強みを見つけるブランディング

発刊
2024年8月2日
ページ数
144ページ
読了目安
191分
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推薦者

ブランディングの基本
ブランディングとは何かについて、基本的なことが紹介されている一冊。
ブランディングの対象は、大企業の消費者向けの商品だけではなく、近年はBtoB企業や中小企業においても、採用などを目的としてその重要性が高まっている。

そもそもブランディングとはどういうものか。どういう手順で進めるのかといった基本的なことが書かれており、ブランディングとは何かという全体像を理解するための内容になっています。

ブランディングとは

ブランディングとは、自社のブランド=強みや特徴を世の中に発信することである。そして対象とのコミュニケーションを最適化し、活性化し、企業経営を円滑にする一連の活動である。ブランドを発信するためには、まず自社がどのような存在かを知り、企業に存在している固有の強みを見つけ、ブランドとして再定義し発信する。

 

企業の単位で捉えるブランドとは、その企業のサービスや商品、社員がもたらす顧客体験や価値観などをひっくるめた広範囲の企業イメージということになる。ブランディングをしっかり行えば、企業はその商品やサービスを求める真のユーザーやステークホルダーとより良い関係を築くことができる。

ブランディングによる効果は顧客や投資家に対してだけでなく、人材採用の面でも絶大である。これは、認知度が低いBtoB企業や中小企業にこそ実感しやすいメリットである。的確なブランディングを行い、「自社が何者か」をはっきりと語ることで応募者数が増えるだけでなく、価値観の近い活躍できる人材に出会える確率も上がる。

 

企業に存在している固有の強みを見つける

ブランディング戦略を構築する上で重要なのは、その企業や商品の本質をしっかりと見抜くことである。そのために、企業や商品の現状を内部と外部という2つに分けて分析を行う。

 

①内部分析

スタート時点では自社の強みや特徴を見ていく。これまでの企業の歴史や経営層の考えなどを棚卸する。初期の棚卸でざっくりと強みを掴めたら、ブランディングを行うプロジェクトチームを中心にワークショップを行うなども有効である。そこでは3C(顧客、競合、自社)分析をする。

3C分析によって独自性や優位性が見えたら、次にその優位性が実際機能しているのかを検証する。営業や仲の良いお客様に感想を求めてみる。その優位性は単体で機能するものではなく、特定の条件の下で機能していたり、より細かな市場セグメントの中で価値を発揮していたりということも多い。

 

②外部分析

内部分析で仮置きした現在の強み・優位性が今後も優位性となると考えられるのかを検証する。外部分析の代表的なものには、PEST(政治、経済、社会、技術)分析がある。

ブランディングには絶対解がない、ということを意識しておくことも大切である。未来を確実に予想することは不可能であるため、その強みや特徴にどのような意思を込めるのかの方が重要である。企業ブランディングにおいて重要なのは、何よりも自社の「意志」を社内外に明示することの価値である。

 

分析を経て、ブランドのコアとなる要素が見えてきたら、少し距離をおいて冷静に見つめる。まず、改めてそのコアに社員や経営陣が魅力を感じそうか、我がことと思えるか。さらに、荒唐無稽でなく無理のないものか、短絡的でないかなどを確認し、経営戦略や理念との整合性を確認する。

 

クリエイティブを開発する

未来につながる強みを整理した「ブランディングコア=ブランディングの設計図」が見えてきたら、次はクリエイティブの開発フェーズとなる。このプロセスはコンセプトワークと呼ばれ、クリエイティブの質を決定する。大切なことは「その内容を伝えることで、世の中の、対象者の価値向上につながる要素=コンセプト(何を言うか)」を特定することである。

 

コンセプト設計を進める上では、ターゲットを強く意識する。企業ブランディングでは、基本的に、経営に関わるステークホルダー(顧客、潜在顧客、従業員とその家族、金融機関、株主)など対象者を広く設定する。しかし、クリエイティブを考える段階では、全方位的なターゲット戦略のままではメッセージが曖昧になってしまう。そこで優先順位をつけて戦略的にターゲットを設定し、コンセプト=何を言うかを明確化する。

中小企業やBtoB企業のブランディングでは、ターゲットを社員やその家族に設定するケース、もしくは採用対象者に設定するケースが大半である。時には、あえて未来のユーザーを想定し、エッジの効いたメッセージを届けることもある。

 

ターゲットの選定や優先順位付けと並行して、「トーン&マナー」と呼ばれる世界観を設計する。これは単純に言えば「明るく活発に見せたい」といった企業のパーソナリティや空気感のようなもの。コンセプトと同時に、トーン&マナーにあたる「どんなふうに」を整理することで、ブランドの輪郭が浮き彫りになる。

トーン&マナーは、ターゲットとどんな関係を構築したいかを意識して設定する。同時に、業界内の企業がどこも似たようなトーン&マナーになりやすいので、いかに同質化しないかを考えることも必要である。

 

コアコンセプトとトーン&マナーが整理できたら、そのコンセプトを、芯を掴んだ魅力的な言葉=タグライン(スローガン)に落とし込んでいく。タグラインは、数年〜数十年にわたり企業ロゴと併用され企業イメージをつかさどる。