志を持って経営している会社が持つ共通原則
社会にどう役立つのか、つまり何を目的として生まれた企業なのかという志を明確にして、その志を実行していくこと。いくら外面をよく見せても、中身が伴っていなければいつかメッキは剥がれる。言行一致が大切である。そういう企業が信頼され、その積み重ねが強いブランドを築いていく。
こうした言行一致の経営を「志経営」と呼ぶ。志経営には、次の原則がある。
- 大切にすべき価値観と社会への貢献の仕方が、独自の志として明文化されている。
- 志に基づいた経営判断が下され、現場でも一貫して実践がなされている。
- 一人ひとりの人間性を尊重し合い、自己実現を支援している。
- 世の中や業界の常識にとらわれず、顧客に本当に必要な価値を創造している。
- 志に基づいた事業が収益の柱となっている。
- お客様や取引先など、主要なステークホルダーも志を理解・共感している。
- 長期的な視点で考え、将来世代に対する責任感を持って経営している。
志を言語化する
まずは経営者が「こうありたい」という志を明文化すること。目指すべき方向性が明確になれば、それが精神的支柱や判断のよりどころとなって、経営者のみならず社員の行動、信念に力強さが生まれてくる。結果、組織が一枚岩となり、モチベーション高く、その実現に努力するようになる。
どのように志を明文化できるのか。志には5つの要素がある。
- ミッション:企業が存在する意味であり、日々果たすべき使命
- ビジョン:ミッションを追求し続けた先で実現させたい理想の未来
- バリュー:ミッションを遂行する上で発揮されるべき価値
- スピリット:ミッションを遂行するために社員一人ひとりが大切にすべき精神
- ストーリー:すべての要素を1つにつなげ、心に響くように語られる物語
ミッションをどれだけ意義深くできるかということが、志を言語化する上では重要である。目的のレイヤーをどこまで高くするかによって、マーケットの範囲も変わっていくからである。
具体的に言語化するには次の2つの軸で考える。
- NEEDS(社会・時代の課題・要請)とSEEDS(企業らしさ)
- 過去〜現在〜未来
創業者の想いや企業の歴史など、過去から現在にかけて紐解きながら、自社らしさや大切にしてきた価値観を抽出する。ターニングポイントとなった出来事を振り返りながら、その時に「なぜ」「何をしたのか」「結果どうなったのか」を分析する。俯瞰して見ていくことで、自社が自社らしく成長してきた「メカニズム」や大切にすべき価値観を言葉にしていく。
志を実践する
事業と組織にまつわるあらゆる経営判断が、「志の実現に近づくどうか」「志に照らし合わせた時にやるべきことかどうか」という軸で判断されているか。組織のどのレイヤーをとってみても理念がゆきわたり、日常的に一人ひとりの判断基準になっていること、それを実践することが当たり前の状態になっていることが志経営である。
志を実践し、実現に向かうためには、いかに事業と組織の両面において、どこを切り取っても志ドリブンの状態をつくれるかがポイントになる。そのためには何が必要か。理念を経営全体に落とし込むためのステップは次の通り。
①言語化
社員全員の旗印となるべきものが言語化されている必要がある。「理念」はもちろんのこと、理念をより現場向けにブレイクダウンした「マネジメントポリシー」などそれにあたる。
マネジメントポリシーとは、その企業が「事業や組織をどのような方針でマネジメントするか」を明確に言語化したものと言える。ポリシーを策定する際には2つのポイントを意識する必要がある。
- DNAに根ざした差別性(ポリシーがDNAに根ざしたものになっているか)
- 競争優位につながる卓越性(そのポリシーで事業や組織をマネジメントすることによって強みに磨きがかかるか)
②仕組み化
理念を経営活動全体にゆきわたらせるには、体現するために必要な仕組みをあらゆる局面に仕込んでいく必要がある。
- 事業側の仕組み:営業ツール、顧客対応マニュアル、商品開発、チェック項目など
- 組織側の仕組み:評価精度、表彰制度、研修制度、目標管理制度など
どれだけ成果が上がっていても、理念に沿っていない場合は評価しない。理念を実践している人が自然と評価される制度になっていることが大切である。
③習慣化
理念の実践を習慣化するのは根気のいる作業である。例えば、「志を体現した仕事」を定期的に共有する場をつくった理、日々の仕事の中に「理念に触れる時間」をつくったり、他にも定期的な1on1の面談を通じて評価制度のプロセス部分をチェックしたり、定期的な部会やチーム会で共有する時間をとるのも効果的である。
理念を掲げたらすぐに人が変わり組織が変わるかというと、そう簡単な話ではない。その鍵を握るのが「独自のカルチャー」である。マネジメントポリシーによって組織をマネジメントし、独自のカルチャーを育む。