メモは考えるための武器
メモは「考える力」を引き出すための武器になる。メモを使うことで、外から入ってきた情報を、自分の頭の中にある考え方とミックスし、自分のアイデアや意見という形に昇華させることができる。
「考える」とは、基本的にゼロからイチを生み出すヒラメキのような行為ではない。ある「状況」に対して、自分の過去の知識や経験、価値観などが蓄積された「考え方」を使って、手に入れた情報を組み合わせたり、並べ替えたりしながら再構成する「編集」によって、自分なりの「答え」に辿り着く行為である。
考えている人は状況をしっかりと捉え、自分の考え方を常にアップデートしている。そしてインプットされた情報を編集してアウトプットを出している。メモは単に記録するために書くのではなく、自分の考えを見える化して、思考を進めるために書くのである。
創造的で自分らしい考えを作っていくには、次の2つの種類のメモが大切である。
①インプットメモ
自分の情報感度に引っかかる情報をすくい上げる。そこから気づきを得て、アウトプットに使うヒントをストックする。
②アウトプットメモ
取り組むべきテーマや問題に対して、前提条件やそれまで得ている情報を書き出し、自分の考えや知見をミックスしながら課題の本質は何かを探り、新たな考えを組み立てる。
インプットメモをアウトプットに繋げるには、普段からメモした内容に一言、気づきを加えて知恵のストックをつくっておくこと。それらのメモを日頃からパラパラ見返しながら、このアイデアはいつか使ってやろうと記憶の片隅に置いておくことが重要である。
インプットメモの技術
自分らしく考えるためのメモは、考えずにすべて書くのではない。自分の知識に一度取り込む情報を選別し、血肉化した上で活用するというスタンスに立つ必要がある。
メモした情報は、5%使えればいいやという気持ちで書いていくことが大切である。メモする段階で、どれが使える情報になるのかはほとんどわからない。しかし、自分らしい情報、企画、何かを説明する時のために引用したいと思うような情報を選んでおけば、その内数%が実際に使える場面に出くわして、アウトプットのヒントになる。つまり、得た情報を直接アウトプットにつなげるのでなく、自分の知識のストックとして寝かして熟成するのを待つ。
そのために大切なことは次の2点。
- 相手が言ったことを正確にメモする意識を捨てる
- 自分の知識の中に組み込むメモをするという意識を持つ
この結果、使わない情報も100%自分の情報感度を高める役に立っているんだと思えるようになり、知識の血肉化につながっていく。
インプットメモのポイントは次の3つ。
①メモの基準を持つ
どんな情報を取り込むべきか、一度自分の中で基準をつくる。メモの基準があると、必要な情報が目に留まりやすくなる。
「活用したい情報」と「面白いと感じる情報」の2つを基準にするといい。
②箇条書きで抜き書きする
大切な部分だけコンパクトに抜き出そうとすることで、情報を選別する力が高まる。箇条書きにすると、メモがシンプルになり、迷いがなくなる。基本は15〜27文字程度にまとめるといい。
③気づきを加える
大切と思った情報でも、「なんでこれメモしたんだっけ?」と思うことがある。書いたメモの情報が自分にどんな気づきを与えたかを一言加えることで、情報の吸収度が上がる。どれが得られた情報で、どれが考えた気づきなのかを判別できるようにしておく。
アウトプットメモの技術
アウトプットにおけるメモとは答えを書くことではなく、自らの考えを見える化するという作業である。メモをしながら考える理由は、人は同時にたくさんのことを頭の中で覚えていられないから。考えたことを順番にメモしておくだけで、考えることだけに集中できる。
アウトプットメモのポイントは次の3つ。
①現状を全て見える化する
考えるテーマに関して、とにかく現状わかっていることを全て紙の上に書き出す。これで考えるための情報は揃っているだろうかと、抜け漏れがないかを確認する。そして、「現状」→「課題」→「打ち手」の順番で書き進めていく。
②自分の視点で課題を整理する
情報を1つ1つ吟味し、自分の視点で情報に優先順位をつけ、関係しそうなものを線でつなぐなどしながら思考を広げていく。自分の視点を入れ込むには次のテクニックがある。
- 思いつくものを10個以上書き出して、その中から3個を選ぶ
- 「WHY」で深掘りし「HOW」で具体化する
③打ち手を構造化する
「アイデア」と「企画」の違いは構造化にある。こうすれば面白いんじゃないかというアイデアに、具体的な手順や伝え方を加えたものが企画、つまりアウトプットになる。キーワードを書き出し、関係性を矢印でつなぐことで、構造化する。