付加価値の定義
価値と付加価値は次のように定義される。
価値:お客様が感じるものである
付加価値:ニーズが源泉である
つまり「価値」は、その商品やサービスに対して、「お客様が『これには価値がある』と感じるもの」であり、「付加価値」とは「お客様のニーズを叶えるもの」である。
ビジネスで重要なのは「自社で仕入れたものの価値に対し、どう付加価値をつくり上げるか。それをどうやってお客様に買ってもらい、使ってもらうか。そして最後に、いかにその商品・サービスの価値、付加価値を感じてもらうか」である。付加価値をつくるためにはこれらを考える必要がある。
顧客のニーズを徹底的に調べる
顧客のニーズは「顧客の困りごと」から生まれる。「ニーズが叶う」と思うから、お客様はその商品やサービスを買う。それを使ってニーズが叶うことが「役に立つ」ということである。
キーエンスでは、マーケットイン型、つまり顧客のニーズにフォーカスした新商品企画・開発がされている。次のことについて、企画・開発前に徹底的に突き詰めるのである。
- なぜお客様が買うのか?
- 本当にその商品・機能は使われるのか?
- 使われたら本当に役に立つのか?
- どんな役に立つのか?
顧客のニーズを突き詰めるプロセスにおいて欠かせないのが「市場調査」である。しかし、多くの企業では、この「顧客のニーズを突き詰める」ことをキーエンスのように徹底して行っていない。
キーエンスの新商品企画者は、「商品を作る前に、現場に足を運んでお客様に直接ニーズを聞く」「その企業が何に困っているのかを調査・分析する」という市場調査を徹底的に行い、その結果を商品開発に反映させている。
潜在ニーズを探り、新たな付加価値を創造する
付加価値の源泉であるニーズには「顕在ニーズ」と「潜在ニーズ」がある。顕在ニーズよりも潜在ニーズの方が重要である。顕在ニーズはわかりやすいニーズなので、企業側もそのニーズに応える付加価値をつくって提供することは比較的容易だが、潜在ニーズはお客様も気づいていないので、それを叶えるためには、より深い付加価値を探り出す必要があるからである。
キーエンスでは、この「潜在ニーズ」を、徹底的かつ的確に探り出し、そのニーズをもとに開発・設計した製品によって、お客様に付加価値を提供し続けている。さらに「まだつくられていない付加価値(新創造価値)」と言うべき領域を、徹底したコンサルティングセールスによって探り、新たな付加価値を備えた製品を生み出す。それがキーエンスの作り出す「世界初・業界初」の商品である。
潜在ニーズはお客様との会話だけでは探り当てられないことがほとんどである。現場を調査・観察して初めて潜在ニーズが見えてくる。
キーエンスの思考法
キーエンスの特長は、次の3つである。
①マーケットイン型
キーエンスでは、マーケットイン型の新商品企画がなされている。なぜお客様が買うのか? 本当にその商品・機能は使われるのか? 使われたら本当に役に立つのか? どんな役に立つのか? について商品の開発前に突き詰めることが徹底されている。
②高付加価値状態での商品の標準化
キーエンスでは、特注品ではなく「標準品」を作っている。にもかかわらず、作る前に現場に足を運んで直接お客様の潜在ニーズを見つけ出すという市場調査を行っている。この仕組みがあるため、最大公約数の仕様・機能を備えた高付加価値状態の標準品での対応を可能にしている。
こうしたことが可能なのは、キーエンスの人たちは、どの競合他社よりも多くの事例を知っていて、多くの企業が困っていることを熟知しているからである。そのため、お客様のニーズに応えつつ、標準化して展開できる商品を企画・開発できる。
キーエンスでは汎用性のある機能か、他の機能で集約または分散できないかを考え、基幹となるニーズを重視し、できるだけ標準化を狙うことで商品のコストダウンを図る。その結果、お客様にとっては、価格面、納期面、修理品の入手性などのメリットを享受できるようになる。
③世界初・業界初
キーエンスでは「お客様も気づいていない潜在ニーズ」を、徹底したコンサルティングセールスによって探り出し、「まだつくられていない付加価値(新創造価値)」を備えた商品を生み出している。
世界初・業界初というのは、性能面で高性能を備えたものではない。お客様の使い方を知り尽くし、課題や問題点を深掘りすることで、今までになかった機能や仕様を実現し、未解決の課題を解決している。
世界初・業界初の商品は、お客様に高付加価値を提供できるのと同時に、他社商品との差別化を図ることができる。世界初・業界初の商品であれば、他社との比較のしようがないので、相見積もりをとられることは基本的にない。
キーエンスと他企業との間には決定的な違いがある。それは、上記のことを「構造化を徹底し、再現性を目指して、同時に、すべてのことを、すべての人がやっているか否か」である。