えてみる。 - 混沌:カオス
全く関係のない単語をランダムに引っ張り出して、当てはめてみる。 - 消失:バニッシュ
あえて企画を弱くする。あえて企画を弱くすることで、演者の人となりが浮き上がることもある。 - 連鎖発想:スパイラルチェイン
テーマを決め、そこに関連のある事象をいくつかつなぎながら派生させたり、掛け合わせたりして企画を考える。 - 複製:クローン
似ているジャンルで、既に結果が出ている企画をトレースする。 - 模倣変容:イミテーションチェンジ
映画、漫画、小説など、他のジャンルのコンテンツ、他業界や異分野で成功しているアプローチやアイデアを取り入れ、それをベースに独自の変容を加えることで新たな企画を考える。 - 流行同調:ブームアジャスト
検索ボリュームや関連動画などから、プラットフォーム上で数字が取れそうなテーマを意識して企画を作成する。 - 慣用句派生:イディオムイノベイト
ことわざや慣用句から着想を得る。 - 欲求供給:ディザイア・サプライ
人間の根源的な欲求(食欲、性欲、睡眠欲など)に着目して、それを満たしてくれるような企画を考案する。 - 接続:クロスリンク
少し似ているが異なる2つ以上の事象を組み合わせてみることで、新しい企画の着想を得る。 - 形式抽出:ゲット・ザ・フォーマット
YouTube上で再生回数を稼いでいる動画から、企画のフォーマットだけを抽出する。
企画の立案で大切な1つのこと
YouTubeを見ていて「いい動画だったな」「微妙だったな」といった感想を抱いた時、いちいち高評価・低評価ボタンを押したり、コメントを残したり、1つの動画を見ただけでチャンネル登録しない。
「数字」は間違いなく「結果」であり、企画立案時の説得や改善の材料になるが、そこに視聴者の「感情」は含まれていない。
一番大事なのは、とにかく自分がつくったものに「どういう感情を抱くのか?」という仮説を立て続けること、ユーザーのインサイトを考え続けることだ。ウケているコンテンツがあるなら、その本質的な動機となる「感情」を追求し続け、参考にすることも欠かせない。