魅力の伝わる店づくりの大前提
お店にお客様が集まらないとしたら、そこには必ず理由がある。繁盛する店・しない店の違いは、お客様がその店に何かしらの魅力を感じているかどうかである。一般的に繁盛店は女性客に好かれる店が多いと言われる。女性客が好む傾向は、清潔感があること、接客や店の雰囲気づくりに気配りがあること、インスタ映えする料理を提供していることなどがある。
一方、こうした店でなければ繁盛しないわけではない。店主の人柄がいい、料理が抜群にうまい、コスパが最高など、魅力の打ち出し方は様々で、お客様の感じる魅力も一律ではない。
重要なのは「店の魅力」と「お客様の感じる魅力」がマッチしているかどうか。お客様と店とが相思相愛の関係になっているのかということである。お客様像には、本当に「店に来て欲しい」と思うお客様を設定する。その上でお客様像と店のマッチングを考えてみることが重要である。マッチングで特に重要なのは次の2つ。
①立地条件
例えば、オフィス街に店を開くなら、お客様は家族連れよりビジネスマンの利用が多く見込める。反対に、住宅街のお店には近隣の住民が多く集まる。店の立地とお客様像が合っているかを見直す。
②メニュー構成
お客様像によって好まれるメニューは違う。提供したい料理と設定する価格帯がお客様ぞうに合っているかを確認する。
これらがマッチしていることが、お客様に魅力の伝わる店づくりの大前提である。
料理、店の雰囲気、接客、サービス、価格など、「うちの強みはこれだ」と思っても、それが他店より魅力的かどうかを検証することも大事であり、その強みをお客様に伝える努力も必要である。
どん底脱出の5原則
飲食店経営で何よりも怖いのは「資金ショート」である。もうどこからもお金を借りられない。家賃や税金のこれ以上の滞納が許されない。こんな場面こそ、「どん底」の状況と言える。資金がショートしてしまうと赤字を回復させるための投資もできない八方塞がりに陥ってしまう。
しかし、八方塞がりになり、どうしたらいいのかわからない状況でも、必ず打つ手はある。「打つ手は無限」である。どん底から脱出するダメには次の5原則を身につけるといい。
①1人で抱えず人に相談する
個人店のオーナーは、自分の「マンパワー」1つで乗り切ろうと考えてしまいがちである。しかし、まずは「他人との関わりに再び目を向けること」が大切である。誰かに相談したり、人と人をつなぐ場を提供してみたり、お金をかけずにお客さんを喜ばせるアイデアを出してみたり、「できること」は意外とたくさんある。
②数字をきちんと管理する
お店には、食材の費用の他にも、水道光熱費、家賃、人件費、広告宣伝費などの出費があり、金融機関からの借入があれば返済もしなければならない。これらの数字をきちんと把握しておくのは、とても大切である。まず、きちんと数字を把握できているかを確認すること。
お店の数字を把握していると、より思い切ったメニューの提案もできるようになる。飲食店の場合、料理の原価率は30〜35%とするのが一般的だが、この掛け率のままメニューの値段を設定しているお店は意外と流行らない。この料理は原価率25%だけど、こちらは原価率40%というように波をつくる方がお客様に関心を持ってもらいやすい。原価率100%という超目玉商品を提供しても、トータルで利益の出る原価率になっていれば良い。こうした施策は数字を把握できているからこそできる。
③イベントで集客する
集客を伸ばすための方法の1つがイベントを開くことである。開催できるイベントは様々だが、自分の店ではどんなイベントが可能かを考えてみる。できれば10個以上はアイデアを考えて、最終的に5個くらいに絞り込むといい。
④生産者の思いを伝えるオンラインショップで収益化する
色々な生産者さんの食材を詰め合わせたり、一部を加工品にしてセットにしたりもできる。美味しい食べ方やレシピをお店のYouTubeチャンネルで紹介することもできる。なお、惣菜を通信販売で売るためには、惣菜製造業の許可を得る必要があるが、最近になって、現状のままの厨房でも営業時間外に加工品を調理する段取りを書面で提出できれば、許可が得られるようになった。今は真空パックや冷凍技術も良くなり、様々な食材、惣菜を届けることができるようになった。
⑤「日本一のこだわり」で売る
物事の発想を変え、別の角度で考えてみると、新たな価値を生むこともある。その一例が「日本一」というキーワードである。この「日本一」という言葉を使う時の重要なポイントは、他と比べようのないものにだけ使うことである。お客様が気づいていない、お店のこだわり、他店に引けを取らない自慢のメニューやサービスを「日本一」としてお客様にアピールすると良い。