ミスの原因を分析して改善する
どの業界でもミスを完璧に消し去ることは極めて困難である。マニュアルを徹底的に頭に叩き込めばミスをなくせるわけではない。マニュアルに合わせているだけでは結局、仕事の1つ1つにおいて自分の形を作れていないからである。マニュアルを自分なりに噛み砕いて解釈して、自分の形を構築していく作業を忘れてはいけない。自分で考えて準備をして本番に臨むことで、人はミスの確率を減らしていける。
なぜミスをしたのか。原因をきちんと分析して課題に置き換えれば、課題を消し去るための作業に入れる。そんなルーティンを繰り返していけば、さらにミスの確率を少なくすることができる。
野球界においては、守備はミスが許されない仕事である。野球界には守備機会という指標がある。刺殺、捕殺、失策といったアウトに関与した守備機会の内、失策しなかった割合を表す数字である。これは守備が上手い選手だと9割8分から9割9分ぐらいの数値を叩き出す。言い換えれば、100回の内3、4回ミスをするだけで9割7分、9割6分となり、下手の部類に入ってしまう。
ミスは失策だけではない。「ダブルプレーを取れるタイミングであったのに、ボールを握り直したためにアウトにできなかった」「守備で極端なシフトを敷いた結果、ヒットとなってしまった」など、数字に表れないミスの種類を数え上げ始めれば、キリがない。
守備中に飛んでくるゴロにしても、全く同じバウンドで転がってくるモノは1つもない。ボールの回転も不規則である。そんな打球に対してミスが出た時、自分はどう準備したのかを振り返り、改善策を練習で模索することが極めて大事な作業になる。
「準備」「分析」「練習」のサイクルを回す
ミスを次に生かすためには、事前の準備が必要不可欠である。事前の準備が存在して始めて、ミスをした後に「何が足りなかったのか」をあぶり出すことができる。ミスを受け入れて、次にミスをしないための材料にするには、体づくりにせよ、技術磨きにせよ、日々の準備が大前提となる。準備をすることで、ビフォーアフターとして比較でき、改善点を明らかにすることができる。
野球の場合、ミスをした瞬間から次のプレーが始まっている。ゴロを弾いて、動揺している間に打者走者に次の塁を奪われてしまったら元も子もない。その場ではミスを反省する時間がないので、試合後、ミスを次の試合に生かす以外に策はない。
準備の次にミスを分析する。ミスには必ず原因と結果が存在する。原因を特定して、そこの部分を練習によって撲滅していく。「エラー」にしても、ミスした瞬間だけを切り取るのではなく、一連の動作を振り返り、原因を探し出す必要がある。送球時のエラーであっても、送球にスムーズに入れる捕球姿勢でなかったこともある。結果だけにフォーカスするのではなく、その結果を導いた「真の原因」、つまり「何が足りなかったか」をあぶり出す。
ミスの原因がわからないまま、周囲から言われるがままに送球練習ばかり繰り返しても、根本的な解決にはつながらない。逆にきちんと原因を見つけ出せれば、後は練習で課題と向き合い続ければいいだけである。課題が解決されない練習は練習ではなく、ただ「やったことに対する満足感」だけのために練習をしているのと同じである。
つまり「準備」「分析」「練習」のサイクルを回していくことが重要である。
目標を設定して失敗を糧にする
野球をやっている限りミスは必ず出てしまう。ミスをしてしまった直後、どのように立ち居振る舞うかに正解はない。周りのチームメイトにマイナスな感情をもたらさない限り、自分が一番楽な形を選択すればいい。ミスをした瞬間に試合が終わるわけではないので、次に自分が100%のパフォーマンスを出せるような形を選択すればいい。
正常なメンタルの保ち方は人それぞれである。ミスをするなどマイナスな事象を起こしてしまったら、今度は反作用する形でプラスの事象が発生するといった考え方を脳内で自分自身に言い聞かせることで、日々のミスを懸命に受け入れていた。
そして、失敗を糧にする。ミスを成功につなげていく思考を持たなければ、毎日グラウンドに立つ中でメンタルが滅入ってしまう。目標を設定できれば、1つ1つ目標をクリアしていくことで、自分は前に進んでいるというポジティブな感情を持つことができる。短期、中期、長期とその時々であらかじめゴールを設定できていたから、その道中でミスをした時に誰に何を言われようと、失敗を目標達成に向けた材料に変えることができた。「目標があるか、ないか」は失敗を糧にする上で非常に重要なポイントである。