パターンを読み取り、公式をつくり出す力
専門性が流動的に変化する世界で成功するには、素早く「スキルを習得する技術」を磨くことが欠かせない。スキルを獲得するために、あらゆる業界で超一流の人たちが一般的に活用しているのが「リバース・エンジニアリグ」である。
リバース・エンジニアリングは「表面に現れていることの裏側を見て、隠れた仕組みを見出すこと」だ。どのような設計になっているかを調べ、そこからその改変方法を見出していく。具体的には、美味しい料理を食べて「レシピを推測する」、美しい音楽を聴いて「コード進行を突き止める」、ある映画を観て「物語の展開構造をつかむ」などといった能力を指す。
「裏にあるパターンを探る」のは、成功している実業家も同じである。成功している実業家は、過去の成功事例と現在の市場で起こっている変化を結びつけて、利益になる機会を見極める能力がずば抜けている。
リバース・エンジニアリングの構造
優れた物語や曲、写真などを公式に変える場合、その特徴から公式や方法論を推測しなければならない。そのためには、一歩下がってパターンを読み取り、公式をつくり出す必要がある。パターン認識は、次の4つのパートで構成される。
- サンプルを収集する
- サンプルの大きく異なるところを見つける
- サンプルの類似点を見つける
- 予測する
違いを探して重要な差別化ポイントを見つけるためのテクニックには以下のものがある。
- 疑問に思って追究する
- 俯瞰して見て、抽象化する
- 重要な特徴を数字に変換して比較する
リバース思考
どの職業でも、超一流の人は新しいアイデアや視点、解決策に対する貪欲さを育むことで地位を獲得してきた。以下の教訓を実践すれば、誰もが自分のスキルを磨いてパフォーマンスを向上させ、長期間持続する大きなことを成し遂げられる可能性がある。
①コレクターになる
超一流になるための最初のステップは、誰か超一流の人を見つけることだ。優れた作品を研究し、大きく考えることを改めて思い出すのに役立つように、自分のコレクションを集める。
②違いを見つける
お気に入りのサンプルから学ぶには、どこが独特なのかを見つけなければならない。超一流のものと平凡なものを比較することで、その作品ならではの特徴が特定でき、他に取り入れたり、さらに発展させたりできそうな要素が見極められる。
③ブループリント(設計図)を考える
既にある作品を完璧に再現しようとするのではなく、一部抜粋したものを取り入れて、より質の高いアウトラインを考案する。既存のものを研究してブループリントをつくり上げることで、複雑さのベールが取り除かれ、作品のパターンが見えてくる。
④模倣ではなく進化させる
成功を収めている他人の公式・方法論をそのままコピーすると、先駆者と同じ成功を勝ち取ることはできない。新しい影響を取り入れて、近接する分野の公式・方法論を適用し、自分にはうまくできない要素を難なく上手にできる要素に置き換えて、独自の道を模索する。
⑤ビジョンと能力のギャップを受け入れる
達人を研究すると、自分にとっての成功を意味するパフォーマンスのレベルが上がる。この時、達人の域に達していないことを認識するだけで終わるか、必要なだけどこまでも改良する意欲と粘り強さを持つかが、アマチュアとプロの差になる。
⑥選択的にスコアをつける
自分を成功へと導いてくれる主要な要素に関してスコアをつけていけば、高いレベルに到達するのが容易になる。やる気が起こり、無駄な努力が減らせて、より賢明な決断を心がけるようになる。
⑦リスクを冒しつつリスクを取り除く
成長するにはリスクを冒すことが必要不可欠だが、同時にそれは不安でもある。リスクを冒す際のハードルを下げるために使える方法の1つが、逃げ場所を見つけて失敗した時のコストを下げる方法だ。小グループで実験を行ったり、広範なプロジェクトに多角的に投資したりすれば、自分のアイデアを試しつつ失敗した時の損失を縮小できる。
⑧心地よさを疑問視する
感情は、目指した通りの結果になっているかどうかをリアルタイムで判断する指標になる。超一流の人は、心地よさは、成長が止まっていることの証と捉える。
⑨未来と過去を利用する
パフォーマンスの向上には、繰り返しとフィードバックが役に立つ。自分の過去の経験を分析して、そこから重要な教訓を引き出すこと。そして、イメージトレーニングで、将来の自分をシュミレーションすること。
⑩広範な人に尋ねる
専門家がよい教師になることは滅多にない。知っていると、知らないことが想像できなくなる。自分の向上を助けてくれるのは専門家だけではない。相手を正しく選び、助言を求めて、自身の向上を頭に置いた戦略的質問を用意して臨むこと。