10のハイパフォーマンス・レッスン
①パーパス
年齢を重ねるにつれて、常に進化して上達していくためには、意識して成長マインドセットを身につけることが必要になってくる。だからこそ「オールブラックスの偉大な選手なら、何をするだろうか」と自分に問わなければならなかった。その答えを探している内に、キャリアを通して、一貫した価値観をつくり上げることができた。
パーパスは常に人生における重大な決断を下し、挫折を乗り越え、集中の妨げとなるものをふるい落とすための指針となる。パーパスは、単に次の試合に勝つとか、最高のプレーをするといったことを超越した、より崇高な使命を与えてくれる。
②ファカパパ
どのような組織であれ、その組織文化のあり方を考えるにあたっては、コアバリューを確立し、強さと方向性を導き出すために、まず過去を見つめることが肝要だ。個人が人生の針路を決める時も変わらない。自分の過去について学び始めると、その遺産を引き継ぎ、さらに高めていこうという意欲が湧いてくる。ニュージーランドではこれを「ファカパパ」と呼ぶ。このファカパパが、オールブラックスの組織文化の進化に欠かせない要素となっている。
③謙虚さ
組織文化を構築するには、各メンバーが組織のパーパスを支持し、遺産をさらに豊かなものにしたいという想いを共有しなければならない。そして、最終的に「チームより大きな個人は存在しない」という文化を推進しなければならない。これは、いつでもオールブラックスのコアバリューだった。
「小屋を掃け」はオールブラックスの伝統に深く根付いたマントラのようなものだ。清掃の習慣は、謙虚さの問題でもある。ロッカーを使って、試合をして、散らかして立ち去っても、誰かが片付けてくれるだろうと期待するのは言語道断だ。
④メンタル・マネジメント
ピッチでいいパフォーマンスができなかったり、結果を出せなかったりするのは、メンタル面がついてきていないことが多い。「今、ここ」に意識を集中させること。先の出来事のことを考え始めている自分に気づくたびに平手打ちして「自分は今、何を考えるべきか」と問うことだ。
⑤プレッシャーは特権
どのようなタスクの最中であれ、ついつい思考や心がさまよい、未来や結果のことを考えてしまうことがある。プレッシャーのかかる状況では、この傾向がさらに強まる。その瞬間に集中し、プレッシャーに対処するためには、プロセスに没頭することだ。ルーティーンを構築し、例外なくその手順を踏むプロセスによって、意識が結果のことを考えようとするのを阻止する。
No.1になりたいのであれば、プレッシャーのかかる瞬間を受け入れる必要がある。プレッシャーを糧にする必要がある。そのレベルのプレッシャーがあるからこそ、私たちは成長する。
⑥レジリエンス
挫折の後、辛い感情と向き合う時間を自分に与えることは、その挫折を受け入れる準備を整えることを意味する。そして、受容は挫折を克服するために必要なツールである。挫折は人生の一部であることを受け入れ、誰のキャリアでも起こり得ることを学ばなければならない。どのような挫折に直面しても、自分がコントロールできることだけに集中し、そこに全力を注ぐことが前進への鍵となる。
⑦自分の声を届ける
どのような組織においても、リーダーは、コミュニケーションラインを整え、各ラインの関連するキーパーソンと十分な意思疎通を行う必要がある。コミュニケーションの重要な基準は、明快、明確、直接的の3つである。
⑧競争相手の先を行く
進化は、個人と同様に集団にとっても不可欠なものだ。ぼんやり立ち止まっていたら、ライバルに追いつかれ、追い抜かれるのは必至だ。進化の大きな部分を占めるのは、新しいものに対してオープンであること、つまり成長マインドセットを持つことである。そうすることで、何らかの状況や課題が生じた時に、それを問題ではなく好機として捉えることができる。
⑨アイデンティティ
自分の原点を決して忘れてはならない。自分がどこからきたのかを忘れないことは、自分が大切にしている価値観、本当の自分に忠実であり続けることにつながる。友人や家族と現役時代に過ごす時間は、自分が現実とずれ始めていないかを確かめる、健全なリアリティチェックの機会を与えてくれた。
⑩犠牲
大きな目標の達成を目指して、自分を本気で追い込むのならば、ある程度の犠牲は避けられない。パーパスへ向かう道程では何らかの犠牲が生じるだろうことを受け入れる心構えこそが、選ばれた一握りの人たちが偉大になることを可能にしているのであり、さらに限られた、偉大から偉大になる人々の原動力になっている。