ビジネストランスレーター データ分析を成果につなげる最強のビジネス思考術

発刊
2023年3月2日
ページ数
288ページ
読了目安
481分
推薦ポイント 10P
Amazonで購入する

Amazonで購入する

データ分析をビジネスに活かすために必要なこと
企業がデータ分析をうまく活かせないのは、専門人材不足だけでなく、専門人材とうまくコミュニケーションが取れていないからである。ビジネスの現場を理解する者が、データ分析者との認識を合わせ、データ分析を価値に変えるために必要なことがまとめられた一冊。

データを活用し、DXを進めるために必要なこと、スキルがよく理解でき、多くの企業が見落としていることが書かれています。

ビジネストランスレーターとは

DXにおいては、デジタル技術を単に導入することだけでは不十分であり、デジタル化によって得られるデータをいかに分析・活用するかが重要なポイントになる。

 

データ分析をビジネスに結びつけることができているケースの多くは、データ分析者が出した分析結果をビジネス視点で解説することに長けている人、データサイエンスを得意としながら、現場目線に立ったデータマーケターとして活躍している人など、特定の「人」の存在に依存している。
こうした人はデータ分析者とビジネス現場の担当者の間に立ち、ビジネス現場が抱える課題を整理してデータ分析者に橋渡しをしたり、逆にデータ分析者が出した分析結果をビジネス現場が正しく使いこなせるよう翻訳したりしている。こういう人を「ビジネストランスレーター」と呼ぶ。

 

5Dフレームワーク

ビジネストランスレーターが担う業務は「正しく5Dフレームワークを進める」ことにある。

①Demand:問題や要求を明確化する

②Design:問題から仮説を立て正しく分析課題に落とし込む

③Data:課題解決に必要なデータを正しく準備する

④Develop:同じく課題解決に必要な分析を適切に行う

⑤Deploy:分析結果をビジネス活用へとつなげて展開する

 

ビジネストランスレーターの4つのスキル

ビジネストランスレーターの役割を果たすには、次の4つの力を身につける必要がある。

 

①ビジネススキーマ活用力

ビジネススキーマ活用力とは「組織においてビジネスを進める上で必要な、知識または概念として形式知と暗黙知を理解し活用する力」のこと。ビジネススキーマ活用力の高い人は、スクリプト(行動)や変数・業務マニュアルなどの形式知、該当組織に存在する組織風土・人間関係・明文化されていないルールなどの暗黙知、これら双方を正しく理解し、問題の本質を見抜く力を持っている。

スキーマは知識として習得するだけでは不十分で、現場のステークホルダーの意思決定を変更できるようになることが求められる。そのために必要なステップは次の通り。

  1. スキーマ理解:職場における各ステークホルダーのビジネススキーマを明らかにする。
  2. スキーマ解釈:ビジネススキーマを解釈し、行動への影響度の高い重点ポイントを抽出する。
  3. シナリオ作成:仮説を基に誰にどのようなコミュニケーションを行うか、課題整理に向けた道筋を決める。

 

②プロジェクト遂行力

データ分析プロジェクトチームには社内外のメンバーが参加するケースも多く、メンバーが多いと意見が交錯して発散しがちである。収束と発散を繰り返しながらチームを導き、大きなビジネスインパクトを生む意思決定活動へと昇華させるのがビジネストランスレーターの役回りである。そのために、プロジェクト内の人間関係や部門調整を実施し、意識のベクトルを合わせていく。そのために必要な力は次の4つ。

  1. 目的管理:関係者の間に立って目的のズレを防ぐ
  2. 戮力協心:関係者の本音・協力を引き出し、関係性を築く
  3. 現場共感:ビジネス現場やお客様の感覚を肌で理解する
  4. 本質深掘:課題の本質を理解する

 

③ビジネス背景理解力

「どういう事業環境にあるか」「どういう顧客が利用しているか」など、ビジネスの現状を正しく理解して把握することが、意義ある提案へとつながる。現状を理解することで「2つのギャップ」を課題として浮き彫りにする。

  • ビジネスゴールに対して現状不足している差分
  • ビジネストランスレーターとデータ分析者とビジネス担当者の認識の差

この2つのギャップを把握するには、まず「事業理解」と「顧客理解」に分け、この順番で理解する。事業の中身がわからないと、顧客は事業のどこに価値を感じて対価を支払い、結果としてビジネスが成り立っているのか、その価値を生み出すためにどのようなリソースが動いているかわからず、データを見ても良いか悪いか判断がつかないからである。

 

④データ解釈基礎力

データ分析プロジェクトでよく聞くのが、専門人材が使う用語や提案内容が難しくてよくわからず、これを無条件に信用し、結果として認識ズレを放置したままプロジェクトを進めてしまい失敗するケースである。

専門人材と非専門人材の認識のズレを防ぐための第一は、事前に「目的共有」を徹底することである。目的共有が正確にできていれば大きな認識のズレは起こらない。そして、非専門人材が専門人材に「最終的に何ができればビジネスとしてうれしいのか」を、戦略・戦術・施策のそれぞれの粒度で伝えていく必要がある。

 

最終的に、データ分析者が分析した内容については、以下のポイントでデータの妥当性を確認する。

  1. そのデータはいつの期間のものか(期間)
  2. 今回の分析対象に合ったデータになっているか(チャネル/顧客/商品/地域)
  3. 異常な数値はなかったか(異常値)
  4. どのような説明変数をデータとして用いたか
  5. N数はいくつか、分析に当たりサンプルの大きさは十分か

 

参考文献・紹介書籍