レジャーランド化する大学
今日、日本の大学が置かれている環境は厳しさを増している。少子化によって受験生の確保が難しくなる一方で、大学の新設数は増加しているため、定員割れを起こしている大学も少なくない。2014年度の春入学時、全国の私立大学の45.8%が定員割れを起こしている。日本の大学は、いまや入学時選考時のハードルも下がりつつある。
教職員のモチベーションが低下している
大学が次世代の人材教育に取り組むためには、指導やサポートを担う教職員が学生の模範となる「教育のプロフェッショナル」でなければならない。大事なのは、日頃、教職員が真摯に仕事に取り組んでいる姿を学生に示す事だ。
しかし、最近の大学は組織の効率化などが進められてきた影響で、非正規雇用の教職員が増えている。彼らの中には、自分の人生の先行きに不安を抱えている者も多く、モチベーションの低下が問題となっている。これでは、教職員が学生に対して模範を示す事などできる訳がない。
日本の大学の世界ランキングは低い
近年、国際的な大学評価が注目されている。世界大学ランキング1位はカリフォルニア工科大学、2位がハーバード大学、3位がオックスフォード大学、4位がスタンフォード大学と続く。日本の大学は、東京大学23位、京都大学59位、東京工業大学141位、大阪大学157位。近年、アジア各国の大学が躍進し、シンガポール国立大学が25位に上がり、東京大学を脅かしている。世界ランキングが上がれば、海外の優秀な留学生を獲得しやすくなる。世界ランキングを上げるには、教育の質や研究内容を高めると同時に学生の質を高めていく事が求められる。そのためには、高校までの教育のレベルをより上げていかなければならない。
アメリカでは、一部のエリートを育成するよりも「落ちこぼれ」をなくす事で国全体の教育レベルを上げる取り組みが進んでいる。より多くの若者に高い教育を修得させて、1人でも多くの若者が大学へ進み、より高いレベルで仕事をしていく事が最終的に国を豊かにする力と考えている。
大学で学ぶ最大の目的は「一生涯学び続ける能力を身につけること」
20世紀は、仕事を得る上で学位がある事が重要だった。そのため、大学教育も学位を修得するために存在していた。しかも、どの大学を出たかが採用を勝ち取る上で大きな意味を持っていた。しかし、21世紀は一度取った学位は実社会への最初の入り口でのみ有効であり、次のステージを目指すためには新たに別の学位が求められる。だからこそ、一生涯学び続ける能力を身につける事が、大学で学ぶ最大の目的になる。
日米の大学生の意識の違い
日米の大学生の意識で最も大きく違うのは、自立心があるかどうか。アメリカでは18歳になると親元を離れる事が一般的である。大学生の多くは、大学の寮か、キャンパス近隣の家を間借りして生活を始める。自立といっても、学生だから収入がない、当然、奨学金を得るか、学資ローンを組む事になる。しかも学費は高額である。仮にワシントン大学に入学した場合、学費はワシントン州内の学生で12394ドル、州外の学生は33513ドル。海外からの留学生はさらに高い。しっかり勉強して、いい仕事につかないと元も子もないのだ。
こうした中、日本では大学がレジャーランド化していると言われて久しい。その顕著な例が始業時間である。高校までは始業時間が午前8時30〜40分が一般的であるのに対し、大学では9時台が一般的。その上、一時間目の授業を避ける学生も多い。アメリカでは、大学の授業は一般的に8時に始まり、サマースクールなどでは7時台に始まる事も珍しくない。
始業時間だけではない。単位認定には出席点を導入する教員が多く、欠席してもレポート提出で単位を与えるケースがあるのも問題である。